【諺】ハズレくじの大当たり
麻雀は面白いゲームだ。普段なら、牌を見ながら静かに計算を重ね、手筋を読んで淡々と進めていく。だが、今日は何かが違った。いつも通り手を組み、リーチをかけたはずだった。だが、気づけば――振り込んでいた。しかも国士無双に。
「ハズレくじの大当たりか…。」
口に出してみると、なんだか納得してしまう。思えば、こんなことは滅多にない。あの手に振り込むなんて、まさに宝くじでハズレを引き当てるようなものだ。こんなことが起こるのは、年に一度、いや、それより少ないかもしれない。
対面の彼は笑っていた。そりゃあ、当然だ。国士無双が完成した時のあの感触、俺も覚えている。けれど、今日は俺がその「くじ」の外れを引いた側だった。そう、これは避けようのない「ハズレくじの大当たり」。自分の打ち筋が悪かったわけでもない。運命のイタズラだ。
ああ、そういう日もある。気にしても仕方ない。次の局では流れが変わるかもしれない。そうだ、麻雀というゲームは、いつだって次があるのだ。振り込みの痛みは一瞬で、次の配牌が全てをリセットしてくれる。今日のこの「大当たり」も、時間が経てば良いネタになるだろう。
手元の牌を見つめながら、俺はそっと息をついた。今夜は、もう一度「当たりくじ」を引きにいくか――気持ちを切り替え、再び手を進める。
「ハズレくじの大当たり」――そう呼ばれる一瞬の不運も、麻雀の楽しさの一部なのだ。
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