トートタロット人生相談所⑰「3人の魔術師…模話氏編⑨~催眠療法2~」
「モノベさん、お疲れさまでした。まだベッドに横たわったままの状態でいてください。深呼吸をしばらく続けてください」
「…」
「いま何か見えますか?」
「光が点滅してます」
「色はどんな色ですか?」
「くすんだ深緑に濃い赤紫が沈んだような色です」
「いまモノベさんが見えているものは恐らく丹光といわれてるものです」
「色に意味はありますか?」
「ええ、いろいろ解釈はできますが、聞く限りあまりよい状態の色ではないかもしれませんが…気功やスピリチュアル関係のカウンセリングで確認されるといいかもしれません」
「状態はよくないのかもしれませんが、絶望感と虚脱感と同時にいままで感じたことがない平穏な意識を感じてます」
「まだ子ども時代の情景は見えますか?」
「…」
「あなたを批判したり攻撃するひとはいまここにはいません。自由に感じたことを表現してよいのです」
その瞬間、別室からか物音がした。先生の気配が消えたので何か起こったのかもしれない。目の前には煙のようなバルーンに似たものが浮かんで見えた。アイマスクをしたままだが、割とはっきり知覚できた。
「戻りました。いま何が見えますか?」
「先生、どうかされましたか?」
「…。いま別室の祭壇にある燭台と魔除けの置物が落ちて壊れてしまいました」
「え?どうしてですか」
「モノベさんは、いま何か見えてましたね?」
「それと関係あるんでしょうか?」
「カルテにもお書きくださっていましたが、黒魔術の真似事をされて、いじめられたその子どもたちに術をかけたと書いていましたね」
実際はいじめていたのは私だった。報復されてうらんでのろったというのが本当のところだった…いまは事実を知ってしまったのだから…。
「モノベさんのじゅじゅつは偶然ですが、力があったようです」
「え?」
「壊れた燭台と魔除けの置物はアメリカ先住民がつくったものです」
兄貴がこっくりさんで呼び寄せてしまったみじょうかれいもアメリカ先住民の何かだったとあるれいのうしゃに言われた記憶がある。諦めて正直に思ったことを伝えた。
「私はどうやら8歳の頃に、ひょういを受けてから黒魔術的な能力をもってしまったのかもしれませんね」
「いまはひょういを受けてなくてもその時代に精神がいけば同様の状態になることはないことではないでしょうね」
「アメリカ先住民のみじょうかれいの影響はまだあると思われますか?」
「私はいわゆるれいのうしゃではありません。専門家を紹介しますから、そこでみてもらうといいかもしれません」
「ちなみになんという先生ですか?」
「茗荷谷にいらっしゃるマリネさんというすごい方です」
「一度みてもらったことがあります」
「そうですか。またみてもらうことをおすすめします」
「そのときにはひょういはもうない。自分でつくりだしているから自分でやめることをしない限り終わらないと言われました」
「私の今回の診断も同じような感想になります。診断結果はプリントしますのでお持ち帰りください。あなたはご自分で解消していける方です。あとは踏み出す勇気…自分をありのまま受け止められるかにかかってきます。いつでも力になれるなら協力します。がんばってください」
「ありがとうございます。燭台と魔除けの置物は弁償させてください」
「お気持ちだけで結構ですよ。あなたがポジティブにかわっていくことが、地球を浄化していくことにつながります。ですから、自分だけのことと思わずに、あなたの大事なひとたちや大好きな自然や動物に愛をおくるつもりで自分を成長させていってください。みじょうかれいの名残のものを退治してくれた燭台と魔除けの置物のためにもお願いいたします。あなたにはみじょうかれいはもういません。そう決めてください」
「ありがとうございます」
「ネガティブな状態は磁力ですからネガティブなものを呼びます。磁力を消せば近づいてきてもはりついてきません。心が軽くなっていくようにイメージしてワークしていきましょう。ブレナン先生の本にもワークは一生するものだって、あったはずです」
「断崖絶壁を登るような心境でずっといたんですが、磁力を弱めていくイメージは少し気が楽になります。いつかポジティブに極性がかわっていく日をイメージしてみます」
「焦らないことです。螺旋をのぼることが結局はいちばん早道なのです。いまは焦っている自分を認めて許してあげてください。進もうとすれば焦ることもあるでしょう。前に行きたい自分をほめてあげてください。比べないことです。いつか輝くときはすべての人にやってくることを信じましょう。私もがんばります」
言葉が出なかった。嘘臭いことをいまは言いたくない。そんな気持ちで何度もお辞儀だけをして先生の顔をみて部屋を出た。
【つづく】
©2023 tomasu mowa