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【感想】晴追町には、ひまりさんがいる。 はじまりの春は犬を連れた人妻と

晴追町には、ひまりさんがいる。
はじまりの春は犬を連れた人妻と

なんだかほんわりしたタイトルだ。そして、ちょっぴり不思議な雰囲気も感じる。
どこに?と聞かれればそれはもちろん、“犬を連れた人妻”の部分に。

この本を読むきっかけは、タイトルにひかれたというのもあるけれど、著者の野村 美月さんにひかれたところもある。
野村さんの書かれた文学少女シリーズが好きで、それでお名前を知った。
今回のお話も、日常に潜む謎が出てくる。
ちょっぴり不思議な雰囲気は、タイトルに潜んでいるだけではなくて、本編にも登場する。

主人公は大学生の春近。晴追町で一人暮らしを始めた彼は、夜の公園で真っ白い犬を連れた人妻に出会う。
なんとも不思議な出会い。
その出会いが、晴追町の人々との触れ合いが、春近の日常を変えていく。

個性的なキャラクター達が登場するので読むのが楽しいし、何より謎が出てくるお話は、その結末が気になって読むにも勢いがついてしまう。
ページを捲る手が止まらなくなる。
悲しかったり寂しかったり切なかったり、幸せなばかりの展開ではないけれど、“晴追町”という温かい町が、なにより真っ白もふもふの癒し犬が、それらを柔らかく包み込んでくれる気がする。
だから、読んでいても苦しくならない。

年を重ねれば重ねるほど、日常のしんどさに心が疲れてしまって、せめて物語の中でくらいはしんどさを感じたくないと思うようになり、そんなお話ばかりを探してしまう。
そんな私でも、心穏やかに読むことが出来たお話。



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