点を取られなければ負けることはない

4月17日。
ファイターズファン以外は佐々木朗希の2連続観戦試合を期待して戦況を見つめる中、ファイターズのエース上沢が気迫のピッチングを見せた。
野球は三振の数を競うスポーツではないし、ヒットの数を競うスポーツでもない。
点を取らなければ勝てないが、点を取られなければ負けない。昨日、それを誰よりも考えていたのが上沢だったのではないだろうか。

先発 上沢直之

試合後に出た記事によると、ブルペンではあまり調子が良くなかったという。悪くても悪いなりにまとめるのがエースとも言えるが、この日は調子の悪さは伝わってこなかった。初回のアウトは全て三振。
佐々木朗希と違ってヒットも打たれるし、フォアボールもデッドボールもあったけれど、要所を締めるピッチングで7回無失点。エースらしい力投だったものの、佐々木朗希もノーヒットピッチングだったため勝ち負けはつかなかった。
しかし解説者五十嵐亮太は佐々木朗希が8回に降板した時にこう言った
「完全試合を止めたのは、日本ハム打線ではなく上沢投手だった」
上沢に贈られた最高の賛辞であるが、ロッテ打線を無失点に抑えた上沢の投球が、もっともっと高く評価されてほしい。

8回  堀瑞輝

上沢が7回まで投げてくれたおかげで8回堀、9回北山という鉄壁の勝ちパターンを使えることになった。
緊迫した投手戦。エースらしい好投の上沢から重いバトンを引き継いだ堀はランナーは出したものの、1アウトから中村奨吾をダブルプレーに打ち取り、貫禄のセットアッパーぶりを見せつけた。
2年前には「豆腐メンタル」と言われていたのに、今ではすっかり宮西並の鋼のメンタルである。

9回 北山亘基

ところが9回に登板した北山がこの試合の、そしてプロ入り後最大のピンチを迎えることになった。
先頭バッターのレアード にデッドボールを与え、代走は和田。そして続くマーティンの打席でボークを取られた。
この時、キャッチャー宇佐見がタイムを求めるようなアクションをした(ように見えた)ため、投球途中で動きを止めてしまったようだが、球審はタイムをかけておらず、結果としてボーク。1塁が空いたためマーティンを申告敬遠してノーアウト1、2塁。
佐藤が送って1アウト2、3塁。しかも3塁にいるランナーは和田。浅いフライでも帰ってきそうだ。
エチェバリアには粘られたが三振。これでツーアウト。
ところが代打福田にフォアボールを与え(この日は全体的にボールが高めに浮いていた)、満塁で代打安田。
絶対絶命のピンチを、北山は見事三振で切り抜けた。
ルーキーとは思えない鋼のメンタル。ふんわりとした風貌からは想像できないほど強い気持ちを持った男だ。

10回 宮西尚生

延長に入り、10回表に万波のホームランで1点をリードして迎えた10回裏。
北山の回跨ぎはないとして、じゃぁ誰がマウンドに上がるのか。現在の調子から言うと玉井かと思っていたが、宮西だった。
もちろん、経験と実績においては全く異論のない采配だが、前日の登板の内容を考えると少し不安だった。

16日、ファイターズ8点リードの8回で宮西が登板した。宮西のような投手が大量リードの場面で登板するのが不思議だったが、解説の黒木氏がこのようなことを言っていた。

「これは宮西投手が志願したのかもしれませんね」
「何か自分的にしっくりしない部分があって、この点差ですし、色々確認してみたいことがあったのかもしれません」
「ストレートが多いですよね。何かストレートで納得できないところがあるのではないでしょうか」

つまりこれは『調整登板』だと。

試合で調整しなければならないくらいの『何か』があるのに、こんな0-0の場面で出てきて大丈夫なのか。
結論からいうと、やはり宮西は宮西だった。
低めに集めるピッチング。フォアボールも出したが、ストライクゾーンギリギリの絶妙なコースを攻めた結果だ。
しかも山口、マーティンから見逃しでカウントを稼いだのはストレートだった。調整した翌日にはもう完璧に仕上がっているのは、さすがとしか言いようがない。

10回裏の守備

野手陣は万波以外は打てなかったのだけど、守備ではたびたび良いところを見せた。特に10回裏、1点リードしてここを抑えれば勝てるという緊張感の高まる場面での守備が光った。

まず先頭の高部の強烈な当たりにショート石井が飛びついた。
ファーストに投げることはできず、内野安打となってしまったが、外野に抜けていたら球場内の雰囲気が一変していたかもしれない。結果は同じシングルヒットでも石井が止めたことで、ロッテファンとロッテベンチの反撃の機運が高まるのを防ぎ、味方の士気は更に上がったはずだ。

そして高部を一塁に置いて、次のバッターは藤原。
バントの構えから三塁側に転がしたものの、猛チャージしていた野村がセカンドに投げて送りバント失敗。野村の素晴らしい判断が光った。
もしバスターで野村の頭上を超えてしまったら、高部が一気にホームインという可能性も充分あり、前に出るのは勇気のいるプレイだったと思う。また、ランナーもバッターも俊足だからちょっとでも判断が遅れ、もたついたらオールセーフになってしまう危険性もある。
それでも迷いなく前に出て、迷いなくセカンドに投げた野村のファインプレーだった。

次の中村奨吾の打席。4球目のストレートを外野まで運んだものの、淺間が取ってレフトフライ。
しかしこのレフトフライ、下手するとセンターとレフトの間を抜く長打になりかねない当たりだったが淺間のポジショニングが絶妙だった。
自分の判断なのかセンター近藤の指示なのか、BIGBOSSからの指示なのかわからないが、予測とぴったりはまって気持ち良かったのではないか。

前日16日は17安打11点の快勝。そして17日は1安打(ホームラン)の1点を守って辛勝。
ファンとしてはジェットコースターに乗っているような気分だが、2連勝そして今季初のカード勝ち越しができたことが大きい。
やっぱり勝つことこそが最大のファンサービス。これからもたくさんファンサービスしてくれることを願っている。

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