可愛いの方向性
可愛いくなりたい。
可愛いって素敵だ。
ガラスに映った自分を見てうきうきしたい。
今日の私かわいいじゃん!って思える毎日を送りたい。
でも、美容院とか化粧品売り場とか、
そういう女の子らしいキラキラしたものは苦手だ。
肩身が狭い。居心地が悪い。
あれ。なんでだっけ。
ポケットに入った鏡とリップ
周りの女の子たちが可愛いに目覚め始めたのは、
たしか小学校の高学年くらいだったと思う。
女の子がグループ内で誰が好きとか、
そういう話題で盛り上がる年ごろ。
そういうキラキラな女の子たちの流れに、
私は見事に乗れなかった。
その子たちは休み時間の度にポケットから鏡とリップクリームを出す。
少しの風に吹かれただけで、必死に前髪を整えておでこを隠す。
自分の好きな男の子に近づく女の子は空気が読めてない、らしい。
私にとって可愛いは、自然体であることだった。
私にとって可愛いは、堂々と前を向いてにこにこしていることだった。
私に好きな人はいなかった。
少し経った後、
私は仲が良かった女の子たちから
「もう真尋ちゃんとは一緒にいたくない」と外された。
キラキラの女の子たち
そんな経験をした私は中学生活もそこそこ苦労した。
相変わらず周りの女の子はグループ主義だったし、
好きな男の子のことになると見境ないなと思ったりもした。
それでも、部活が同じ子とは仲が良かったし、
同じクラスの男子と話すことも多かった。
(そのせいでひんしゅくを買うこともあったけど)
いじめられたというわけでもないし、
こうして文章にするから思い出したのであって、
普段から当時の記憶に苦しめられているってわけでもない。
ただ、やっぱりついていけないってだけ。
ただそれだけだ。
そんなことを思っている間に
女の子たちのリップクリームは色付きに変わって
好きなひとは「彼氏」へと変わっていった。
私と可愛いとその方向性
自分で言うのは可笑しいけど、
私はいまそこそこ「女の子」の枠にはまった外見をしてる。
茶色のロングヘアー。
花柄の服。
最低限のお化粧。
大人しめのバッグ。
ピンク色の文房具たち。
言葉遣いだって所作だってそんなに悪くないと思う。
でもやっぱり、
美容院や化粧品売り場に行くと不安になってしまう。
あのときキラキラしていた女の子に
わたしは追いつけていない。
私は季節によってメイクを変えることもしなければ、
髪型を頻繁に変えることもしない。
そしてやっぱり私は、
1つのニキビを気にして俯くよりも、
姿勢よく歩いていた方がいいなって思うし、
風で前髪が乱れることに不機嫌になるより、
おでこ全開でも気にせずにご機嫌でいれた方がいいなって思ってしまう。
あ。わかった。
一般的な「可愛い」と「女の子らしい」と
私のそれは目指すところが違うのか。
あの時の仲間外れは、方向性の違いってやつだったのか。
なーんだ。
それなら、私は私の可愛いを進むしかないな。
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