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【諺】為すべきを為せ、牌は変わらず

1. 諺(ことわざ)

「為すべきを為せ、牌は変わらず」

2. ことわざの意味

やるべきことを全うし、心を整えた上で初めて物事に取り組むべしという教え。麻雀は焦らずとも、変わらず待っていてくれるが、先に己の責務を果たすことが何よりも肝要である。

3. 例文

Aさん:「麻雀したいけど、片付けてないことがあってさ…」
Bさん:「為すべきを為せ、牌は変わらずって言うだろ?先に片付けてから打った方が気持ちいいぜ。」

麻雀ことわざ新帖

麻雀卓が静かにそこにある。四つの角を囲むように置かれた椅子、無言で揃う牌たち、そしてあの特有の場の匂い。それはいつでも変わらず、俺を待っている。しかし、卓に座るには準備がある。それは決して牌をシャッフルすることや点棒を数えることではない。もっと根本的な「準備」、それは心の準備だ。

「為すべきを為せ、牌は変わらず。」
この言葉が今、重く響く。先ほど友人たちから麻雀の誘いが来た。いつもなら喜んで応じるところだが、今日は違う。目の前には締め切りを前にした仕事の山が、デスクの上に積み重なっている。「牌はいつでも打てる」と心の片隅で思いつつ、同時に「この仕事を片付けない限り、真に麻雀を楽しむことはできない」と感じている自分がいる。

俺は決断する。まずは仕事だ。いや、正確に言うと、やるべきことだ。麻雀を心から楽しむためには、すべてを終わらせ、頭の中をクリアにしておかなければならない。これが「為すべきを為す」ということだ。思い返せば、人生の多くの局面でこの言葉に助けられてきた気がする。学生時代、テスト勉強をしっかり終わらせてから友達と遊んだあの感覚。社会人になってからも、プロジェクトを終わらせた後に飲みに行った時の解放感。どれも「為すべきこと」を果たしたからこその充実感だ。

だが、一度心に浮かんだ雑念はしぶとい。麻雀のことを考え出すと、どうしても脳裏に広がるあの音が聞こえてくる。牌が卓上を滑る乾いた音、リーチ棒が立てられる瞬間の高揚感。そして、和了(ホーラ)の時に一気に押し寄せる快感。ああ、どうしても打ちたい。手がうずく。だが、それでも俺は我慢する。

「牌は変わらず」。この言葉が俺を支える。牌たちはどれだけ時間が経とうと、何も変わらず俺を待ってくれているのだ。彼らは静かに、泰然自若としてそこにいる。それならば、俺も同じく泰然と構えなければならない。いまこの瞬間を焦っても仕方がない。やるべきことを終わらせた後、卓に座った時、初めて俺は真に麻雀を楽しむことができるのだ。

数時間後、ようやくデスク上の仕事を終えた俺は、大きく息をつく。ふと窓の外を見ると、夕焼けが町をオレンジ色に染めている。仕事を終えた安堵感とともに、心が軽くなっているのを感じる。この瞬間、俺は牌を手に取る準備ができた。すべてを片付けた後のこの感覚こそ、麻雀を心から楽しむための鍵なのだ。

仲間たちに「今から行く」とメッセージを送り、家を出る。卓に向かう足取りは軽い。風が肌に心地よく、まるで牌が俺を歓迎しているかのようだ。ああ、やはり牌は変わらず、俺を待っていてくれたのだ。これから始まる一局一局が、俺にとってどれだけ特別な時間になるのか、今はっきりと分かる。全てを終わらせた者だけが得られる、この至福のひととき。

「為すべきを為せ、牌は変わらず」。
その言葉を胸に、俺は静かに麻雀卓に向かう。

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