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【7】step31 本当にお客さんになってくれる人へ「製品」を準備しよう
この話は、ささいなキッカケから、「新しいこと」をはじめることになった高校生の2人組が、経営者や起業家、ユーザーの声をききながら、サービスをつくりあげていく物語です。
■ 主な登場人物
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■ 前回までの配信
第7章 実行できるか「試す」
「ありがとう」と言ってもらえるものを提供できるか試してみよう!
step31 本当にお客さんになってくれる人へ「製品」を準備しよう
翌日も朝から試飲会は大盛況だった。
入り口には舜が書き直したお気に入りのロゴマークののぼりが立てられていた。
爽太「ふぅ。まだ昼前だけど 今日用意できる分の半分も出て行ったね。」
健人「いやー。僕らもかなり手際がよくなったよな。6回もやると動きも変わるよね。」
爽太「本当だよなー!アプリの動きも問題ないし、今日はこれまでで一番お客さんの事が見える気がするよ。」
我々のチームは、慎重なほどにテストを繰り返していた。鮮度が命のこのジュースが、本当にお客さまになってくれる人たちにとっと「かけがえのないもの」になっているのかを十分に確認したかったからだ。初回、ドキドキしながらジュースを手渡しで届けていた時は、まだアプリも動いていなかった。そこから数えて、もう6回ほど試飲会をしている。約20人ほどに声を聞き、その声を反映して改善、次の20人くらいのお客さまにジュースを飲んでもらいアプリの使用感、おいしさ、こだわり、などを聞いて少しだけ修正する。そうやってジュースを飲んでもらっている人たちは、大ファンになってくれているリピーターの人たちを合わせて100人を超えた。
ジュースを提供する身なりとしての清潔感やおそろいのエプロンなど、本当に些細なことなんだけど、一つ一つがプロになる仲間入りをしているようで、本当にワクワクする。なにより不安だったものが1つずつ解消されていくとこれを商売として販売できる自信が湧いてくるから不思議だ。
健人「ちょっと人が空いたから、庭の方へ出てみたら?」
キッチンを健人に任せて爽太はジュースを購入してくれた人たちが賑わう庭に出た。
みんな美味しそうにジュースを飲んでくれている。あの日、父からもらった一台のジューサーがこんなことを巻き起こすとは想像もしてなかったな‥爽太は何か見知らぬ土地を旅しながら気づいたら遠くまできたような、清涼感と達成感のようなものを感じるようにみんなを眺めていた。
詩「お疲れ様!ね、気づいた?今日みんな、いつも以上にジュースの写真を撮ってくれてるの。」
詩に話しかけられ、見回してみると確かにみんなジュースの写真を撮っていた。構図を気にしながらお洒落に撮っている。
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爽太「本当だ。舜がみんなの声を聞きながら何度も修正してくれたロゴやグッツのデザインのおかげだね。」
詩「そうなの。デザインの力ってすごいわね。つくる側になって初めて今までと違う形ですごいなぁって思ったわ。こんなに結果に違いが出るんだから。あ、それでね。」
詩に連れられ 家の出口の方に向かうとゴミ箱と、ゴミ箱の上にボードが置いてあった。
ボードには「本日はテスト販売にご協力いただき 誠にありがとうございました。」とお礼が書かれた後にジュースの商品紹介、こだわりなどが書いてあり 「ずばりお値段いくらで購入したい!と思いますか?」と質問が書いてあった。
爽太「なるほど、このシールを貼ってみんなの想定購入金額の調査ができるってことね」
詩「そう、実は前々回から置いてみて、これまでは貼ってもらうまでだったんだけど 今日はアプリのエラーが少なくて舜がいられたから、みんなに直接聞き込みもしてもらってるわ」
ざっと見ると 600円と800円の枠に一番多くシールがあるようだった。
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そんなことを話していると、昨日詩と舜が作戦会議をしていたカフェのマスターが顔を出しにやってきてくれた。
詩「あ、マスター!」
マスター「昨日は来てくれてありがとう。それにしても、ジュース美味しいなぁ。これは本当に鮮度がいいね。数を出せないとしてもこだわりがあって、1日のご褒美に飲みたくなるよ。」
詩「本当ですか!ありがとうございます!」
そう言って詩はマスターと爽太をお互いに紹介した。
マスター「爽太くんの話から始まってるジュースなんだね。ここまで形をつくるのは本当にすごいなぁ。感心するよ」
爽太「いえ、今回自分たちでやってみてお店を持って長く経営していくってどれだけすごいことなのかっていうことがよくわかりました。当たり前のように並んでいる商店や飲食店もいろいろなことを工夫してビジネスをしているということを少しだけ理解できるようになりました。」
マスター「いやいや。改めて言われるとちょっと照れくさいねぇ。でも小さなお店の努力や工夫を理解してもらえたってことは素直に嬉しいよ。僕も喫茶店をはじめた当時の気持ちとか、初心っていうのかな、大切な事を思い出させてもらった気がする。ありがとう。ところで、いまここでジュースの値段についてどの程度良いのかをみんなに問うてるんだね?」
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爽太「そうです。当初はテスト価格として550円で売っていたのですが‥日頃みんなが買ってるジュースと比べると、もう少し安い400円とか450円が良いのでは?という声もあるんですけど それだと利益がほとんどでないんですよね。」
マスター「そりゃそうだろう。こんだけ材料に良いもの使って丁寧に作っているんだもの。このボードを見ると800円あたりが多そうだけど、僕は自分が飲食店をやっている経験を踏まえると全体的なサービスの価値を考えて1000円でも全然出すけどなぁ。」
マスターはそう言って 1,000円とボードに書き込みシールを貼ってくれた。
詩「わぁ、1000円!ありがとうございます。」
マスター「うん。またその後の話、聞かせてね。それじゃ、そろそろ私はお店に戻るよ。」
そう言って帰るマスターを見送り、詩はすれ違うように入ってきたお客さんを迎えて、爽太はキッチンへ戻った。
**
「「「「カンパーイ!」」」」
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まだジリジリと日が照る午後3時、爽太たちはキッチンで乾杯をしていた。
今日の分のジュースが完売して、予定していた全てのテスト販売が終了したのだった。
片付けまでが販売、とみんな手際よく片付け、大方終わったところでマスターが差し入れしてくれた手作りジンジャーエールをカップにいれて乾杯をしたのだった。
健人「いや〜お疲れ様、みんな。それにしてもすごい数の人が来てくれたよな。」
舜「本当だね。これまでテスト販売品を購入してくれた人にメールアドレスとLINEを登録してもらってたのだけど、その数合計70人!それに、サービスが本格スタートしたら友達に紹介してくれるって言ってくれてた人も沢山いたよ。」
爽太「すごいよなぁ。もちろんみんながみんないい反応ばかりじゃなかったけど、それでもすごい手応えを感じるよ。あと、1回目と今日じゃ、ジュースをつくるスピードからアプリの調子、デザインまで本当に変わったよな。」
詩「それはそうね。1回目の人には、もう1回飲みに来て欲しいって思っちゃう。あ、そうそう、爽太には途中で見せてたこのボードなんだけど‥」
爽太「価格だね。テスト販売を終えたからそろそろこの辺りで金額を決めてこうと思うんだけど・・」
購入したお客さんが貼ってくれた想定金額のボードを見ながら、詩や舜が実際にお客さんから聞いた声なども書き込んでいった。
爽太「マスターみたいな1000円でもいいって声もあるよね。そんな価格になったらもちろん利益は高いんだけどね。でも、やっぱり僕たちは高校生がチャレンジをしているっていう立場だからある程度、利益は高くなりすぎない形で抑えるようにして 750円にするのはどうかな。」
健人「爽太は、そういうと思ったんだよね!ちょうどいい金額だよ。うん、いいと思う。」
詩と舜も首を縦に振った。ジュースの価格は750円に決まった。
ーこのステップのポイントー
・販売するかどうか分からない試作品ではなく、お客様に本当に販売するつもりでサービスを提供する際には細かな改善や修正が必要です。
・ユーザーの声を何度も聞き、反映するものとしないものを分ける必要があります。自分たちの強みやこだわりを残しつつ、ユーザーにとって本当に価値のあるもの突き詰めていきます。
・本格的にサービスを開始する時に最も力強く、心強いのは試作に関わってくれた人たちです。この人たちにはユーザー候補となるための情報をもらっておきましょう。ファンとなり周りの人に強力に薦めてくれる初期の顧客となってくれる可能性が高いです。
・値段については調査をしながら、低すぎず、高すぎない価格設定を見定めます。利益が出る設定にしないと長く続きません。
ー考えてみようー
・自分たちが試してみたものを、何度も繰り返して検証し少しずつ改善を重ねて品質をあげていった経験はありますか?それはどんな体験だったでしょうか?
・目の前で集中して実施したことについて一度立ち止まり俯瞰して見てみたことはありますか?
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