未来のための1敗
8月27日ライオンズ戦。ファイターズは悔しい1敗を喫した。
その前の2戦で「勝ちパターン」である玉井、宮西、秋吉を連投させていたから、おそらくこの3人を温存したいと思っていたはずである。
残る投手は先発河野を除くと加藤、井口、村田、堀、福田。翌日の先発か金子であることを考えると、村田か加藤はロングリリーフ(あるいはショートスターターにおける第2先発)要員として残しておきたいのではないか。
できれば河野にイニングを食ってもらって、井口や堀で凌ぎたいと考えていたのではないだろうか。
そんな重圧をかけられたルーキーは、4回に2点、5回に3点を取られてノックアウト。連敗中の獅子に死にものぐるいで牙を剥かれては、もう仕方がない。がんばったよ河野くん。
尚も続くピンチを井口で凌ぎ、6回7回は加藤。相手のルーキーに初ホームランを献上したものの、8回表にファイターズが逆転に成功して、1点リードで8回裏を迎える。
1点リードという場面を考えると、8回裏は堀、9回には3連投となってもクローザーである秋吉が上がるのではないか。
そう思っていたが、8回裏に登板したのは福田だった。
福田は2年目ではあるが、一軍のマウンドを経験したのは今年から。ほとんどルーキーのようなものだ。これまではほぼビハインドの場面で投げてきた。リードしている場面で投げたことは一度もない。
シーズン中盤の今、一勝にこだわるのではなく若き左腕を育てる方を選んだ。果たして福田はその期待に応えて外崎と中村でツーアウト。このまま8回を投げ切るかと思ったところで、堀にスイッチした。
堀は代打メヒアにヒットを許すものの、続く森を抑えて8回裏が終了。
9回裏は秋吉かな、と思っていたのに堀がまたマウンドに上がった。
いやいやいやいや、ベテランを休ませたい気持ちはよくわかりますけどね、回またぎって難しいって聞きますよ!?堀くんまだぴよぴよの若手ですよ?22歳ですよ!?4年目ですけど中継ぎ経験は丸1年くらいですよ?上位打線に回ってくるんですよ?一点差ですよ?正気ですか?
あぁもうこれは本当に目先の勝ち星よりも未来を見据えたな、と思った。あと半分残ったシーズンという未来と、数年後のチームの未来と。玉井宮西秋吉の温存は今シーズンの残りを見据えた戦略。今は無理をさせる時ではないという判断。
そしてこの試合勝っても負けても、数年先のブルペンを支える堀の経験になるという戦略。ひょっとすると秋吉の次の世代の守護神候補と考えている可能性だってある。U-18でもその適性を垣間見せていたのだから。
結果的に堀はヒットとフォアボールで満塁のピンチを招き、山川にサヨナラタイムリーを打たれてしまった。
悔しそうに唇を噛んでベンチに戻る堀だが、ここで得た経験は何よりも大きい。
これはもう、未来のための一敗だ。この一敗が将来何倍もの勝利になって返ってくるはずだ。
1点リードという場面で自分の役割を十分に果たした福田は間違いなく大きな自信につながったはずだ。
サヨナラで悔しさを味わった堀、さらに先発でいい流れを作れなかった河野だってこの悔しさを糧にして、大きく成長するはずだ。
(エラーをしてしまった清宮も)
まだ20代前半の若者たちがこの経験をチームに倍返ししてくれると期待している。
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