見出し画像

トートタロット人生相談所⑱「3人の魔術師…模話氏編⑩~潜在意識を書き換えるカウンセリング①~」

職場環境に慣れて、初めてのボーナスが出た。
全額元妻へと考えていたが端数の3万円弱を年末年始用にとっておくことにした。

月末の給料日は通常通りに入金することにして、カウンセリングか読書代にあてることにした。

2か月間在籍した印刷所の上司だった神山さんがさっき9時半すぎに、私の社員宿舎を訪ねてきてくれた。電話があって、ふだんこんな時間に電話はなくもしかして元妻かとぬか喜びも束の間、神山さんからだった。

夜勤明けでボーナスが出た日でごきげんだった。
このあと、よく赤羽とかにチームで飲みに行っていたものだが、今日は夕方に家族サービス予定で、私に現場で分けたお歳暮やらのお土産を持って顔を見に来ただけだったそうだ。
年末にチームだけの忘年会を予定してるから来ないか?と誘ってくれた。
暇なので快諾した。チームの3人も会いたがっていると伝えられてうれしかった。

チームのうちの一人は日本エディタースクールの通信講座の校正をやりだしたそうだ。私の校正のやり方にショックを受けたそうで、校正で稼ぐ技術があることを実感して学ぼうと思ったそうだ。

「そんな特別なことしてませんが、何からそう感じたんですかね?」
「モノベさんは四六時中電子辞書か記者ハンドブックを引きながら、ヨウジヨウゴに精通していたでしょ?それにあのある会社の創業者の崇が祟になってたやつ、6か所のうち2か所だったかな?全部じゃなかったから、まぎれてあの最後の校正じゃなかなか気づきにくいんだよね、その前の校閲はOK出てたしね。そういう技術が彼には影響あったみたいだね」


「まあ、うれしいです。あのおかげでいまの本部でやりがいのある仕事をやらせてもらえてますし。神山さんのおかげです。お礼でもないですけど、朝ごはん作りますから食べませんか?」
「モノベさんが作るの?」
「厚切りトーストにベーコンエッグのせたやつですけど、召し上がります?」
「うん、食べたい。そういうのなかなか食べないからね。お金は出すよ。いろいろ苦労してるみたいだから」
「いえ、慰謝料以外は足りてますから遠慮なくどうぞ。ごちそうさせてください。お歳暮いろいろありがとうございます。この缶詰とかもいれましょうか?」
「いや、これはモノベさんのためにみんながあなたにって譲ったもんだ。彼らの気持ち受け取って食費節約に使ってよ」
不覚に涙が出てきた。

「ありがとうございます」
「なんだ。ないてんのか?年取ると涙腺弱くなるっていうよね(笑)。トースト頼むよ。なんか腹減ってきたよ(笑)」
「はい、トースターないんでフライパンでやります。見た目汚いですがお許しを」
「オーブントースターならいらないやつ持ってこようか?」
「ほんとですか?」
「ああ、こんどドアの前に置いとくよ」
「うれしいです。ありがとうございます」
いつもよりマヨネーズも多め、ベーコンエッグのベーコンは2枚にした。


「神山さん、どうぞ。足りなかったらまだあるから作りますよ!」
「おっ!喫茶店なみだな。ミルクティか?これ、うまいな!」
「業務スーパーの紅茶を煮だして牛乳と沸かしてます。砂糖はいってないんでよかったらスティックのをつかってくださいね」

「このベーコンエッグのパン最高じゃないか!」
「お好みで醤油どうぞ」
「うん、醤油とパン最高じゃないか」
「ぼくもパンと醤油の相性は悪くないと思います」


神山さんは喜んでくれた。私もとてもうれしかった。年末の飲み会の約束を確認して神山さんを玄関先まで送った。泣きそうな切ないうれしさがあった。


今日は昼からカウンセリングがある。
あるネットで見つけた。
潜在意識の状態を変性意識状態で把握して書き換えるという人だった。
あまり評判はよくなかったが、格安で1回やってみるならいいと思い申し込んだ。

昼に池袋の雑居ビルに赴いた。
クアハウスみたいな名の下に小さく名前と研究所名が書いてあった。インターホンを鳴らすと見た目30代くらいの先生が出てきた。


「電話で予約したモノベです」
「はい、待ってました。どうぞ」

入ったとたんに出ていきたくなったが、値段が安い。ただ料金が言われた金額より多かったら帰るつもりだった。

「初回診断サービスで2500円で前金でお願いいたします。カルテを書けるだけ書いてください」

音楽はチベットのシンギングボウルが始まった。
先生は声がきれいで、直観でできる人じゃないかと感じた。
きっかけがつかめると感じた。
カルテを書けるだけ書いて先生の指示を待った。
診察室に通された。
外が見える意外ときれいでここちよい空間だった。
ソファーベッドに腰かけると診察が始まった。


【続く】
©2023 tomas mowa