点を取られなければ負けることはない(その2)
Q. なんでうちの投手たちはそんな極端なことを言うのか。
A. それは相手が相手だから
上沢が冒頭の台詞を言ったのは、完全試合を達成したあとの佐々木朗希との対戦を控えてのこと。
そして今回伊藤大海がそれを言ったのは、ノーヒットノーランを達成し、そのあとの試合も8回4安打無失点の山本由伸との対戦を控えてのこと。
ローテーションの巡り合わせとはいえ、なんというタイミング。どう考えても味方の大量得点は期待できそうにない。じゃぁ自分ができることは相手に点をやらないことだ。
達観した投手たちは有言実行する。
4月17日の上沢は勝ち負けこそつかなかったが、7回無失点。チームは万波のホームランの1点を守って勝利した。
そして7月2日の伊藤。
一回裏にファイターズが先制した。山本由伸から点を取った。
「点を取られなければ負けることはない」
から
「点を取られなければ勝てる」
に変わった。
ランナーは出しても点は与えない粘りのピッチングでスコアボードに0を連ねる。
宇佐見の捕殺や野手の好守にも助けられ、そして何より山本由伸相手に5得点という大量援護をもらったことで、伊藤のギアはさらに上がった。
9回は足が攣りかけていたといい、ツーアウト2、3塁のピンチを招いたものの、意地の投球で無失点。
見事完封で今季6勝目を挙げた。
点を取られなければ負けない
でも
点を取らなければ勝てない
投手は自分の力だけでは勝てない。パリーグでは野手に点を取ってもらえなければ勝てない。野手だってみんな勝ちたいし負けたくないけれど、その歯車がうまく噛み合わない時もある。
だからこそ、噛み合った時には絶対勝たなければいけない。
5点差だから、まぁ1点や2点取られても…と思う気持ちは伊藤にはなかったと思う。絶対に点を取られない。絶対に完封で終わる。そんな気持ちが前面に出た投球だった。