2019年9月の記事一覧
マシーナリーとも子ALPHA ~涙の鰐篇~
鎖鎌は顔面から地面に激突し、ようやく立ち上がったところだった。だがすぐに、親友がワニに呑み込まれる様を見て今度は尻餅をついてしまった。
「錫杖ちゃん……?」
なにが起こったのか、目で見たのによく理解できていない。ワニにはマントラが刻まれ、ワニツバメは力を手にしていた。
しばらくぼんやりとその様子を眺めていた鎖鎌の意識は、友が奪われたという点に焦点を合わせて突如覚醒した。
「お前ッッッッ
マシーナリーとも子ALPHA 刻む真言篇
腕からワニを生やした女が降ってきた。いままでいろいろ変な奴を見てきたが、こんなのは初めてだ。エアバースト吉村は呆気にとられて2秒ほど固まってしまったが、ようやく気を取り直して尋ねた。
「あ、アンタが切り裂きジャック……?」
「だから! その名前で呼ばないでくださいよ! それはあんた達シンギュラリティが勝手につけた通称でしょうが。私はワニツバメ……バイオサイボーグのワニツバメです」
ワニ
マシーナリーとも子ALPHA ~高田馬場の切り裂き魔篇~
クラッシュトリガー生天目は緊張から思わず舌を舐めた。学生向けローンが詰まった貸しビルの6Fと7Fにシンギュラリティ高田馬場支部はあった。
その6F。フロア丸ごとを使ったレクリエーションルームに、仲間たちサイボーグの残骸が広がっていた。
……まさかトリミングはずきがやられるなんて! トリミングはずきは高田馬場支部のリーダーである本徳サイボーグで、両腕に取り付けられた4枚ずつのローターブレードに
マシーナリーとも子ALPHA ~倫敦の切り裂き魔篇~
その日の池袋は、粘ついたようなスッキリしない雨がポタポタと降っていた。雨は嫌いだ。濡れること自体は防げてもバウムクーヘンが湿気てしまうから……。
池袋駅から出たダークフォース前澤は懐からデッシュを取り出して起動すると会社への道を急いだ。デッシュとは使用した者の頭部を追尾し続けながら飛行する皿形のドローンである。2040年にようやく実用化されたハンズフリーの雨具で、頭上で雨を受け止め続けながら蒸
マシーナリーとも子ALPHA ~鳴るトンカツ篇~
「これは……?」
「パン粉だ」
田辺は袋を覗き見る。ロボットアームでパン粉を掴み取ると、いつも店で使っているものよりふわふわしているように感じられた。
「このパン粉は……?」
「そうさな、口で言うより舌で味わってもらおうか」
そう言うとセイカイは田辺とトルーを手招きし、奥のキッチンへと入っていった。大きな業務用の冷蔵庫のなかからバットを取り出す。中には小判形の物体が規則正しく並べられていた。