聴覚障がいだけじゃない
(※トップ画像は、ある介護体験でお世話した児童からお礼としてもらったものである。知的障がいを持っているので、細かな作業が苦手だっただけに努力が伝わるもので嬉しかった。)
今回、記述することは大学時代に介護体験及び教育実習を行った際の経験談である。次に述べる内容は、大学のある講義でレポートを作成したために当時、指導経験した生徒の個人情報が分かってしまうことは避けるため、仮定とした設定でまとめているので留意していただきたい。
今回の講義を受け、「教科別指導を行う際の配慮と各教科等を合わせた指導を行う際の配慮事項」について私は、現在、担当している生徒の実態把握からみて考察する。
現在、教科指導の中で担当する生徒A君は、聴覚障害と脳性麻痺による肢体不自由の障害を併せ持っている。加えて学力は小学1年の学習内容の理解に不十分な面があり、言語活動においては日常生活の取り組みをしながらA君自らが身につけること出来るよう、指導する工夫が求められる。
身体の動きに困難なことから表現の方法が限られ、生徒A君が自分からやろうとする積極的な気持ちであっても結果的には良い方向に導くことができず、周囲の迷惑になることが起きることもある。つまり生徒A君が障害理解を十分に深めることが出来ず、みんなに妨げられていることの認識が困難であり、課題解決能力の指導に改善する必要が最も必要であると考える。また聴覚障害を持っていることにより、言語の理解がうまく把握できず、見た目をそのまま強く持っていて見えないことへの理解をつかむことが困難である。併せ持つことによって生徒A君には、自分が表出できる生活習慣を構築し、自己理解することが目標であると私は思う。
そのため指導する上の配慮事項では、課題を掲示するときに注目するべきところを強調する。例えば、地図や統計のように多数の要素が含まれる課題解決の取り組みの教科指導においては、順序を正しく立てて考えさせる教材を掲示し、繰り返し模範を見せることで体感的に経験を積み重ねる指導をすることがある。
他に筆記が困難な課題に関しては、教員がノートを赤色で書いてなぞり描きし、書記日本語の習得を補っていく指導をする。また所属学科の教科指導にコンピュータを使った授業があり、iPadを自ら操作し、数学の学習でも取り組んだりして、座学ではなく体験的な取り組みを常に意識して学習するように配慮している。
今回の講義によると、今後ろう学校各地でも重複障害の生徒が増加する傾向にあるということを感じられ、これまで聴覚口話法中心の指導にあったろう教育の専門性も個々の障害の重複化と並行してその療育も個々の実態にあった様々な方法を柔軟に対応しなければならなくなっている。教員自身が把握するためには検査方法の知識も理解し、実践していくことも重要であると考える。
(※ある大学のレポート提出原稿をそのまま引用したものであり、一部は当時の状況を踏まえているため現在の状況とは異なる。)
先日の投稿でもいくつか挙げられている言語指導は、聴覚障がい児・者として対象とした内容だか今回のような重複障がいには言語指導が同じように通じることはない。更なる改善や工夫が求められるなど、教職員の専門性は多様化してしまっていることを重く受け入れなければならない。
「聴覚障がいだけではない」というタイトルにあるように、私は勤務先の経験だけではなく大学の学びで介護体験や教育実習を通して様々な障がいを見てきた。知的障害(学習障害)の生徒にも接したことあるし、色々な障がいを見ていくことで、「何か必要な支援なのか。」ではなく、「個人に応じた方法が他の障がいをもつ生徒にも多少の波及効果はあるじゃないか。」という視線で考えるきっかけにもなる。でもやはり≪耳がきこえない≫というのと≪耳がきこえる≫というニーズは、言語獲得の時点で全然違うのである。ろう学校はそこをかなり留意しておかなければならないということの危機感を据えておきたい。
【参考文献】
「特別支援教育の基礎・基本」国立特別支援教育総合研究所 著(2015)
「視覚・聴覚・言語障害児の医療・療育・教育」篠田達明 今野正良 土橋圭子 著