世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜第31話 お宝だ!
姫様とサーピィの話は気になるけど、女の子の話を聞くのはヤボというもの。
でも、出かけるとは言ったものの、行く場所もない……。
「さっそく困った……。街をウロウロしようにも、あんまりあっちこっちに行ったりしていると迷子になりそうだし……」
それに、次は姫様と行くと決めたパン屋にふらっと入ってしまいそうだ。
ふわっといい匂いがしてきて頭を振る。
いかんいかん。さっさとここから離れよう。
「かといって訓練所に行っても誰もいないだろうし……。他に知り合いはいないし……」
本当に行くアテがない。
「ダンジョンにでも行くかな?」
姫様がサーピィと話しているから、今回はスキルも使わずにダンジョンへと入る。
一人だけど、安全には気をつけつつ……。
「まあ、仲良くできてよかったけどね。うんうん。それが何より」
僕も水を差さないためにダンジョンに詳しくなろう。
一般に知られている以上に僕は詳しくない気がするからなぁ。
魔獣がいて、サーピィみたいなヴァンパイアもいて、それで暗くて探索が進んでいなくて、入り口付近しか情報がない。
こないだは外にいる魔獣もいたんだっけ。
「そういえば近くに女の子が住んでるみたいだったけど、ダンジョンの近くに民家なんてないし、散歩に来てただけだったのかな?」
まあ、ダンジョンに用があるとは思えないし。
ん。ヘビのような……。
「うおっ!」
危なかった。ヘビかと思ったらしっぽだった。
四つ足のヤギのような頭に胴体は、ライオン、か?
見たことも聞いたこともないような姿の魔獣。
「セスティーナ。あれは何ですか? ……? って。そうだ。一人だった」
当然のごとく、僕の視界に変化はない。
この魔獣は確実に外にはいない。こんな変わった姿の魔獣がいれば、僕だって知っているはずだ。
危険度は高く見積もったほうがいい。
「おっとっと」
魔法のようなスキルのような力で、電撃まで発生させてくる。
これは厄介だな。接近するのに苦労しそうだ。
「えっ!」
今度は、ヤギ頭が火まで吹いてきた。
こういうのは何か一つじゃないのか?
しかも、どっちもピカピカしてるから、ダンジョン内が暗いこともあって目くらましみたいになる。
これは姫様に見せていなくてよかった。
さあて、腕が鳴るな。
今回はせっかく鍛えてもらってるんだし、剣の腕を試してみるかな。
「ゲエエエ!」
ドスの効いた鳴き声。
挟み撃ちのように迫る電撃を回避。
さらに次々と襲いかかってくるがこれも回避。
近づこうとすれば炎。
「っとと。近づくだけで熱いなんて」
でも、なるほど? 接近させない作戦かな?
「フロニアさんたちより、甘い」
量による攻撃でごまかしてるけど、見かけほどの威力はない。
それに……。
「見えたっ!」
スキを見て。前に抜け出す。
驚いたのか反応すらできていない。
「これで、なにっ!」
危なかった。
「毒……?」
しっぽのヘビが突然こっちを向いたかと思ったら、霧のようなものを吐き出してきた。
あのしっぽは飾りじゃないってわけか。
さっきまで動いてなかったから、完全にただの飾りだと思っていたけど、今になってニョロニョロと動いている。
なら、先にしっぽを切り落とすまで。
電撃は見切った。炎も熱さを感じるだけ。
慣れた調子で接近し、毒を吐かれる前に切り落とす。
まだ動いているが、これで毒は大丈夫。
そして、蹴りを即座に回避。
「毒は何とかしたけど、ちょっと面倒だな……」
これ以上長引かせるのは得策じゃない気がする。
まだ何か策を持っているかもしれないし。
気づけばまたヘビが生えてきたようだ……。
「仕方ない。『マイ・ヴィジョン』! お前の視界を奪う」
頭としっぽで目は四つもある。
なら、その視界を一気に奪ってやればいい。
混乱したように、僕のことを探すために頭を動かしている。
うん。効いてる効いてる。電撃は狙いが定まらず僕に向かってこない。
「あとは一気に決めるだけ」
走り出すと、しっぽが少し反応している気がするが、それもにぶい。関係ない。
「とった!」
今回は少しダメージを与えすぎたかな。
でも、十分十分。
倒した魔獣を持ち帰るとして……。
「ん? これって、宝石? もしかして……」
ダンジョンにはお宝が眠っているって話、本当なのかな?
ヴァンパイアもいたし、少しくらいは眠っていてもおかしくないんじゃない?
他にもある。
道としては、こっちの方、だと思う……?
足跡、気配。うん。強い魔獣がいた感覚。
それも複数。
「……。今は数が少ないみたい。他にもこういう場所があるのか、それとも場所を移ったのか」
何にしても数が少ない今がチャンス。
深入りしすぎないようにしつつも、探索する場所として絶好の場所だ。
これもダンジョンについて詳しくなるため。
「あった……! ビンゴ! あれじゃないか?」
進んだ先に宝箱がある。
やっぱり数は少ない。
ただ、うん。一体だけだけど……。
「守り手はドラゴンか……」
さすがにこっちは伝承通りかな。
「でも、見つけたお宝を逃すわけにはいかないよなぁ」
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