【6】step25 次のステップに向けて仲間が見つけたらチームに誘う
この話は、ささいなキッカケから、「新しいこと」をはじめることになった高校生の2人組が、経営者や起業家、ユーザーの声をききながら、サービスをつくりあげていく物語です。
■ 主な登場人物
■ 前回までの配信
第6章 「みえる形」にする
「かけがえのない」をつくってみよう
step25 次のステップに向けて仲間が見つけたらチームに誘う
ものすごい暑さだ。クーラーのついた部屋にいないと熱中症になってしまう。2人はこの夏、夏休みが始まって以来はじめて、別々に週末を過ごし、それぞれ家族や親戚との時間を過ごした。月曜は学校の夏期講習で、午前中からうだるような暑さの中、爽太は汗びっしょりになりながら登校していた。
健人「おはよ〜っす」
爽太「お〜、おはよ〜。なんか久しぶりだなぁ」
健人「そう感じるだけで、実際にはそんなに時間が空いたわけでもないんだけどね(笑)」
講習がはじまるまでに、1人、また1人とまばらに人が集まってくる教室の様子をみながら爽太がそれとなく話し始めた。教室の外のベランダの手すりは暑すぎて陽炎が立っているようにも見える。
爽太「俺さ、今回の健人の兄ちゃんの会社でのことで思ったんだけど、人数がいればもっといろんなアイデアが生まれるよね。今回は会社の人に引っ張っていってもらった感じがするけどやっぱり自分たちでもさ、いろいろとアイデア練って前に進めるあの感じをもっと味わいたいな、って思ったんだよね。」
健人「あ!分かるよ。俺もそれ思ったもん。爽太とのいろんな言葉のキャッチボールもさ凄く楽しいんだよね。でもたまに行き詰まると、二人でどうしたらいいか分からなくなる時があるじゃん。そういう時に、もう一人、二人いてチームって感じでやれたいいよなってちょうど昨日も思ってたんだよね。」
爽太も健人も意気投合したのかお互いに、ウンウンと頷きながらお互いのこれまでのアイデア出しも思い出していた。そして、その勢いで爽太は健人に顔を近づけて切り出す。
爽太「あのさぁ、詩に我々のチームの仲間になってもらえないかな?」
健人「お!やっぱ、詩?実は俺も爽太と話しながら、詩の顔が浮かんでてさ。それちょっと思ってたんだよね。先週、葵さんと話していて、いざ詳しくジュースを作ってみようってなった時、やっぱり女性ならではの視点のアイデアや感度がすごいな〜って。だから特に今のこのサービスには、我々には身近な仲間として軍師みたいなメンバーがいるんじゃないかなって。」
爽太「だよなー。僕らがミックスジュースを考えていく方向性にもターゲットとして詩を挙げてたし、仲間になってもらえたら正直、かなり心強いよ。」
健人「賛成、賛成!・・・でも詩、僕らの仲間になってくれるかなー。」
ちょうど話をしていたタイミングにいつもの水筒を持って詩が登校してきた。夏なのに、彼女だけ妙にさっぱりしていて爽やかだ。普段からヨガをたくさんやっているとどんなに暑くても汗かかないんだろうか。いやいや、そんなはずはないよな。
爽太は詩を手招きすると、寄ってきた詩にこれまでの経緯と今の想いを伝えた。
爽太「ってことでさ、仲間になってくんない!?詩、頼むよー。」
詩「えー、私が!?健人くんのご家族や葵さんって人のようなキレキレの頭はないわよ」
爽太「それは大丈夫。僕もなんとかついていってるつもりだし、どちらかというと自分たちのチームとしての仲間が必要だって話だから」
健人「詩は僕たちが考えているサービスの、大切なご意見板ってところなんだよね。」
詩「まぁ、なんか興味のある分野で面白そうだし、別に、いいよ。どこまで貢献できるか分からないけど、ムードメーカーとツッコミ役みたいな形で参加してあげる。」
健人と爽太は思わず顔を見合わせてハイタッチした。そんな状況を照れくさそうに詩が見ていたが、何か思い立ったように二人に尋ねた。
詩「あ、ねぇねぇ。 こういう商品づくりって、サービスの細かいところを考えたり、いろんなものをデザインしたりパソコンに詳しい人も必要じゃない?」
爽太「あ、それ、実はこの前、会社で指摘されたかも。難しすぎてよく分からなかったんだけど。そりゃもちろん、そういうメンバーがいてくれたら心強いよ。でも僕には全くアテがないんだけど。」
詩「私たちと同じクラスの舜くん、っているでしょ?たしか健人くんも仲良かったよね?私、彼と同じ塾に通っているんだけど、デザインが好きであとパソコンとかITにも詳しいはずだよ。最近何かのプロトタイプ?っていうのを作ったって言ってたわ。」
健人「えーっそれはすごい!それってプログラミングができるってことだよね!?」
3人はスマホを触っている舜の机に向かった。
詩「舜くん、おはよ〜!ちょっと聞いて欲しい話があるんだけどね、」
そう言って詩が話始めると 爽太と健人も代わる代わるこれまでの経緯を説明した。不思議なのだが、蓮人兄さんの会社でたくさん考えて話したおかげで、説明するたびにコツが掴めてきて要点がシンプルに説明できるようになってくる。特に爽太の説明は分かりやすい。健人は今まで気づかなかった爽太の意外な一面に頼もしい気持ちになった。
舜「え!なにそれ!!めっちゃ面白そうじゃん!健人のお兄さんが学生起業家だってのは前に健人にちょっとだけ聞いててイメージあったんだけど、君らまでそんなことしてたなんて。しかも会社にお邪魔していろいろ教えてもらってるって、なんて面白いことやってんのさ!」
健人「なんか、流れでね。会社の皆さんもすごく面白がってくれて。改めて蓮人兄さんがどんなことしてるのか少しだけ分かって面白かった。家ではロック音楽かけて叫んで踊ってたりするだけだからさ(笑)。」
舜「僕も兄妹がいるんだ。すぐ上の兄さんが大学でプログラミングを学んでいて、一番上の姉さんが仕事でWebデザインをしてることもあって、どちらにも興味があってね。週末なんかに2人に教えてもらってちょっと、いろいろwebをいじってみてるんだ。俺でよければ、ぜひ手伝うよ。」
爽太「舜、君もなかなかの特別な環境だよね(笑)。」
詩「舜くんありがとう。よろしくね。よーーし、じゃあ仲間は揃ったね。で、キャプテン!これからどうするの?」
詩は、爽太の背中をバシっと叩いて、顔を覗いた。どうすんのさ、と言わんばかりの顔で、次の計画を確認する。なんとなく部活の敏腕マネージャーのようでもあり、このチームのペースは早くも詩が作っていくのが見え隠れする。爽太は、コホン、と咳払いをして改めて三人の顔を見ながら言った。
爽太「そうそう。実は明日は朝から僕の家で試作品づくりをするんだ。健人の兄さんや父さんはその場にはいないんだけど、健人の父さんはわざわざ時間をとってくれていて時々オンライン通話をして相談させてもらうお願いをしてあるんだ。味の調整には、料理好きの僕の父さんもいるから、明日には販売できるようなクオリティの内容を確定していきたいなって思ってるんだよ。」
舜「じゃー、行ったことないけど爽太ん家で集合だな。」
4人は次の日に爽太の家で待ち合わせることを決めた。
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