【6】step19 どんな些細な工夫(アイデア)も捨てずに膨らませる材料にしよう!
この話は、ささいなキッカケから、「新しいこと」をはじめることになった高校生の2人組が、経営者や起業家、ユーザーの声をききながら、サービスをつくりあげていく物語です。
■ 主な登場人物
■ 前回までの配信
第6章 「みえる形」にする
価値を届けたい人に届けられるか、形にしてみよう
Step19:どんな些細な工夫(アイデア)も捨てずに膨らませる材料にしよう!
『明日は僕の会社で続きをしよう。3Fまで来てね。 蓮人』
葵さんと出掛ける蓮人が、終わりがけに会社に来るよう提案してくれたので、今日は2人で蓮人の会社に足を運んだ。
チーン。
3Fまで上がりエレベーターの扉が開くと、以前に見たことのある蓮人の会社のロゴが目に飛び込んできた。太陽の神と月の女神をモチーフに作られた格好いいロゴだ。
株式会社インスパイア・イノベーション。若い人たちは、Inspire Innovationの頭文字を重ねて、通称、アイアイと呼んでいる。
蓮人が、大学1年生の時に出会った友人2人と2年前に設立した会社だ。アイアイは、3人から始めて今は、23人まで拡大している企業だ。アイアイ社は、今や国内にとどまらず、東南アジアでの成長を目指し、シンガポールを中心にインドネシアやマレーシアなどを足掛かりに世界展開を目指して精力的に活動している。
そう。実は蓮人は、世間に少しだけ注目され始めた、すご腕の学生起業家なのだ。
エレベーターを降りて左手に少し歩くと会社の受付が見えてきた。2人が覗くと、1人の男性がそれに気づいて近寄り、声をかけてきてくれた。
男性「ひょっとして、君たちが社長の弟さんとお友達かな?話は聞いています。こちらへ!」
お洒落な男性に案内された先は、白くて明るい広い部屋だった。
部屋の向こうには仲間と話している蓮人が見えた。
蓮人「おっ!来たな2人とも〜。昨日はお疲れ。待ってたよ。じゃ、早速始めようか。」
そういうと蓮人はホワイトボードを寄せてきて、ポストイットとペンを沢山出してきた。
昨日健人の家で書いていたホワイトボードの写真データが ホワイトボード横の大きなディスプレイに映し出されていた。
それから、大きな模造紙をボードに貼って、上にペンでキュキュッと文字を走らせた。
蓮人「昨日まで、君たちは このサービスに必要な価値ついて考えてきた。今日は、一気に具体的なアイデアを考えていく。アイディエーションって知ってるかい?」
爽太「アイディエーション・・」
2人に尋ねながら、蓮人はアイディエーションについて説明してくれた。
【コラム】アイディエーションとは
アイデア創発のことを英語で IDEATION、アイディエーションといいます。
アイデア創発とは、誰も気づいてないかもしれないユーザーの痛みや困りごとからアイデアを考えていくことを指します。痛みや困りごとをstep12やstep14では「インサイト」と表現しました。
世の中では、インサイトを捉えず、単なる顕在ニーズからアイデアを創ることがたくさん行われています。中にはニーズを捉えようとせず、単に場当たりなアイデアでビジネスを行おうとすることもあります。
しかし、その場合、いくら良いアイデアであってもユニークさやオリジナリティには限界があり、模倣されやすく、提供する競争相手も多いため、必然的に、価格勝負や大きな規模の会社に負けてしまいがちです。
また、ユーザー不在の自分勝手なアイデアを作ると、それはユニークであっても独りよがりなものが生まれやすく、評価して使ってくれるユーザーがいないため、結果的に誰にも使われないものになりがちです。
インサイトをしっかり確定させ、その一点からアイデアを膨らませていくとブレがなくなります。誰のため?何のため?をしっかりと考えたアイデアはユーザーの幸せのためになり、ユーザーのかけがえのないものを提供することが可能になるため、結果としてたくさんの人に愛される製品やサービスが生み出されやすくなります。また、ブレない視点で始めるため、自由かつ大胆で面白い発想を入れ込むことも可能です。
本来、アイデア創発を進めていくには、「① アイデアを発散させる」「② グルーピングする」「③ タグ付けする」「④ 構造化する」「⑤ ユーザーの声を聞く」「⑥ アイデアを削る」「⑦ 組み合わせる 」「⑧ 候補を決める」「⑧ 評価軸を決め評価する」「⑨ アイデアを決定する(設計図を描く)」というステップが必要です。
しかし、それぞれのステップには実践による反復や学習、経験によるいい塩梅の加減などが必要になります。
爽太は普段とは違った環境に少しモジモジしながら緊張していたが、蓮人の説明してくれたアイディエーションについてはすぐに理解ができ、ペンとポストイットを持った。
蓮人「昨日 バリュープロポジションキャンパスでソリューションを考えただろう。その集大成として『ソリューション』を作ろう。君たちのソリューションは難しく考える必要はない。そう、ミックスジュースだ。」
健人「なんだ、ミックスジュースの案なら爽太と一緒にもう作ったよ。」
蓮人「そうだね、でもそのミックスジュースは本当に自信を持って出せるもの?だから、VPCで考えたソリューションを現実的なアイデアにしてみよう。もう一度、根本的なところから考えてみるんだ。まずはアイデアを出す。初めのアイデアは思いつきのようなものを種として考えることで充分。」
爽太「そうなんですね、じゃあ一旦、今まで考えたものにとらわれずにみんなでアイデアを出して改めてミックスジュースを考えていくんですね!」
蓮人「どんなアイデアが出てくるか?うちの会社の若いメンバーも興味を持ってくれてるからあとで何人か誘ってみんなで考えよう!」
机の角にあったポストイットの束をトランプを配るように、蓮人は2人に渡していく。同じようにペン立てにたくさん入っているサインペンを配りながら言った。
蓮人「では、今から3分くらい時間を取るから、1人10個くらい考えてみよう。」
健人「え、え?3分で10個?!そんなに出てくるかな・・」
健人は頭をポリポリ掻きながらポストイットを見つめた。
蓮人「そんなに難しく考えすぎないで。思いついたことを書いてみよう。この時、文字ではなく絵で描くのも有効だよ。」
健人「え、絵!?」
健人はさらに頭を激しくポリポリ掻きながら、うーーんと唸りながらおでこに手を当てていた。
蓮人「さらにいうと、絵って言っても、棒人間とか乗り物がマルとシカクで表現されているとか、要するに記号みたいな感じでもいいよ。後で説明ができればいいから、気にせずどんどん書いてみてね。」
そう言いながら、蓮人はホワイトボードに大きく「 」と書いた。
蓮人「じゃー、いくよ。」
連人はそういうと手元のタイマーをスタートした。リラックスできるように蓮人は少しピッチの早いJAZZの音楽を流してくれている。
爽太「わ、わ、もうですか、うわー3分って長いの?短いの?」
ーー
3分の沈黙。。
ピピッ ピピッ
健人「げっもう3分!?まだ3個しか書けてないよ・・」
爽太「僕は6個。10個は遠いな〜。」
蓮人「おおっ、2人ともいいじゃないか。初めてなのに全く書けてないわけじゃないし、3個以上アイデアが出るのはいい兆候だよ。トレーニングすればまだまだいけるね。そしたら、手元のアイデアを1つ1つ、説明しながら前の模造紙に置いていこう。」
蓮人が言うように書いたアイデアをボードに貼っていき、模造紙にはあっという間に10個ほどのアイデアが貼られた。中には別の人が考えたけど全く同じアイデアや、ほとんど同じだけど少しだけニュアンスが違うアイデアもあった。
『3時間をカウントダウンする』
『ジューサーにカメラを仕込んでジュースになっていく様子をプロモーションに使う』
『健康志向で有名なヨガのインフルエンサー Keiko に頼んで宣伝してもらう』
『ウェブでしっかりと成分が確認できる』
今まで出てきたものがほとんどだったけど中にはちょっと笑ってしまうようなアイデアや普段は出てこなさそうなものも出てきてちょっとだけテンションが上がった。
健人「なんか、これ、すごいね」
蓮人「そしたら、これを今度はグルーピングしていく。グループに分けていく、ということだね。できそうかい?」
爽太と健人は このアイデアは近いんじゃないか、同じ仲間じゃないか、と思うものを寄せてグループにした。蓮人も、サポーターとして一緒にグルーピングを手伝ってくれた。
蓮人「そろそろできたかな?そうしたら、タグって呼ぶんだけど、そのグループを象徴する言葉を別の色の模造紙に書いていこう。」
2人で話しながら健人がタグを書き始めていくと、蓮人が追加するように話し始めた。
連人「グルーピングのタグを書くポイントは、単なる単語ではなく、1つのメッセージ的な文になるように書くのもポイントなんだよね。」
1つのメッセージ?と頭にハテナを浮かべていると、蓮人がポストイットの内容を覗き込んで、「たとえばこんな感じかな」と書いてくれた。
爽太「なるほど。そういうことなんですね。そうすると、タグの中にあるアイデアのニュアンスがはっきりする!ちょっとこのグループとこのグループは中のアイデアを一緒にするの違うかも。」
みんなの前に貼られた模造紙には、黄色のポストイットで書かれた30個以上のアイデアが6つのグループになり、そのグループごとにピンクでタグのメッセージが書かれた形になった。
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