放課後まほらbo第九話 「遊び」とは
【第九話】
■遊びの3つの側面
■身体的あそび
■認知科学で遊びを考える
放課後まほらboでは、「あそびは、最高の学び!」の構造化をすすめ、遊びを科学することで、こどものより良い成長を促す「遊び」とは何かを考えています。
■遊びの3つの側面
遊びの影響を考えると、色々な側面が見えてきます。例えば、木登りや鬼ごっこなどは、身体を使った大きな動きによって、骨格や筋力、それを基にした所作といった立ち居振る舞い、基本的な身体能力の向上を促すことが考えられます。またクラフト遊びに必要な手先の器用さや、かるたやトランプ、囲碁や将棋などは、言葉やルール性の認識など認知機能を高めることにつながると考えられるし、人形遊びやままごと等は、遊びを通したロールプレイで社会性を育むことにもなるでしょう。つまり「遊びは、最高の学び!」という時には、このような遊びによる身体的、認知的、社会的な側面への影響を考え合わせると、そこで行われている「遊び」の中に何らかの意味理解が生じることになるはずです。そして遊びを通して、子どもたちに対し何らかの変容が期待されるということにもつながります。それは赤ちゃんから、乳幼児、児童と成長する課程で、もっとも如実に観察することが出来ます。可愛い赤ちゃんが、成長と共にいろいろな能力を獲得していくのを目の当たりにすると、遊びの中に内在するヒトの学習プロセスについて、とても関心がわくことでしょう。最初は意識されていないものであっても、遊びの種類によって何を獲得しようとしているのか類推してみたり、それが動物の子どもと共通するところもあれば、複雑な情報処理をするヒトとして特別なこともあるのは当然です。遊びを分析的に理解することが、ヒトの成長や発達、学習を考える時に鍵になると考える理由がそこにあります。構造化して分析的に捉える事の必要性は、自己調整学習の力でも触れたように、その構造に着目することがポイントになると私は考えています。
■身体的「遊び」
人間の身体は生まれてから思春期までの間に驚異的な変容を遂げます。例えば、その期間の身体をつかった大きな動きをする遊びは、身体的成長と発達に必要な課題を獲得することを助けます。またそれらの動きは、今では神経系の発達にも大きな影響を与えると考えられています。つまり脳は身体の各部位に動きを指示していますが、身体各部の動きは逆に神経回路を強化し脳を成長させるという相互関係が、次第に明らかになってきているのです。この身体的遊びの効果は、単に身体能力の向上を意味するだけでなく、いわゆる非認知能力といわれる「自己肯定感」「動機付け」「メタ認知」などを高めることにもなります。幼いころに速く走れたり、木登りが出来たり、高い跳び箱が跳べたりすると自信や達成感につながるのはそのためでしょう。小学生時代は、伝統的に足の速い男子がモテるというのは、身体能力が高いというだけではなく、多様な成長を促すための素地が整うことへの期待感なのかも知れません。
■認知科学で遊びを考える
身体的「遊び」も、ある意味ニューロンを活性化させるという認知科学的な面もありますが、ここでは、言葉遊びやカードゲーム、折り紙や積み木、囲碁や将棋といった「遊び」をイメージして考えています。また、より複雑な情報処理をするヒトの遊びとして、ままごとのような社会性や関係性を豊かにするごっこ遊び、造形や織物のようなスキルを高める手仕事遊び等もイメージしています。こういった遊びには、継続性や慎重さ、粘り強さが求められ、それらは学びに向かう力としていわゆる非認知能力と関係したり、そのものと考えられたりするからです。つまり学力を支えるための「学習力」やコミュニケーション力を育み、意欲を掻き立て、協調性を発揮するためには、遊びに内在するこれらの要素を経験することが、大きな役割を果しているのは容易に想像ができるでしょう。私たちは、普段の生活では子どもたちと遊びながらこのようなことを考えることはあまりありません。しかし、教育実践の場面で子どもの変容を感じたり、ライフスタイルの変化で遊びが減ったり、その内容が変わっていることに気付いたときに、少し立ち止まって考えてみる必要があると思っています。時代や社会の変化に対応し、大切なものを見失わないためにも。
こういった「あそびを科学する」という視点で、放課後まほらboの考え方について紹介していきたいと思います。
次回は、そもそも「遊びの必要性」について掘り下げて考えたいと思います。
では。
(みやけ もとゆき/もっちゃん)