むかしむかしあるところに『ソガのプワジ』という番組がありました。(最終回)
2011年10月、2度のリニューアルを経て『ソガのプワジ』はスタートしました。番組タイトルの発案者はGAG宮戸くんのお母さんです。
『やかせて!ソーセージ』の時期に行ったライブで「お母さん大喜利」という母親の答えを息子が出す企画があり、それ面白かったので乗っかることにしたのです。一方で度重なるリニューアルに疲れてきていて、肩の力を抜きたいという思いもありました。
『ソガのプワジ』という謎の人名タイトルは、スタッフで即決でした。出演者5組の頭文字を並び替えたそのスタイルは、KAT-TUNと同じです。
週に1回の放送なので、ロケに行けるのは1組のみ。それを決めていたのが”プワジめくり”と名付けたくじ引きです。番組キャラのプワジ君のカードを引き当てた1組だけがロケに行けるのです。
今思うと、視聴者の観たいものと乖離する内輪なルールだなと思います。やはり僕自身の演出力が未熟だったのです。
それでもロケに行く芸人さんたちは毎回一生懸命やってくれました。ロケは基本長回し。1日かけてロケしたものを20分ほどにまとめます。これが功を奏しました。
芸人さんが側は多少荒いボケも繰り出せるし、演出側も芸人ごとの個性を編集でつけることができます。若手の番組の基本スタイルですが、生放送ではなかなかできなかったことでした。
番組の転機となったのは『今でも河原にエッチな本は落ちているのか?』という企画です。
GAGが夜明けから日没まで淀川沿いをひたすら歩き、エッチな本を探します。汚れた雑誌を見つけてはおおはしゃぎし、表紙を見てコミック誌だと知って落胆したり、エッチなVHSの箱を見つけておおはしゃぎしたり、そしてついにエッチな本を見つけた時には大騒ぎです。
このバカバカしい企画が、高視聴率をたたき出しました。関西人最高!と感動しました。
その後この企画は川を変えて何度も行われ、東京・沖縄にも出向きます。最終的にはサイパンでエッチな本探しを行いました。よくプロデューサーがOKしてくれたなと今は思います。
少しずつ形が出来上がっていく中で、出演者とぶつかることもありました。
和牛の企画の放送中(火曜深夜)、水田くんから連絡が。
「なんでスタジオで流したVTRにはあったボケが、OAではカットされてるんですか!?」
確かにスタジオではウケたボケをカットしました。ただ僕にはもちろん理由があります。限られた放送尺の中で、最大値を出すためには優先順位をつけざるをえない。それが一番の理由です。
最終的には納得してもらいましたが、ボケひとつにも思いを持っている…どれだけ芸人さんが真剣に番組に向き合ってくれているかを感じた出来事でした。
GAGのエッチな本探しが恒例になるなか、徐々に芸人さんごとにロケのカラーが決まっていきました。プリマ旦那は大喜利色強めの企画、和牛は料理企画、学天即は女性アイドルを絡め、ソーセージは一夜漬け企画という一晩かけて何かを覚えるという過酷なロケを行いました。
深夜1時からの番組でしたが、会社からは「月の世帯視聴率が3%を超えること」と言われていました。たかが3%、されど3%。その壁を超えることはなかなかできないまま、2012年の6月を迎えていました。秋改編(10月以降も番組が続くかどうか)を乗り切るのはここで結果を出さないと終わりでした。
僕はここぞとばかり『エッチな本探しinサイパン』と、数字が上がってきていた『一夜漬けシリーズ』を投入。ついに月の平均視聴率が3%を達成しました。
しかし、番組は9月いっぱいでの終了が決まります。
結局は僕の力不足として言いようがありません。その後5組は全国ネットの賞レースでバンバン結果を出し始めます。僕は5組のポテンシャルを引き出せなかったのです。
番組が終わるとき「またこのメンバーで!」ということはよくありますが、それが実現されることはほぼありません。それは僕もわかっていました。
僕がヒット番組を出し、新たなレギュラー番組を始めることができればまた5組と仕事ができたかもしれませんが、それは叶いませんでした。
番組が終わって12年が経ちました。
12年間の中で仕事をできた人、できなかった人がいます。
一緒にレギュラーで仕事ができない分、僕は5組の単独ライブにだけは必ず行くようにしていました。せめて「まだ仲間だと思っているし、まだファンですよ」ということを伝えるための、無言の行動でした。
あれから5組はそれぞれの道を進んでいます。活躍の場を広げる一方で、改名、休止、解散、離脱、加入…そして優勝。
形は変われど、僕はこれからも5組を応援し、隙あらば一緒に仕事をしようとするでしょう。多少けむたがられても、ヘラヘラしながら仕事をオファーするつもりです。
あれから「『やかせて!ソーセージ』を観てMBSに入りました」という後輩も現れました(かなりビックリしましたが)。
これはただの昔話です。でも僕にとってはおじいさんになってもきっと思い出す1年半の話です。
嬉しくて、悔しくて、申し訳なくて、でも楽しくて。
これを読んでくれている中で、もし番組を観ていたという方がいれば、ありがとうございます。観てなかったのに最後まで読んだという方も、ありがとうございます。
さて番組が終了してからも、5組の芸人と未熟なディレクターは、それぞれの道をそれぞれのやり方でせっせと進んでいきましたとさ。
おしまい。
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