少年小説 「誰もいなくなったのはなんで?〈1〉」【ボクがいるこの世界のこと①】
ボクには、友達が一人もいないんだ。なんでなんだろう?
いったい、いつぐらいから、ボクは嘆き続けているんだろう?
いったい、どのくらい、ボクは悲しんだら、この悲しみは終わるんだろうか?
ボクがいるこの世界は、いま60ぐらいの男性の世界の一部だ。
いや、一部というのはおかしいかな。
ここにいるとわかるんだけど、世界はいや宇宙と表現すべきか、
すべて境界なんかないんだよ。
ボクが「オジサン」とか「モワクン」と呼んでいるこの60ぐらいの男性は、かなりボクの影響を受けた人生を送っているみたいだ。だから、スピリチュアルの本だとか、カウンセリングだとかでボクにアクセスしようとしてくる。迷惑だ。
ボクは、あんまり退屈すると、うんざりしてボクのフィールドを広げていく。いやなことばかりではないけど、ボクにはこの宇宙は危険な情報であふれていて、心配事や不快な出来事でもやというのか、すすけた煙で充満したぼやけた視界にすぐ変わってしまうのだ。
ボクの空間が拡大すると、オジサンはボクの影響を強く受けるようで、面白いように、ダメな人生を選択してしまう。それが、ボクにはたのしくて仕方がない。別に、完全にボクの思い通りになるとはボクだって思ってはいない。しかし、一時期は、完全にボクの意のままに世界(三次元フォログラムのことね)は動いていたと思う。
ここにいると、時間はないってことはよくわかる。
時間は螺旋になっているってよくいわれるみたいだけど(このオジサンはその手の本をよく読んでいて、ボクにも時々そのデータが流れてくる)、
螺旋は円を描いているってのは極端な話に過ぎない。
螺旋に見えるけど、三次元レベルでは直線にしか見えないからね。
地球を一周するときに、球体を円を描いて進んでるって自覚できる三次元の存在はいないからさ。
ボクは精神科にいけば、インナーチャイルドなどと呼ばれる存在だ。インナーチャイルドにしては少しばかり、知恵がついていて、かなりずるがしこいのだろう。大人と変わらないようにふるまうことだってできる。
しかし、それをあるカウンセラーは「がんばってますチャイルド」とかいうんだよ。なんだか、不愉快だったな。見抜かれてるんだ。心理学も進んでるんだな。
ある本では、「インナーチャイルドなどいません」と書かれていて、閉じ込められた時間にボクがいるだけだって書かれている。ということは、ボクはいなくなるっていうことを怖がらなくていいのだろうか?
「閉じ込められた時間の自己を成長させる必要がある」ってのは、ボクはオジサンと一緒になって消滅しなくていいってことなんだろうか?
他の本には「トラウマの憑依」ってのがあった。これは、ボクには「いや~な感じ」がする。ボクは実は、トラウマが肥大した存在で、意志を持ってしまったオジサンのトラウマなのかもしれないと思ったんだ。
つまり、ぼくは「トラウマの解消」と同時に存在しなくなるってこと。
それは、たいへんな問題だ。オジサンにボクは寄生していて、時々状況に合わせて憑依して、オジサンを乗っ取るってことをしているってことだ。
果たして、そんなことが本当にできるんだろうか?
でも、過去の事象をみてみると、そんな気もしてくる。
ということは、ボクは「トラウマが意志を持つ存在」なんだろうか?
ボクはいまオジサンとともにこの空間にいる。
それは確かなことだ。じゃあ、いったい、この空間を支配しているのは、
いったいだれなんだろう?
ボク? インナーチャイルド? オジサンの魂の意志? ヤル〇バオートの類? それとも、もっとやばいやつ?
やばいやつがいるとしたら、ボクはいったいなんなんだろうか?
オジサンの意志の弱さにつけこんで、多くの本来は入ってこないはずの意識に乗っ取られているんだろうか?
ぼくは怖くなったので、いつもの安全な泡のような場所に逃げ込んだ。
ここではすべてが安全で、何も怖くない。その時、ボクの意志は消えて、
オジサンの意志が強く出てくる。退屈だけど、ボクには平和な時間…というより、眠りにつく時間、いや時間はないんだけど…永遠といえばいいかな?
何もない豊かな空間に、戻ることになるんだ。
【続く】