『北田卓史 原画の部屋』 楽しい幼稚園
みなさんこんにちわ。児童画家北田卓史の描いた原画を管理しているTaxi Pro.です。
今回は、幼稚園の様子を描いた作品を紹介します。
タイトル画像の絵は、園児たちが遠足に出かけるところのようです。
ただし、乗り込もうとしているのはバスではなく、プロペラの付いたヘリコプターです。
丸い窓とサンルーフで快適そうなヘリコプターですが、ずんぐりしている割に小さなプロペラで本当に飛べるのか少し心配です。
青空の下、園庭に大勢の園児たちが集合しています。みんなで両手を挙げているところをみると朝の体操の時間のようです。
黄色い帽子の園児が随分大勢いますね。
園児たちの向こう側では、もっと小さい子どもたちが園児たちの様子を見ています。少し早い気もしますが、来年入園予定の子どもたちの見学会のようにも見えます。
園児の列と見学の子どもの列、そして園庭を囲む塀とが同心円の曲線になっています。
画面の下の方には、園児たちの列とは逆の曲線を描きながら、風をはらんで大きくたなびくこいのぼりの頭と尾に部分が描かれています。
手前に描かれた画面に入りきらないほど大きなこいのぼりと、その向こう側に描かれた大勢の小さな園児たちとの対比が面白い作品です。
5月の爽やかな風と子どもたちの晴れやかな気持ちが感じられるようです。
もうひとつ曲線が印象的な作品を紹介します。こちらは1976年の作品です。
桜の花びらが舞う中、ぶらんこで遊ぶ女の子が画面左上に向かって飛び出しそうなくらい大きく描かれています。
目元はいつものようにやや逆三角形の黒一色、きりっと結ばれた口元に緊張した様子が表れています。
ぶらんこのチェーンが描く曲線に沿うように地面も湾曲していて、先生と園児たちが声援を送っています。
遠景には、男の子の乗るぶらんこが、女の子の乗るぶらんこと交差するように逆向きの弧を描いて、小さく描かれています。
曲線と遠近感の組み合わせでスピード感と躍動感あふれる構図になっています。
この2枚は、七夕まつりの準備の絵ですね。先生と一緒にみんなで思い思いの飾りつけをしています。願い事を書いた短冊がみあたらないのが不思議な感じがしました。
最後はこちら。1970年の作品です。
未来都市での登園の風景ですね。通園バスに向かう二人の園児は噴射式の推進装置がついたローラースケートを履いています。そろいの帽子はヘルメットのように丸く、アンテナのようなものが付いています。園バックにもなにかの操作パネルのようなものが付いていて、ただのカバンではなさそうです。
奇妙な形をした背の高いビル群の間を縫うようにロケット型のモノレールが疾走し、上空を二階建ての大型ヘリが飛び回っています。
のりものやメカ系の絵を数多く手掛けてきた北田らしい作品です。
今から50年以上前の作品ですが、昭和に時代からみた未来都市のイメージは大体こんな感じでした。
コロナ禍や地球温暖化で将来に漠然とした不安を感じている今の私たちが考える未来の都市のイメージとは大分違うように思います。
それでは、今回はこの辺で終わりにします。
お知らせ
「車のいろは空のいろ」(あまんきみこ作、北田卓史画)のシリーズを発行しているポプラ社では、現在、第4巻の刊行に向けて準備を進めています。その一環としてポプラ社のnoteアカウントでは、期間限定で「車のいろは空のいろ」の第一話の全文を無料で公開しています。季節ごとに全4回の公開予定で、第1回は5月7日までです。是非こちらもご覧ください。