家族を殺され、毒を盛られたTS幼女は、スキル『デスゲーム』で復讐する 第8話 第二回デスゲーム 自爆

 処刑を目にして、ようやく俺の説得を諦めた様子のベテランらしい奴ら。どうやら、やっとここが普段生活する人間社会とは違う異界、ダンジョンであると認識したらしい。

 馬鹿みたいに無駄に騒ぐの止め、急に静かになった。

 さて、それはそうと、魔物をいつまでもここに居させちゃ可哀想だ。

「さ、おかえり」

「ガフ」

「イヤイヤじゃないの。ここにいたら危ないから。みんなのとこに行きな」

「ガフゥ」

 見るからにしょんぼりしながらも、魔物は来た道を帰っていった。

 時折、やっぱり居ていいんじゃない? みたいな顔をしながら振り返ってくるせいで、つい、いいよと言いたくなったが、そういう訳にもいかない。

「本当によかったのか? あれだけの戦力だ。簡単に手放すのはもったいないんじゃないか?」

「いいのいいの。戦力なら最悪べフィアがいるだろ」

「頼りにしてくれるのはありがたいが、ワタシは先ほどの魔物より確実に弱いぞ」

「どっちにしてもいいんだよ。これ以上、探索者による魔物の被害は出さない。あの子だけ付き合わせたら可哀想だろ」

「優しいんだな」

「そう思ってるのはべフィアだけだよ」

 睨みつけてきている探索者達は、決して、俺を優しいなんて思っていないだろう。

「何か言いたい事があるなら言えよ」

「俺達は、ここまで犠牲になった奴らみたいにはならないからな。そのために、しっかり頭を使ってやる」

 リーダーのタカラシとかいう男が、威勢よく俺に言ってきた。

「そうか? まあ好きにすればいいさ。だが、お前らはすでに頭が足りてなかったんじゃないか? 女に騙され、裏切られてたんだろ? あんなに遊ばれてたってのに、この状況を打開できるのかねぇ?」

「……! それとこれとは関係ない。な、ハクア、トモオ。一緒にどうにかする方法を考えよう」

「「……」」

 タカラシに呼びかけられても、ハクアもトモオ顔を伏せるだけだった。

 やっぱり、統率なんて取れていないみたいだ。

「なあ、一緒に考えてくれよ」

「普通に考えて無理だろ。黙ってルールを破ってたリーダーと協力なんて」

「そうだな。ハクアの事は信頼できても、リーダーは無理だ」

「そんな……」

「絶望してるところ悪いが、当たり前の反応だと思うぞ」

「黙れ。なら、いつまでだって話し合いをしてやる。死人が出なけりゃ、さっきみたいな事にはならない」

「それでもいいが、食料はないから引き延ばしは無意味だぞ」

「くっ……」

 デスゲームに乗らないと言うのなら、ゆっくりくたばるだけ。

 デスゲームに乗るのなら、ハイペースでくたばるだけ。

 このゲームにおける奴らの勝利条件は、俺のバックにいる神を納得させるだけの回答をぶつけることだろう。

 だが、

:この様子では今回も当てにならない人間しかいないようだな
:なに、そう簡単に人が変わるとは思っていない
:あまり早くに進めるのは良くないというものだ。ここは慎重かつ地道に進めていけばいい

 リーダーの取り組み方は、どうやらお気に召さなかったらしい。

「なあ、ハクア」

「ちょっと頭を冷やす」

「ハクア! こんな時に一人で行動したら……。なあ、トモオも一緒に居るべきだと思うだろ?」

「俺も、一人にさせてくれ……」

「トモオ!? そんなことしても、あいつの思う壺だぞ」

「……」

「くそっ」

 やれる事の少なさからか、タカラシは地面を殴りつけた。

「どうやら、リーダーの人望ってのは、当てにならないらしいな。お前らのパーティは、一枚岩じゃなかったみたいだねぇ」

「黙れ、悪党」

「それは誰の事を言っているのかな?」

「お前の事に決まってるだろ!」

「じゃあ、質問を変えようか。どの立場で言ってるのかな? 俺からすれば、お前らの方が悪党だからな。お前らは、散々魔物を殺してるんだからな。忘れるな」

「……クソが。どいつもこいつも勝手に行動しやがって。生かすなら絶対俺だろ。どうしてそれがわからないんだ」

 言い争いに負けて、自分の世界に入っちゃったか。

 ぶつぶつ独り言言っててキモイな。

 改めて考えると、どうしてこいつがリーダーをやれてたんだろ。単なる力?

「ま、いいや。トモオの方に行ってみるかな」

 バックアップなら戦闘系のスキルも持ってなさそうだし、そこまで遠くには行ってないと思うけど……。

「あ、居た」

「ここまでか。案外すぐに壁だったな。こんなゲーム乗ってやる義理はない」

 トモオは剣を構え、ぶつぶつ独り言を言っている。

「何してんの?」

「なっ!?」

 慌てた様子で、トモオは剣を隠した。

「驚きすぎだろ。剣見えてるぞ」

「か、隠してねぇよ」

「なに? どうして驚いてたの? 俺がスタート地点から動けないとか思った? それともあれか? 少女には見せられないような事でもしようとしてたのか? やらしー」

「ちげぇよ! この壁を破って脱出しようとしてたんだよ。俺は、他の頭が悪い奴らとは違うんだ。俺用のとっておきはお前に奪われたが、これでなああああ! は……? いってぇ……」

 トモオは、壁に向かって勢いよく剣を振るった。

 だが、壁は壊れる事なく、逆に、振るった剣がトモオに襲いかかった。

「あーあー。急に自爆したうえ叫び出して、何してんの? もしかして、自主退場して一騎打ちにしたかったの?」

「ちが……」

「壁がどんなものか聞かずに攻撃するなんて。馬鹿だなぁ」

「……」

 他人を頭悪いとか言っておいて自爆しちゃうなんて、恥ずかしいなぁ。

「おいおい! これはいったいどういう状況だよ! 動かない状況に見かねて、自分で手を出したのか! この嘘つきめ!」

「一人が寂しいからって、言いがかりはやめろよ。こいつが自分で自分を切りつけたんだよ」

「ほ、本当か?」

「……ああ」

「どうしてそんなことを!」

「……ここの、壁。どうやら、空間が歪んでいる、らしい……」

「空間が歪んでる?」

 疑いつつも、タカラシはゆっくりと壁に手を当てた。

「なっ! 行くと、帰ってくる」

「そういうこと。壁じゃなくて折り返し地点ってところかな? もちろん、攻撃も帰ってくるって寸法さ」

「先に、言え……」

 タカラシの言葉通り、俺が作るデスゲーム壁は、行くと帰ってくる。

 外へ出ようとすれば、同じような場所に戻ってきてしまうのだ。

 だからこそ、外へ向けて攻撃したなら、自分に向けて攻撃が返ってくるという訳だ。

「いい加減にしろよ」

「それはお前達のお仲間のせいだなぁ。だって俺の話聞かないんだもん」

「貴様ぁ!」

「おっと。俺に攻撃している場合か? もう一人が同じ事をしようとしてるかもしれないぞ? それとも、初めにやられた奴と同じ目に合いたい感じ?」

「……くそっ。すまない、トモオ」

「走れ走れー」

 タカラシはトモオを放置して走り出した。

 俺もその後を追いかける。

 さ、こっからどんなもんが見れるか楽しみだ。


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