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まちに出ること、まちと繋がること/県央セントルマルシェを通して考えた、私たちにとっての東広島
※本記事は、2021年12月28日にwebメディアYeastに投稿されたものです。現在と当時の状況は変わっている可能性がありますので、あらかじめご了承ください。
日に日に寒さが増し、息の白くなる季節がやってきました。大学内の木々も赤や黄色に色づいていた葉がすっかり落ちて、枝が寒そうに揺れています。
季節は少し遡って、夏から秋に移り変わろうとしていた10月半ばの週末。広島県の真ん中の地域で、第10回県央セントルマルシェが開催されました。
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県央セントルマルシェとは、県の中央に位置する豊栄町、河内町、福富町が合同で主催するイベント。
各地域のお店がブースを出し、いつもならお店に行かないと買えない商品が販売されたり、お客さんが自分で商品を作れるワークショップが行われたりします。
(2019年4月に行われた第5回セントルマルシェに参加させていただいた際の記事はこちら↓)
今年はトムミルクファーム、小石川観光りんご園、こうち寄りんさい屋の3会場に加え、各地域で7つのお店が会場となり、合計10会場での開催となりました。
私たち学生団体mahoLabo.からも、トムミルクファーム会場に展示品を提供させて頂きました。
このセントルマルシェは、mahoLabo.に今年度の新メンバーが加入して初のイベント。初回の企画会議はみんなの自己紹介から始まりました。
― このイベントには毎年たくさんの家族連れが来るから、子どもたちが楽しく遊べて、親御さんにはほっと一息ついてもらえるようなブースにしたいね。
― 私たちがmahoLabo.の活動を通して見つけた東広島の素敵なところを、この機会にみんなに広めたいな。
とたくさん話し合って、4つの展示作品が完成しました。
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西条駅を出発し東広島市をぐるりと一周すると、会場であるトムミルクファームにたどり着きます。それぞれのマス目には、各地域のオススメのお店や隠れた名所が。
みんなでこのすごろくを作っていたとき、部屋には「ここのこれが美味しいんよ~」「今度一緒に行こうね」と、わくわくする会話が飛び交っていました。
すごろくで遊んでくれた子どもたちや親御さんの中には、「あっ、ここ行ったことある!」「こんなお店があったの?知らなかった!」と話してくださる方もいらっしゃいました。そんなお客さんたちの笑顔を見ていると、東広島に新たな魅力を発見するお手伝いができたのかな、と嬉しい気持ちになりました。
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おやおや?ここには市のマスコットキャラクターでお馴染み、のん太がちらり。この神経衰弱のイラストは、メンバーが一枚一枚手描きで描いたものなんです。ゆる~いタッチのイラストを見ていると、なんだかほっこりして自然と笑顔になれちゃいます。
他にも、行列の絶えないパン屋さんや西条酒蔵通りのお酒のイラスト、市のマークに込められた意味が書かれたカードもあって、見ても読んでも楽しい神経衰弱になっています。
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子どもたちがすごろくや神経衰弱で遊んでいる間、親御さんには私たちmahoLabo.の活動について知ってもらいたいと思い、過去の取材先を地図と一緒に紹介しました。
たくさんある記事の中からどれを紹介するかを選ぶのは一苦労で、メンバーそれぞれが好きな記事を出し合っては「この人のこのセリフが良いんよ」「この記事を読んでこの人のファンになってしまった!」とその愛を語りました。迷いに迷った末なんとか10個に絞ったあとまた読み返して、もっとたくさんの人に読んでもらいたいという思いを込めて紹介文を書きました。
ひとに焦点を当てて書かれるYeastの記事を読み返しながら、東広島には素敵なひとがたくさんいるなあ、としみじみ。
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画用紙いっぱいに大きく描かれた木に、たくさんのリンゴの実。
それぞれのリンゴには、来て頂いた方々に東広島の好きなところを書いてもらいました。
地域に積極的に関わる活動をしている方々とお話することが多い私たちですが、このリンゴの木を通して、普段なら関わらないような人と出会って、私たちが魅力だと感じているものと地元の人が魅力だと感じているものの違いを知れたのは新鮮でした。
大学のあるまち、それだけ?
私はこの春広島大学に入学して初めて東広島市にやって来ました。長かった受験勉強が終わり、全く新しい環境での生活への不安と憧れだった一人暮らしができる嬉しさで心をいっぱいにしながら大学生活をスタートしました。
入学して数カ月でわかったのは、「大学では自分から行動しないと何も起こらない」ということでした。大学は本当に自由です。決められているのは取らなければいけない単位数だけで、それ以外には何をしても良いし、どう過ごしても良いのです。
だけど不思議なもので、何をしてもいい状況になると、途端に私は何がしたいのかわからなくなってしまいました。大学に入ることがゴールではないはずなのに、そこから先をどう進めばいいのかわからない。早く何かしなければと気持ちばかりが焦って、急いで飛び込んだ先に自分の求めていたものが無かった、ということもありました。
いくつも回り道をしたあと、mahoLabo.に加入しました。「東広島を学生にとってまた帰ってきたいまちにする」というコンセプトに惹かれたのを覚えています。
加入してしばらくしたある日、同級生のメンバーと一緒に初めて自分の足で西条の酒蔵通りを歩いてみました。先輩に教えてもらったおすすめのお店を巡りながら、気の向くままに色んな方向に歩きました。なんだか雰囲気の良い裏路地に入って写真を撮ってみたり、ひっそりと佇む雑貨屋さんに立ち寄ったり。歩いていると通りに面したお店から店主さんが出てきて、どこから来たの~と話しかけてくれたりもしました。
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この日私は「ああ、なんか良い!」と何度も何度も言いました。
この「良い」の意味には、素敵なお店を見つけられたことも、美味しいものを食べられたことも、綺麗な景色を見られたことも、友達とたくさんおしゃべりをして笑い合えたことも全部含まれているけれど、このどれもが、自分でまちに出てみたからこそ味わえた「良さ」なんだな、と思います。
何をすればいいかわからなくて退屈していた入学当初の私は、東広島で暮らす意味を「大学があるから」としか考えていなかったんだと思います。
だから初めてmahoLabo.を知ったとき、「また帰ってきたいまちをつくる」というコンセプトに意表を突かれたような気がしました。そうだ、ここは「大学のあるまち」だけじゃなくて「私が暮らすまち」なんだ。ここで少なくとも4年間は過ごすのに、何も知らないでなんとなく過ごすのはもったいない、と思うようになりました。
知る、だから繋がる
酒蔵通りを実際に歩いたり、mahoLabo.の仲間と一緒に東広島市の色々な場所に行ったりする中で、まちやひとのことを知りました。知ることは、繋がるための第一歩だと思います。
セントルマルシェの会場で準備をしているときのこと。
私は突然横から声をかけられました。「この前はありがとうね!今日もよろしく!」と大きな声で話しかけてくださったのは、以前豊栄町にある古民家の掃除をお手伝いしに行ったときにお話した方でした。
一度しかお会いしたことが無くても、私やmahoLabo.のことを知っているから、また会ったら声をかけてくれる。単純だけど、こうやってひととひととの繋がりはできていくんだなと実感して嬉しくなった瞬間でした。
まちだって同じです。何かで見たり聞いたりした情報ではなくて、自分で、自分の足でまちに出て、そこについて知る。そのまちについて知っていることがあれば、またそのまちを思い出すことができます。そして、一度知り合ったひとに次また声をかけてみようかなと思うのと同じように、「またここに行ってみたい」「もっとこのまちについて知りたい」と思うきっかけになる。それって、まちを知ることが、まちと自分を繋げる材料になっているということじゃないかな、と思うんです。
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セントルマルシェでmahoLabo.の展示を見て下さっていた方とお話をしていると、少し不思議そうな顔で「良いですか?東広島」と聞かれました。
そのとき私は、学生がよく「ここは何もない田舎だよね」と言っているのを思い出しました。そんな中で「東広島をまた帰ってきたいまちにする」ために活動している学生がいることは、確かに不思議に思えるのかもしれません。
けれど、mahoLabo.は初めから東広島という土地にこだわりをもっていたわけではありません。
言ってしまえば、たまたま大学があって、学生が集まるのが東広島というまちだった。でもその「たまたま」を大事にして、せっかく来たこのまちを思い出の場所にできれば、大学生活はもっと深く心に残るんじゃないかと考え、活動を始めたのがmahoLabo.です。
私はmahoLabo.の活動を通して、大学に行くことだけじゃなくてまちを楽しむこともここで暮らす目的のひとつになるんだ、と気づくことができました。だから今もう一度この質問をされたとしたら、私の答えは「東広島に来てみて良かった」です。
「また帰ってきたいまち」
mahoLabo.のコンセプトにある「また帰ってきたいまち」という言葉。この定義はメンバーの中でも様々です。会いたいひとがいるまち、好きなお店があるまち、思い出のあるまち……また帰ってきたいと思えるきっかけは人それぞれです。
ここまで考えてきて、今の私にとってまた帰ってきたいまちは、「繋がりのあるまち」なのかなと思います。ひとでも場所でも、自分と繋がっているものがあればそれだけで、また会いたい、帰ってきたいと思える理由になるはずです。
これからまた色々な経験をしていくとこの気持ちも変わるかもしれないけれど、これが今の私です。
進学のために東広島に来た大学生にとって、ここがただの「大学のあるまち」で終わってしまうのは、その本人がきっと寂しい。このまちで過ごす意味をもっと探してみても良いんじゃないかな、と私は思います。
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mahoLabo.の活動は、東広島に隠れている良いところを見つけること、そしてそれを少しでも多くのひとに伝えて、東広島を知るきっかけをつくることです。東広島を盛り上げるために一から何かを作ろうというのではなく、今ある良さや、気づいていないだけできっとみんなときめくはずのものを探して広める。
この活動で、他の誰かが東広島を好きになったり、東広島にいる意味を新しく見つけられたら良いな、と思います。
まちに出ること、まちを知って繋がること。それが自分自身の見る世界を大きくしてくれるような気がします。友達とお話しながら歩くもよし、一人でのんびり巡るのもよし、車があるならドライブしながら少し遠くまで行ってみるのもよし。せっかく来た東広島、楽しまなきゃもったいない。
語り手:たまちゃん 写真:てるちゃん 編集:ひかりん