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【7】step27 試作を通して検討を深め、商品やサービスを改善していこう

この話は、ささいなキッカケから、「新しいこと」をはじめることになった高校生の2人組が、経営者や起業家、ユーザーの声をききながら、サービスをつくりあげていく物語です。

■ 主な登場人物

■ 前回までの配信

第7章 実行できるか「試す」
「ありがとう」と言ってもらえるものを提供できるか試してみよう!

step27 試作を通して検討を深め、商品やサービスを改善していこう

試作品を検討したその週末、15時半から爽太・詩・舜は、健人の家のキッチンに集まっていた。パーティ開始は17時だと聞いている。しかも源人の計らいで開始前のウェルカムドリンクとして出してもらうことになっていた。

爽太は自分の家から持ってきていたクーラーボックスを開ける。4人が一斉に顔を近づけてクーラーボックスの中を覗き込むと、中には、昨日の試作品レシピでつくった「美容」「体力」「知力」の出来立てジュースが入っている。今日は、准一に頼らず、イチから爽太がつくってみたのだ。たくさんの人数にも対応できる効率的な作り方も教えてもらった。試飲してもらうドリンクはばっちりだ。少し多めに作った方がいいという准一のアドバイス通り、10人飲んでもまだ余るくらいの量は持っている。これを振る舞う直前にもう一度、ジューサーで混ぜて出す予定だ。

健人は、自分たちが感じたことをメモが取れるように備品を配り終えて、食器棚からイメージに合う試飲のカップを載せるお盆を選んでいる。

詩「はい、これ。試飲用のコップ、お客様に書いてもらうための感想カード、そしてエプロンね。直前にしてはなかなかかわいいでしょ!?」

詩は、仕入れた備品と、即席にしては上出来なこのチームにぴったりのエプロンをバックから取り出していた。すると今度は舜が、じゃじゃん、と言いながら修正したロゴシールを取り出した。画面でみて修正したロゴが、シールになって出来上がっている。さっそく爽太はエプロンに自分たちの即席ロゴを貼り付けてみていた。エプロンとロゴシールのおかげか、まるで自分たちが本当に会社をやっている気分になり4人は緊張よりも楽しさの方が増してきているワクワクが溢れている。

それはきっと作った試作品が純粋に「美味しい」という自信があるからというのもあるのかもしれない。すると突然、源人がキッチンに入ってきた。

源人「準備はどうかな?お、できたみたいだね。今日は、約束した通り、私の仕事仲間が家にパーティということで集まることになっているよ。感想をもらえることになっている。まぁ、みんな純粋に楽しみに来ているからリラックスして気楽にやってみてくれ。それにしても、お揃いのエプロンで、もう立派なチームだな。ウチの会社にチームごと引き抜くとしようかね?はい、これ今日来る方たちの参加者メモね。」

源人はいたずらにウィンクして、お迎えのための別の準備に向かっていった。リストを確認すると、源人と同じくらいの50代のご夫婦、いろいろ高そうなレストランで美味しいものをたくさん食べていそうだ。40代の男性1人、30代の男女数名で全部で6人がゲストで来るらしい。

ここに、パーティを準備してくださる源人の会社のスタッフさん数人と、いつも助けてくれる葵さん、なんと准一も試飲だけこっそり招待されていてリストに入っていた。うん、、、多めに準備してきた良かった。

今度は、蓮人と葵がキッチンに入ってきた。舜と詩がペコリと頭を下げて雑談を始める。なーんてことをしているとあっという間に17時スタートの15分前だ。急いで、ジューサーで攪拌して3種類のジュースを試飲用のカップに取り分けていく。うん。やっぱり美味しそうで新鮮な感じ。

5分前にはゲスト全員が会場に揃い、4人はトレーに試飲のカップを乗せて部屋を回り、はじめはゲストのみなさんにジュースを配って回った。その後、スタッフの皆さんや源人、蓮人、准一、葵にも配る。

健人はいつものように会場を観察していた。源人の友人のご夫婦は喜んで受け取ってくれたものの、男性はベリーが苦手なようで申し訳なさそうに横にいた女性にあげて、代わりに「体力」のジュースを飲んでくれていた。女性は特にだが、みんな驚くほど美味しそうに飲んでくれている。

特に30代の 女性2人の反応は上々だった。飲み終わって感想を書きながら「こういうものを外で購入して、会社やどこかに持ち混んだり、持ち歩いて飲むという習慣はないかもしれないわね〜」と教えてくれた。例の食通の男性はちょうどジムに通っていているらしく「普段飲んでいるプロテインと似たような味だが、より美味しく飲めたよ」と教えてくれた。

全般的に「美容」のジュースをとても気に入ってくれたようだ。一人の女性がわざわざ4人に向かってきて、意見を言ってくれた。

女性「これ、とっても美味しいわ。3種類全部飲んでしまったわ。美容のジュース、こちらは蜂蜜が入っているのかしら?少しだけ他の具材より蜂蜜の主張が強く感じるのよね。蜂蜜は…好きな人は好きなんだけどここまで強いと少し主張が強すぎる気もするの。かと言って、これ以上甘さを控えるとバランスが悪くなる気もするし。…そうね、何か別のシロップみたいなもので代替するともっとベリーの味が引き立つような感じがするわ。」

詩「わぁ、ありがとうございます。私たちが苦労してバランスを整えたことがまるで、見えているようなご意見です!すごい。たしかにそうですね。私、蜂蜜は好きな方だから、苦手な人やそこまで好きではない方のご意見は新鮮で納得です。シロップだと・・アガペシロップとかがいいのでしょうかね・・」

女性「うん!おしゃれね。確かに、普段使うことはないけどとっても良さそう。ぜひトライしてみて!」

4人はパーティ開始前の試飲を無事に提供して回った。拍手と共に4人は源人に紹介され、代表で爽太がジュースの説明をした。何度も説明しているうちに彼は本当にこのジュースの説明が上手くなっている。堂々と初めての人にスピーチした。詩の用意した感想カードはスタッフも含め結局たくさんコメントが書かれていて。多めにつくった舜のシールはなくなっていた。

キッチンに戻ると、葵さんと准一がやってきた。

葵「それにしても、本当に、あの構想が実現してちゃんとジュースになってるなんて・・完成度も高いわね。さっきの方の話、聞こえたわ。うん、言われてみれば、って感じね。詩ちゃんの提案が一番いい気がするわ。それにしても、みんなもう立派なチームだね。」

准一はなにも言わずニコニコと頷いている。いつも身近にいてサポートしてくれている葵さんに言われて嬉しそうな4人と少しだけ談笑して葵は会場となっている部屋に戻っていった。

爽太「今日、帰ってみたら早速アガペシロップでつくってみるよ。詩が帰り道一緒だから家に寄ってもらって試食してもらってみる。父さんもいるし。」

ガチャッと音がして源人と蓮人がキッチンに入ってきた。

源人「みんな、どうだったかい?反応、上々だったじゃないか。あの人たちは私に忖度するようなタイプの人たちじゃない。素直に美味しいと言う反応を喜んでいいと思うよ。」

爽太「はじめは あまり気に入ってもらえてない人もいる気がして焦ったのですが、結局、自分たちのターゲットとなる方には客観的にみても結構気に入ってもらった気がします。」

蓮人「すごく大切な点だね。これまで考えたターゲットとするユーザーに実際に響いているのかを確認するのが大事なポイントになるよ。価値が届けられていてよかった。ターゲットでない人の反応も見れるのも良い点の1つだよね。商品の方向性やターゲットユーザーが明確になる。再確認できたね。」

源人はパーティのホストとしてキッチンから出て行った。蓮人はすぐにいくと伝えキッチンに残る。何か言いたい時の顔だ。爽太は慣れてきて蓮人の表情が読み取れるようになっていた。

蓮人「あのさ1つだけ。今日見てて思ったことで結構、大事なこと。確認なのだけど、どうだろう。これ1つに絞れないかな?今回の試飲テストを踏まえて 3種類のドリンクって本当に必要かな。準備、労力、わかりやすさ、という観点で。みんなはどう思う?」

あっ、と爽太は声を出した。

爽太「実は僕も、モヤモヤしてたんです。美容はわかりやすくて今日、反応もよかったです。ただ、体力と知力のジュースは 3種類と決めたから出ている発想でそれぞれへの思いも美容よりは低かったり、結局今日の反応もどうだろうって感じていて。」

詩「種類が増えればそれだけ用意する食材のお金もかかってくる。何より準備が大変よね。」

健人「会場で観察していると迷っている人たちが結構いたんだよね。3種類全部飲んでくれた人もいたんだけど。ここは思い切って1種類にしてみるのもありなのかな?」

准一「みんな、残りのジュースの量をもう一度見てごらんよ。それがヒントになるのかも。」

「美容」「体力」「知力」のうち圧倒的にカラに近いのが美容だった。多めに用意してきたこともあり、残りのジュースは少し余っている状態だ。4人が顔を見合わせる。

爽太「うん。1種類にすることで、届けたい相手も明確になると思う。じゃあ、みんな、いいかな?僕たちの商品、美容一択で勝負しよう!」

全員をぐるっと見回すと、みんな強い決意で同意しているようだった。

蓮人「じゃあ一旦、ちょうど2週間前にこの場所で行ったことを振り返ってみよう。2人は覚えているかい?インサイトとジョブ。」

この家でインサイトとジョブについて父から教わった時の模造紙を健人が自分の部屋から持ってきた。復習に、と爽太と健人で、詩と舜にあらためてインサイトとジョブとは何で、自分たちはどう定義したかを説明した。わかっているようで、いざ説明するのはとっても難しかったが蓮人に助けてもらいながら説明を終えた。

蓮人「このインサイトとジョブ、つまり頭で考えた内容とテストで得た体で感じる今日の感触を、今のこの新鮮な状態のうちに照らし合わせてみるんだ。今日の美容のジュースは このユーザーのインサイトやジョブを捉えている気がするかい?」

◾️ インサイト:
健康に対する感度の高いユーザーは、「フルーツ」や「フレッシュ」などキーワードに反応するがそれらの商品が本当に健康的なのかが不安で、市販(駅前)のジュースなどは躊躇して飲めないでいる。(結局、家で煮出した麦茶を飲んでいる。)

舜「そうですね。葵さんも若い夫婦の奥様も気に入ってくれていたし、参加者の甘味のアドバイスからも、素材の納得感と安心感があったのではと思います。」

→ このジュースなら安心して体に取り込み躊躇せず安心して商品を買える。

◾️ ジョブ:
「世の中に溢れている、一見『健康』に見えるたくさんの飲み物は本当に健康なんだろうか?」という漠然とした不安を解消して、安心して飲めるドリンクを手に入れたい。自分で作るしかないけど、できればこのこだわりを維持したまま、それを市場から買うことで面倒を解消しながら生活したい。

爽太「ジョブは、これもそうですね。葵さんからは『これ、本当に販売するの?』と言われましたし、ご意見もらった女性、パパさんの会社の女性スタッフさんにも合計で何人か『どこで買えるの?外で飲みたいな』って言ってもらいました。自分のこだわりや考えを維持したまま、ユーザーは達成したい欲求を満たせそうですよね。」

→ 不安を解消し、安心して市場からジュースを買える。自分で作らなくてよいためこだわりを維持したまま生活が便利で楽になる。


ーこのステップのポイントー
・新しくチームに加入したメンバーとも一緒に活動することでチームの活動や絆が高まります。
・試作品作りでは、中心になるものを固めながらも選択したい内容を実験のように少しずつ分量や種類を分けながら何度も微妙な違いを評価して最適なものを確認していきます。
・テストをするときは、文脈や今までの流れを理解している人にテストするのも意味がありますが、全く理解していないユーザーにテストするのも大きな意味があります。

ー考えてみようー
・過去に、なんども試行錯誤しながら少しずつ工夫してよりよいものを作った経験はありますか?それはどんなものでしたか?
・後から入ってきたチームメンバーと同じ活動を通して絆が深まったことはありますか?それはどう言う活動を通してでしたか?
・全く今までの流れが分からないユーザーにテストをすることでとても大切な声を聞くことができたいことがありますか?


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