【5】step17 提供すべき価値のつくりこみ
この話は、ささいなキッカケから、「新しいこと」をはじめることになった高校生の2人組が、経営者や起業家、ユーザーの声をききながら、サービスをつくりあげていく物語です。
■ 主な登場人物
■ 前回までの配信
第5章 「価値」をつくる
「かけがえのない」をつくってみよう
Step17:提供すべき価値のつくりこみ
ホワイトボードには、ジョブ、インサイト、そして二人が解くべき「問い」が記されている。
健人「よし!そうと決まれば、『届けたい人たちに納得してもらえるジュース』になるように、早速ミキサーで試作品を作って、ちゃんとした商品をつくりはじめる準備を・・・。」
蓮人「お〜っ、いい調子だね!でも、ちょっとだけ先を急ぐのを待ってみようか。ここでは、実際に商品をつくってみる前に『価値』ってやつをしっかり考えてみる必要があるんだよ。提供すべき価値とは何か?について考える、これを英語でいうとバリュープロポジションっていうんだよ。それを検討してみよう。」
健人「また、英語!(笑)なんか、学校の授業みたいだし、学ぶことがたくさんあるんだな。しかも横文字ばっかりで長いし…」
爽太「バリューって確か「価値」ってことですよね。要するに、僕たちが提供するジュースがユーザーに提供すべき価値とは何かってことを考えるってことですか?」
蓮人「そう。価値を考えていくことで お客さんの状況やニーズと自分たちの商品とサービスを今一度しっかり見直していくんだ。要するに君たちのジュースがしっかりとブレずにお客様に提供できるのかということを考えるということだね。そんな価値をしっかりと考えていくことができるといいんだけどね。」
そういうと、蓮人は ホワイトボードに 不思議な図を書き出した。
健人「へーっ。これが、蓮人兄ちゃんの言う、『バリュープロポジションキャンバス』っていうやつなの?」
蓮人「そうだよ。このキャンパスを完成させてサービスに必要なポイントをまとめてみることができるんだ。ちょっとやってみよう。」
図を書き終えた蓮人はくるりと振り返り、 ホワイトボードを背にする形で 2人に向きながら再び話し始めた。
蓮人「このキャンパスの右側の部分、その一番根底になる部分にはさ、 ”ジョブ” を書くんだ。二人は、前に親父と考えてたよね、ジョブ。このジョブは、『お客さんが解決したい厄介ごと(課題)』だったから、さっき挙げた『解くべき課題』を見てみればいい。
蓮人「ここから、お客さんは こんなことがあったら嬉しいんじゃないか?というのと、こんなことで困るんじゃないか?というそれぞれの部分を書いていくんだ。これをそれぞれ、ゲインって枠とペインって枠に書いていくんだよ。」
健人「うへぇ、また横文字だ。ペインとゲインは・・・。えーっと。」
蓮人「ゲインは、得られるもの。ここでは恩恵って感じかな。ペインは痛み、とか苦痛とかかなぁ。声にならない苦しさとかそういうものも含まれる。」
爽太「へー・・・こんなことがあったら嬉しいんじゃないか?ってことか。僕らのお客さんが、だよね・・・。」
爽太は考え込みながらお茶を一口飲んだ。健人が、あっ、と思いついたように手を叩きながら言った。
健人「たとえば、『ジュースを飲んだ時の効能が知りたい』みたいなものもそうかな?」
蓮人「お、いいね。それは恩恵といえる内容だねぇ。そうそう、そんな感じで挙げていくんだよね。」
蓮人は健人の発言をボードに書き足した。
爽太「なるほどね。インタビューしてたときを思い出すと・・・「今」の自分に必要な栄養を取りたい、みたいなものもあるんじゃないかな。あとは詩はこだわりの人だから どう「ミックス」されているかが明確っていうのも重要だと思う。」
蓮人「いいね〜 じゃ、今度は『痛み』だね。ペインの方も考えてみよう。ユーザーはこんなところ、こんなことで困っているんじゃないのか?っということで何か思いつくかい?例えば『産地がわからないと健康的とは言えない』みたいなのもありそうだと思うんだけど。」
爽太「ここでいうペインって要するに、否定的な気持ちってことですかね!?」
蓮人「うーん、いやちょっと違うかなぁ。ペインは何も否定的ってことではないんだよね。別の言い方をすると、普段、ちょっと嫌だなと思っているけど実際には言葉に出していなかったり、行動に移すほどではないけど少しだけ我慢していることだったり、そんなことから生じる気持ちのことかなぁ。なんだか形にならないんだけどモヤモヤと思っていることなどを総称して『ペイン』って言うんだよね。爽太くん、これで分かるかなぁ?」
爽太「えーっと、例えば、”美味しくなさそうなお店ではミックスジュースを買いたくない”とか?あ、あと、”フレッシュって具体的にどういうこと?ってのをちゃんと明らかにして理解したい”とかもありそうだな〜。どうですかね?」
蓮人「いいんじゃないかな。」
健人「この前話を聞いてきた詩のヨガ友達の、あの雰囲気を考えるとさ、『健康によくない白砂糖が大量に入っているのでは?って思う商品はイヤ』っていう想いもありそう。『ざっくりとした成分表じゃなくて何が入っているか細かく知りたい』っていうのもあるんじゃないかな。あれ、これはペインじゃないか!?」
爽太「どちらかというと今のはゲインかなぁ。」
蓮人「うん。すごくいい感じだね。そうしたら今度は、バリューマップの方だね。ユーザーではなく我々の製品を考える番だ。今出てきた、ユーザーのゲインとペインに対して、我々が対応する必要があるわけだね。それぞれ・・・ゲインというのは恩恵だから、それを増幅させる、という意味のゲインクリエイターと言うし、ペインというのは痛みだから、それをどう取り除くのか?というのがペインリリーバーだね。それぞれの中身を考えてみよう。」
蓮人は ボードの左側、四角い箱を指して言った。
爽太「じゃあさっき僕が言った”フレッシュが具体的にわからない”というペインには、『つくった時間をしっかり製品のラベルに表示する』っていうのはどう?」
蓮人「いいね〜。まさにそういう感じ。スーパーに出てるお惣菜にも『この商品は4時に揚げました』とか書いてあるもんね。そういうのはユーザーのペイン(痛み)を解消する可能性があるね。」
健人「そっか!本当だ。もっと厳格にするなら『つくって3時間以内のものしか売りません』みたいにするのもどう?」
爽太「いいね、いいね。出てきたアイデアに付け加えて見ることを含めてかなりいい感じだね。このアイデアは販売側の姿勢の強さがわかるよね!」
蓮人が二人が出したアイデアをペインリリーバーと書いた枠に書き足していった。
健人「あとはゲインを増やすわけだよね・・・どう「ミックス」されているか?って どうしたらいいんだろう・・・。」
爽太「あ、これなんだけどさ。父さんがこのジューサーを渡してくれた時に言ってたんだけどね。このメーカーさんのミキサーって、パワーにこだわりがあって、高速回転で野菜や果物を混ぜるけど、酵素が死なないで、繊維も取り入れられるんだって。高速だから酵素?が壊れるとか言われてたりする面もあるみたいなんだけど 結局短い時間で仕上げられるってのがウリなんだって。母さんにこのネタを自慢げに話してたんだけど、そんなの私の料理には一切必要ないって一蹴されちゃっていたんだけどね(笑)」
健人「あらら・・・爽太の父さん(笑)」
蓮人「でもそれは、まさにゲインクリエイターになりそうだね。」
この調子で 爽太と健人は、蓮人のアシストを受けながら5つのペインとペインリリーバー・3つのゲインとゲインクリエイターを挙げていった。
爽太「ふぅ〜〜もう本当に疲れたよ・・でもこうやってみてみると、左側に出てきたアイデアは 商品のジュースを片手に添える形でスマホを使って説明が読めるといいんだろうなぁ。」
蓮人「そうだね。誰にでもわかりやすいように、動画なんかで表現できるといいんだと思うよ。・・ということで。」
蓮人は マップの1番左側の枠「ソリューション」を指した。
蓮人「これまでの流れを踏まえて、どんなソリューションになるか、を2人で考えてみよう。」
爽太「ソリューションって?アイデアとは違うの??」
蓮人「ここでしっかりとまとめておきたいのは、君たちは このジョブを解決するために色々細かく考えていったでしょう?あらためて、ユーザーのジョブに答える形にすると、どんな解決ができるかって感じで考えていくんだよ。たとえば『つくって3時間以内のものしかおかない』という内容を踏まえて・・『3時間以内の商品をその地域エリアのお客様に』みたいな感じかな。」
蓮人はマップの右側に書かれたジョブを指しながら言った。
健人「なるほどな・・その時間に合わせて鮮度高く作っておいてもらえる予約機能付とか?」
蓮人「うんうん、いい感じ。」
爽太「うわぁ〜〜休憩したいけど、このソリューションまでは検討しないとだよね!」
3人がコップに注ぎ足していた麦茶のボトルがすっかり空になっていた。最後の追い込みだ!というように2人はソリューションを考えはじめた。
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