【麻雀諺】迷えば進まず、手詰まりの牌
静まり返る雀荘の中、卓上に並んだ牌たちは、まるで俺を試すように静かに佇んでいた。あと一歩でテンパイ。進めば大きな手を掴むチャンスがある。しかし、その一歩がどうにも踏み出せない。手元の牌が重く感じ、動かす手が止まる。
「迷えば進まず、手詰まりの牌」
この言葉が頭に浮かぶ。麻雀において、迷いは最も危険な敵だ。自分が手詰まりになるだけではない。迷いが生じた瞬間、相手の動き、場の流れ、すべてが霧の中に消える。自分の手牌がどんなに良くても、迷いがそれを封じ、戦局全体が手の中から滑り落ちていくのだ。
俺は索子(ソーズ)の3を切るべきか、それとも萬子(マンズ)の6を捨てるべきか悩んでいた。しかし、その迷いが深まるにつれ、対面の男の視線が気になり始める。彼は俺の迷いを見抜いているのか?リーチをかけてくる瞬間が近づいている気がしてならない。
「迷えば進まず、手詰まりの牌」
迷いが生じた瞬間、俺の視界は狭まり、相手が何を企んでいるのかさえ分からなくなる。対面の男はすでに俺の迷いを見抜き、静かに勝機を待っている。そうだ、迷いとはただの一瞬のためらいではない。迷いが続けば続くほど、自分の手詰まりが相手の手によって確実な敗北へと変わっていくのだ。
冷静さを取り戻そうと深呼吸をする。俺は静かに、もう一度場全体を見渡す。迷いを断ち切ることこそが、この状況を打開する唯一の道だ。自分の迷いが進むべき道を閉ざすならば、その迷いを断ち切り、今すぐ行動するしかない。
「リーチ!」
対面の男が声を上げる。俺の胸に鋭く響くその一言。彼の攻めに焦ってはいけない。ここで間違えば、相手に完全に主導権を握られる。迷いは相手に勝利のチャンスを与える。ここで、俺が一歩踏み出さなければ、勝負は決まってしまうのだ。
俺は索子(ソーズ)を選び、静かに卓に置いた。決断した瞬間、霧が晴れる感覚が広がる。迷いが消え、再び場全体が見え始めた。迷えば進まず、手詰まりの牌――その言葉の意味を実感した。迷いを取り除けば、道は自然と開けるのだ。
「ロン!」
隣の男が勝ち名乗りを上げる。だが、俺は自分の選択が間違っていなかったことを確信していた。迷えば手詰まり。だが、迷いを捨てれば、次の一手が見えてくる。勝負は迷いを捨てた者に微笑むのだ。
雀荘の外では冷たい風が強く吹き始めている。新しい局が始まり、俺はまた冷静に次の一手を考え始めた。迷えば進まず、手詰まりの牌。自分を信じ、進むべき道を見つけるために、俺は次の一手を握りしめた。
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