世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜第41話 報酬を送りたい!?

「今回は特に素晴らしかったですよ!」

「せ、セスティーナ、近いです!」

「す、すみません。でも、リストーマ様には真っ先にお伝えしたくて」

「ありがとうございます」

 ナメクジは先に僕の方からフロニアさんに預け、今回は体をキレイにしてから部屋に戻った。

 だから姫様が汚れることはないけど、やっぱり近くに来られるといい匂いがしてドキドキする。

 そういえば、今回は姫様以外にも視界を送っていたから、姫様から色々な方にあいさつする用があって、すぐには出迎えられなかったってフロニアさんが言っていたな。

 姫様もよかったと言ってもらえたのかな?

「よかったですね。リストーマさん」

「えー。でも、ダンジョンでしょ? そんなによかったの?」
「きっと、何か考えがあるんですよ」
「そうかなー?」

「そうですね。お二人にとっては当たり前のことでわからないかもしれませんが、とても、とても大切なことなんですよ」

 よかったよかった。

 実験的なやり方だったから、うまくいくかはわからなかったけど、どうやら問題なく終われたみたいだ。

 事故もなかったみたいだし、本当によかった。

「リストーマ様からして、何か気になる点などありませんでしたか?」

「はい。大丈夫でした。反応が返ってくる分、やはり今の方がやりやすいです」

「なるほど。それは試してみて正解でしたね。見ていたみなさんからも、とてもいい内容だったと好評でした」

「本当ですか。よかったです」

 姫様の役に立つのはもちろんだけど、姫様以外の人の役にも立てるなんて。こんなに嬉しいことはない。

 今まで、人の役に立てるなんて思ってもみなかったけど、僕でも役に立てているのは、こうして姫様が機会をくれたおかげだ。

「本当にありがとうございます。セスティーナ」

「いえいえ。リストーマ様の実力と、尽力によるものですよ」

「そうですかね?」

「はい!」

 姫様に言われると照れるけど、嬉しいな。

「あの、そこでさっそくなのですが、報酬を出したいという要望を色々な方からうかがっています」

「報酬、ですか? それは、セスティーナに対してではなく、僕に?」

「はい。リストーマ様に対してです」

「え、えっと……」

 僕に報酬なんてどういうことだろう?

 そこまでのことはしていないと思うけど。

 他の人はできないかもしれないけど、ただスキルを使ってダンジョンの様子を届けていただけだし。

「僕がもらってしまうのは悪いですよ」

「リストーマ様ならそうおっしゃると思っていましたけど、そんなことありませんよ」

「ですが」

「いいですか、リストーマ様。リストーマ様のスキルを知った方々から、ダンジョンへ行ける人材に対して、どうして今まで報酬を与えられなかったのかと、そのことが問題になっているくらいです」

「それは、僕はあくまでセスティーナの兵なんですから、当たり前のことじゃないですか?」

「そんなことありません。もしそうだとしても、他の方々はそうは思ってないということです。少なくとも、私は今のままでは不足していると感じています」

「セスティーナ……」

 確かに、ありがたい。

 評価してもらえることは嬉しいし、単純に、がんばりや貢献に対して、目に見える形で何かをもらえるというのは、今までなかっただけに心が揺れる。

 だけど、やっぱり僕はできることをやっているだけだし、人のためになればいいと思っていただけだから、それにお金をもらうなんて……。

「いいんじゃないですか?」

「サーピィ?」

「お金がどのようなものかまでは詳しくわかりませんが、話からして、価値があるものということはわかります。わたしもリストーマさんが色々な方に大切にされている方が嬉しいです」

「ニュードラも! あたしも、リストーマがお宝いっぱいになった方がいい。リストーマからは、リストーマ以外にもお宝をもらったから!」

 二人まで。

「そもそもこれは、正当な対価をどうやってリストーマ様に対して渡すかという話なんです」

「え」

「本当は、今までやってきたことに対してさえ、まだ最低限の報酬しか出せていませんからね」

「今までって、魔獣を持ち帰ってきたこととかですか?」

「そうですよ。それから、私に対してダンジョンの様子を届けてくれたこと、ダンジョンで取れる様々なものを持ち帰ってくれたことなどなどです。ですから、リストーマ様は本来、もっと評価されるべきお方なんです」

「……! セスティーナがそこまで言うなら、そうなのかもしれませんね」

「そうなんですよ!」

「……わかりました」

 まだ、自分がすごいと言われているのを受け入れるのに抵抗がある。

 それも、姫様みたいなすごい人に。

 でも、だからこそ、言ってくれているのに、否定しないようにできるようになろう。

 まずは少しずつ。

「それなら、一つやってみたいことがあります」

 お金の転送と僕のスキルを紐づける実験。

 うまくいけば、姫様がやっているようなテレポートの要領で、送りたいお金を僕の指定した場所へと送ることができるようになる、はず。

 遠くにいても言葉を伝えられたし、きっとうまくいく。

「あ、そういえば、お金はどこへ送ればいいんですかね? 送っても困らない場所ってありますか?」

「それなら、リストーマ様の部屋か、私の部屋のどちらか好きな場所を指定してくだされば大丈夫でと思いますよ?」

「それじゃあ、セスティーナの部屋でいいですか? 自分の部屋だと無駄にしてしまいそうで」

「わかりました。もちろんです」

 それに、姫様の部屋なら今から簡単に確認することもできる。

「それじゃあ、実際に試してみたいと思います。サーピィ、これを」

「これがお金ですか?」

「そう」

「あたしもあたしも!」

「はい。ニュードラの分」

「わー。キラキラしててお宝だね」

「一応、セスティーナも」

「私は自分のお金があるので大丈夫です」

「確かにそれもそうですね。じゃあ、やりますか」

 準備が整ったところで僕の視界、この限られた空間に対して、

「『マイ・ヴィジョン』」

「……! なるほど。こんな感じなんですね」

「すっごい不思議な感じー」

「私の部屋だと、なんだか照れますね」

「普段はこんな距離で使いませんしね」

 さて、無事全員にスキルを使えたようだ。

「それじゃあ、持ってるお金を送るイメージをしてみてください。僕はメッセージを送るイメージもわからないので、頼むことしかできないのですが」

「わっ」
「どうしました!?」
「お金が、消えました」
「わたしも……」
「あたしもない!」

 確かに、三人の手元からお金がなくなっている。

 指定した場所は部屋の隅。

「あ、あった!」
「本当ですか?」
「はい。しっかり三枚」

 あれ、これいつものやつと違う。

「あの、これは?」

「それは普段のものより高価なものです。どれでも送れるか確かめられた方がいいと思って」

「ありがとうございます。どうやら種類も問題なさそうですね。って、うわ、わあっ!」

「ごめんなさい。量はどうだろうと思ったんですけど、どうやら、手に持っていなくとも自分のものなら送れるようですね。すみません」

「そうなんですか!? いや、セスティーナが謝ることじゃないと思いますが……」

 一瞬で部屋の一角がお金まみれに……。

 でも、なるほど。持ってなくてもいいのか。

「それなら、送りたい人もラクでいいですね。よかったです。うまくいって」

「はい。これで、みなさんの不満も解消されるはずです」



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