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【9】step34 自分たちのビジネスをどこまで大きくするのか考えてみよう

この話は、ささいなキッカケから、「新しいこと」をはじめることになった高校生の2人組が、経営者や起業家、ユーザーの声をききながら、サービスをつくりあげていく物語です。

■ 主な登場人物

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第9章 どこまで「大きく」する?
どれだけ大きくして、どこまで遠くまで行きたいか?考えてみよう!

step34 自分たちのビジネスをどこまで大きくするのか考えてみよう

いつもより早く春の息吹を感じさせる、柔らかな日差しと鳥のさえずりが心地よい土曜日。暖冬、暖冬、と言われてはいるがまだ2月なのにこんなに暖かいと、もう春がそこまできたのかと勘違いしてしまうような朝だ。

「「ありがとうございましたー!!」」

シェアキッチンの販売ブースでは KUSS JUICEの看板が光り、店頭には爽太と詩が並んでいた。

爽太「今日は売り切れになるのが早いね。イベントで人が出てるからかな。」

詩「そうね〜。そこの広場で音楽フェスやるって言ってたもんね。去年やったのが好評で今年は少し遠くからも人が来てるって言ってたよ。私も後で友達と一緒に行ってみるんだ。そのおかげか、私たちのジュース、今までのファンじゃない人もSNSでも紹介してくれてる人がいるみたい!」

詩はスマホを片手に爽太に相槌を打った。

本格的なジュース販売を開始して、はや3週間半。ここまでも急ピッチで進めてきたが、とにかく無我夢中でジュース屋さんのオープンまでの準備を進めてきた。

思えば、夏休み。何もやることがないところから爽太と爽太パパの何気ない会話がきっかけだった。そこから3ヶ月。応援者と仲間が増えていって本当にジュース屋さんをはじめるところまではあっという間だった。ビジネスをしてみよう!と思ってからはさらに3ヶ月。目まぐるしく状況が変わる時には、チームが出来上がっていた。

実は、何度も諦めかけたジュース屋さんの開業だったけど、「分からないこと、難しいことは、よくわかっている人にアドバイスをもらう」ということ。この開き直りを手に入れてからは、とにかくいろんな人たちを頼りまくった。3ヶ月かけて準備をして、実のところ、いくつか本当に大変だった時のことはあんまり覚えていない(笑)

「失敗してもいいから思いっきりやってみる」と4人で決め、自分たちの親や兄弟、そして周りの人たちからもたくさんの応援をもらい、冬休みを全部、自分たちのお店に時間とやることを注ぎ込んでついに「KUSS JUICE」を小さくオープンさせたのだった。

詩「でも、今日はミーティングの日だから早めに終わったし、ちょうどよかったんじゃない?」

爽太「そうだね。よし、じゃー片付けて蓮人さんのオフィスに行こう。」

爽太と詩はブースの片付けを手早く済ませて歩いて5分の蓮人のオフィスへ行った。

ビジネスモデルキャンバスが完成し、週末に交代でシェアキッチンでミックスジュースを販売し始めて、ちょうど約1ヶ月が経ったところだった。

健人を通じて蓮人さんから連絡があり、今日は4人でオフィスに集まる予定だ。

ーー

蓮人「みんな、あっという間だけどなんだか久しぶりだね。」


舜「いやぁ、そんなに久しぶりじゃないですよ。たぶん、開業前の準備の時にはほぼ毎日、ずーーーーっと一緒にいたからですって。僕たち、お兄さんの会社の社員になっちゃったんじゃないかって思うほどオフィス使わせてもらっていましたからね。」

季節が春に近づいているからか、蓮人は春らしい薄手のジャケットを着ていた。なんか、蓮人さんっていつもオシャレなんだよなぁ〜。自分もあんな大人になりたいなぁ、と爽太はぼんやり思った。

ジョン「KUSS JUICEの反響と話題は聞いてるよ。しかし、みんなフェイスが変わったね。
なんだかこの前会った時よりもちょっと大人な感じがするよ。」

舜「本当ですか!ありがとうございます。」

ジョン「実はみんながやった、ジュース屋の開業が、僕たちの会社の若手社員に火をつけていてね。『社長の弟さんたちだからやっぱり才能が素晴らしいけれど、彼らにできるなら普段社長の近くで働いている私たちにもきっとできるんじゃないか!』って社内の新規事業がものすごく熱量高くてみーんな、超やる気になっているんだ。今、会社が Super possitive. みんなちょっと活き活きしていていい感じだよ。君たちのおかげかも。」

お互いに照れて顔を見合わせながら舜がペコリと頭を下げた。

爽太「今日はお時間ありがとうございます。ジュースは正直とても順調なのですが これからどうしていくのがいいかな‥って、最近、健人と話していたんです。」

健人「このジュースを欲しいって言ってくれる人は結構いてくれて、きっと そう珍しい街でもないから、別の町でも同じように欲しいっていてくれる人は沢山いるんだろうな‥と思ったり。なんとなく、100杯という限定をしっかり守れば、たくさんの人たちが同じように協力してくれることが可能だよな、って思って。実はもっとたくさん店舗ができちゃうんじゃないか?って思っているんですよね。ただ、僕たちは来年、大学にいくメンバーもいて受験が控えてるんだよな‥と思ったり、で。」

蓮人「いい感覚だね。たしかに、テスト販売を終えて、1ヶ月本販売を実践してみた今、これから”どこまで大きくしたいか”は選択していくべきタイミングに差し掛かっていると思う。」

舜「どこまで大きくしたいか、ですか?」

蓮人「そう。いま 君たちは交代で週末販売をしてみて、このデータを見せてもらうと1日100人への販売が高校生としてはベストな販売量なんじゃないか?って思うんだよね。もちろん、健人が言うように、仲間を募ればオープン時間も拡大できるし、他の町に行かなくったってこの町だけで10箇所くらい出店することだってできるだろうけどね。もちろん、この地域だけじゃなく、首都圏や海外進出だってあり得る。これをフランチャイズ化って言うんだけど。」

詩「海外!!すごい‥」
健人「そうやって聞くと、ワクワクするね。」

ジョン「グレイト!ワクワクだよね。ただ、もちろんいいことばかりじゃない。例えばフランチャイズ化するとしたら、それを管理する手間や時間は沢山かかるだろうね。あとはこの辺からみんなの想いがどれだけちゃんと伝わるのかってのが大事になるんだ。4人なら平気だけど、それを100人、300人にちゃんと自分たちが大切にしたいことを届けられないと結局、ただのジュース屋さんになっちゃう。」

爽太「そうだよなあ‥正直、夏の前の自分だったら想像できないことをさせてもらって本当に毎日が楽しくて、あっという間で、実際にこの1ヶ月販売してみて、手応えも感じたんです。」

蓮人「わかるよ。僕や親父の目からみても、この事業は評価してるんだ。これは本当に。」

爽太「ありがとうございます。でも‥って気持ちもあるんですよね。少し、4人で話してみてもいいですか?」

みんなの顔がいつにも増して神妙に見えた。楽しいだけじゃ前に進み続けられない。責任が発生することもわかっている。

ジョン「もちろん!そういうと思って、持ってきたよ。」

ジョンはそういうと レモンソーダを4つ差し入れに持ってきてくれた。一気に場の空気が柔らかくなり、和んでいく。

午後になってより一層暖かい。きっとあっという間に桜が開花して春がやってくる。そんなことを言っていたら、去年、何もやることがなくてボーッとしていた夏がやってくるんだ。そうやって本当に一瞬で1年が通りすぎていく。

爽太は、みんながワイワイ言いながらも楽しくソーダを飲んでいる姿をボーッとみながらも、きっとこのあと決めていく決断が自分の人生にとって初めての、そして大きな分岐点になるんじゃないか、と思っていた。


ーこのステップのポイントー
やってみてうまく行ったことをどこまで広げるか、大きくするか、を検討することは大事です。
・大きいと影響力が出てより多くの人たちが関わることになります。得られることも大きくなりますが、そこには責任とリスクが伴います。
・小さくうまくいったことを少しずつ大きくしていくのがポイントになります。

ー考えてみようー
・確信をもてる部分を少しずつ大きくしたり広げたりしていった経験はありますか?それはどんな時で、どんな感情がありましたか?
・行っていることが広がりすぎて、自分の手に負えなくなった経験はありますか?それはいつでどんな教訓がありましたか?
・何かをする際に、仲間を集めて進めたことはありますか?どのように仲間を集めチームを大きくしていったでしょうか?


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