家族を殺され、毒を盛られたTS幼女は、スキル『デスゲーム』で復讐する 第16話 第三回デスゲーム 決定

 ロウキの叫び声と認識すると、ダリアとベルドルフの二人は、脇目も振らず駆け出した。

 俺としても、直に起きた事を見て、現場確認しておきたいし、二人の後をついていく。

「あの声はロウキよね」

「聞くまでもない。確認する他ない」

「せやなぁ」

「「…………」」

 俺の相槌をスルーする二人。

 大魔法の魔力を、丸々不発で無駄にしたからか、ダリアはさっきから不機嫌だ。

 俺の邪魔が入らなければ、魔法を撃てて終わっていたとか思っているのだろうか。

 いやいや、そんな事はない。俺の行動に関係なく、ベルドルフの横槍が入っていただろう。

 そもそも、俺と会話していても、勝てるような計画にしていなかった、ダリアが悪いというものだ。

 さて、現場。いや、デスゲーム開始地点に戻ってきた訳だが。

「あ……。ああ…………」

「オオタさん! オオタさん!」

「これは、ひどい……」

「むぅ……」

 ロウキは、ギリギリ息がある程度で、すでに、意識がないようなものらしかった。

 見かけからして、助かりそうもない重症で、ロウキの下には、血溜まりができていた。

「ミーネ……」

「まさか、ミーネがやったのか?」

「違います。違うんです。こんな傷、私じゃつけられません」

「じゃあ、どういうことなの?」

「おそらく、魔物が現れて、それで……」

「ふぅん。なるほど。魔物のせいねぇ」

 まあ、そこに関しては何も言うまい。

「原因はいいわ。それよりミーネ、どうしてロウキを治さないの? それは、ロウキを絶命させるため?」

 ダリアの言葉に、ミーネは、ハッとしたように顔を上げると、すぐにぶんぶん首を横に振った。

「違います。そんなつもりありません。ただ、使えないんです。私の力が何一つ、使えないんです」

「使えない。なんて、見え透いた嘘をつくのね」

「本当なんです! この鎖が手首に巻き付いてから、同じようにしてもオオタさんを癒せなくて……」

「鎖?」

「待て。安易に触るべきではない。あれは、何かがおかしい」

「わかってるわよ!」

 ミーネの手首に巻き付いた鎖。

 ミーネは元々、アクセサリーの類なんて、それっぽいロザリオくらいで、鎖をジャラジャラさせているような奴ではない。

「ジン。これは何?」

「怪しげなものには答えない。そんなことはさせないぞ?」

「そもそも隠してないからな。それは、俺の仕掛けた鎖だ。あーあー。触っちまったか。置いておいただけなんだけど、まさか、引っかかる奴がいるなんてな」

「仕掛けた、なんて言うからには、ただの鎖じゃないんでしょう?」

「その通り。それ、スキル無効化できるんだわ。てなわけで、ミーネちゃんは、今、絶賛ただの女の子ってこと」

「そんな……。じゃあ、オオタさんは……?」

「お前の不注意で、このまま対処不可能ってところじゃないか?」

「……貴様ぁ!」

 突如、ベルドルフは拳を振り上げた。

「ベルドルフ。落ち着いて」

「だが!」

「落ち着いて。このスキルが発動している時のジンに勝ち目はない」

「……」

 睨みつけるようなダリアに圧倒されたのか、ベルドルフは怒りを収めたようだ。

 振り上げた拳を、おとなしく下げた。

「これをやったの、ジン?」

「違うわ。さっきも言ったことだが、口は出せても手は出せない。ジェノサイドってのは、俺のスキルじゃないんでな」

「じゃあ、ロウキの死因は?」

「さあねぇ? そこは答えられないな。今の場合、死に関して詳しく話しちゃ、誰がやったのか簡単にわかって、面白みがなくなっちまうだろ? ただ、これだけは教えておいてやろう。ここはダンジョンなんだ。魔物は当然のように居る」

「むぅ。どうしたものか」

「魔物がやっても犯行にはならない。そうでしょ?」

「ああ。もちろん」

「ということは、犯人がいる」

「それは、犯人は私だって意味ですか?」

「純粋に考えれば、他に居ないだろう」

 ベルドルフはミーネに向かって、ずいっとにじりよった。

「待って。ミーネはずっとロウキと一緒だったの?」

「いえ。私は、少し近くを見て回っていたので、途中から一人に。それはベルドルフさんも見ていたはずです」

「本当に?」

「……ああ」

「じゃあ、その後は?」

「鎖に触れ、悲鳴を聞いて、慌てて戻ってきたら、このような状態でした」

「なるほど。だから、おそらく、ね」

 一人冷静に推理を進めるダリア。

 大魔導師として、リーダーの穴を埋めているのか。

 まあ、誰もが自分以外に押し付けようって感じだがな。

「待て。魔物を誰かが放ち、襲わせれば、魔物が攻撃でも、犯行になるのではないか? ということは。ジンが魔物を放ち、隙をついてロウキを狙った、とは考えられないか?」

「残念ながら、俺からそんなことする事はないぞ? 俺のスキルは、デスゲームの妨害には対処できても、無差別殺戮は行わない。いや、行えないからな。その代わりとして、かなりの自由度があると言っていい。ま、俺はジェノサイダーじゃないからな。お前ら探索者と違って。と、いうことで、ただの虐殺者と一緒にするのはやめてもらおうか」

「むぅ」

 肉体担当が頭脳担当みたいなことをするから恥をかくことになるのだ。

「ならばもう、通りかかった魔物の仕業なのではないか?」

「ベルドルフ。あんたそれ、本気で言ってるの? さっき否定されたことを忘れたの?」

「むぅ……」

 どうやら推理が気に入って、一度では懲りなかったらしい。

「仮にも、ロウキはあたし達のリーダー。そんなやつが、たとえ一人でも、魔物相手に引けを取るとは思えない」

「私も、そう思います」

 聖女に続いて、頷くベルドルフ。お前、自分で襲われたとか言ってたんだが?

 まあ、これで。こいつらの中では、魔物に襲われたということではないと決着がついたらしい。

「でも、皆さんのために一つ。情報を提示しないといけないと思います」

「何?」

「魔物の操作。それも、コノモトさんの魔法なら、魔物を操作して、人を襲わせることも可能ではありませんか?」

「確かに、それは可能かもしれない」

「真っ先に一人になり、我が来たタイミングでも、ジンと話し、何かをしていた。結局、内容は明かそうとしなかった。ダリア。貴様がやったのではないか?」

「でも、一人で行動していたのは、ベルドルフ。あんたも一緒でしょ?」

「むぅ。そこに反論の余地はない」

「それなら、私も一人になりました。全員、アリバイがないということでしょう」

 全員、誰もが可能だったかもしれない。

 疑いが疑いを呼び、次第に距離が離れていく。

 まあ、犯人は、嘘ついてそういう展開にしたがるよな。

「ミーネは、どう思う?」

「え、え? 私ですか?」

「多分、あたし達は一対一だから。あたしは、野獣的な攻撃からして、ベルドルフがやったと思ってる」

「……。我は、ダリアだと思うぞ。怪しげな行動を重ね過ぎている」

「私、私は……」

「盛り上がってきたなぁ? さあ、どうするミーネ?」

「私が、決めていいの?」

「他にいないだろ。お前が決めるんだよ」

:どうして答えが見えぬ
:神の力をも阻害するスキルだというのか?
:これもまた、神の衣の影響か?

「オーディエンスの反応も絶好調! さあ、どうするさ!」

「皆さんは、私の可能性は考えないのですか?」

「考えない。ミーネのことは信じてるから。だって、虫も殺せないんだもん」

「我もだ」

「……わかりました。ありがとうございます!」

 ミーネは、覚悟を決めたような様子で、俯きがちに笑った。

 いいね。いい笑顔だ。

「では、すみませんが、ダリアさんで」

「……!」

 意外だった様子で、ダリアは顔を上げ、そして、目を瞑り、俯いた。

 それから、ミーネに向けて、優しい笑顔を浮かべた。

「……仕方、ないわね……。あたしが、一人、勝手に動いていたんだから……。犯人を野放しにしてしまうなんて……」

「すみません」

「いいのよ。ただ、あたしは違う」

「見苦しいぞ」

「そーそー。決定したんだから、誰が犯人か明確にしないとな!」


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