世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜第23話 配信完了

 あの子は無事に帰れたかな?

 とか少し気がかりに思っているけど、近くに住んでる子だったら、僕よりよっぽど安全に帰れるだろうと思い直す。

「よいしょっと」

 ライオン人間を背負い直して僕もさっさと帰ろう。

 でも、背負ってるものが背負ってるものだから、周りにいる冒険者の人たちや街の人たちからの視線が辛い。

 うわぁ。みたいに思われてるんだろうな。身を引かれてるのがわかる。

 何かいいものがあるといいんだけど、入りそうな袋持ってなかったんだよなぁ。

「リストーマ様! よかった。ご無事だったんですね」

「セスティーナ!? あ、あの。今、僕、汚いので近寄らない方が、あ、ああ……」

「構いません。無事、何事もなく帰ってきてくださったのに、それ以上に嬉しいことはありませんもの。途中で途切れてしまったので、帰ってこなかったらと心配で心配で」

 ダンジョンで動き回り、戦闘をした後で汚れているにも関わらず、そんなことも気にせず、安心したように僕のことを抱きしめてくれる。

 家族にだってこんなことをされなかった。
 家族からの心配なんて、ありえないことだった。

 ああ、僕は姫様の元まで帰ってきたんだな。

「ただいま戻りました」
「はい。おかえりなさいませ。リストーマ様」

 泣き笑いのような顔で見上げてくる姫様。

 嬉しいけど、これじゃ心配性だ。

「セスティーナがここまで来ることじゃないですよ。すぐに戻れますから」
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫です。今回はセスティーナの言葉通り、無事ですから」
「……。そのようですね。本当に、よかった……」

「オホン!」

 ビクッとして見上げると、フロニアさんが赤くなりながらそっぽを見ている。

「その、お二方。仲がいいのは結構ですが、道端でこのようなことは街の皆さんに迷惑かと」
「「え」」

 一緒にキョロキョロと辺りを見回してみると、なんだか通行人の人たちが立ち止まってニヤニヤしながら僕たちを見ている。

 はっとして姫様と顔を合わせると、姫様の顔がだんだんと赤くなっていく。

「「すみませんでした!」」

「いえ、大丈夫ですよ。誰ともぶつかっていないので。続きはまた戻ってからにしましょう」

「「……続き」」

 戻ってすぐは、気まずくて話し出せなかった。

 フロニアさんも、
「それでは、私はこれで失礼させていただきます」
 と言ってどこかへ行ってしまったし。

 どうすれば……。

「「あの」」

 声が重なり、また黙る。

「姫様からどうぞ」
「あ、ありがとうございます」

 まだ少し赤いほほの姫様は、控えめな目線で僕を見てくる。

「改めて、無事でよかったです」

「はい」

「それで、倒していただいたライオン男。それから、視界に送っていただいたもの、どれも有益な資料や素材となりそうです。やはり、リストーマ様に任せれば、今までとは得られるものの質が段違いのようですよ」

「それはよかったです。できるだけ丁寧にやろうとは意識したんですけど……あの、戦っている最中とか、見てて気持ち悪くなりませんでしたか?」

「はい。リストーマ様のお気遣いのおかげで問題なかったです」

「よかったです。それと、僕、変なこととか失礼なことは言ってませんでした?」
「特になかったと思いますよ?」
「本当ですか? 少し安心しました」

 心配していたことは大丈夫みたいだ。よかった。本当によかった!

 これで、少し意識して戦闘をすれば問題がないことがわかった。
 しっかりやっていることは見せられたし、結果としては上々!

「そうです。ダンジョンについて何か気づいた点などはありましたか?」
「気づいた点、ですか」

「はい。やはり、ダンジョンへ行くのとダンジョンの光景を見るのでは違うと思いますので、何かあればおっしゃってください。ささいなことでも構いません。ダンジョンに関してはわかっていないことの方が多いので、なんでも教えていただけると嬉しいです」

「そうですね……」

 と言っても、何を見ればいいのかわからないから、僕としては魔獣と戦ったことくらい……。

「あの。ダンジョンの魔獣は外にいる魔獣よりも、魔王軍の者に、魔族に似ているかなと感じました」

「確かに、動揺を誘うにしても、言葉を理解しているようでしたものね。それは確かに感じました」

「そう。そうなんです。あれって……?」

「現状は情報が少ないですね。もしかしたら、魔獣が進化したのか、魔族も住んでいるのか。引き続き調査をお願いしたいです」

「もちろんです。あと、魔獣は持ち運びが難しいので、量を運べるように入れるための袋があればいいかなと思ったのですが」

「かしこまりました。準備させます。他には何かありましたか?」

 何かあったような……。

 そうだ!

「あの、セスティーナに届いてたことはわかったんですけど、その場で確認できたらと思って」

「確かにその通りですね。私も何か情報を伝えられれば探索のプラスになるでしょうし。少し実験してみましょうか。あとは何かありますか?」

 ない、かな?

 あっ。でも……。いや、フラータは近くにいただけの子だし、彼女は違うな。

「大丈夫だと思います」
「わかりました。今回の情報をもとに、次回の探索につなげましょう」
「はい! 姫様の力になれるようがんばります!」

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