家族を殺され、毒を盛られたTS幼女は、スキル『デスゲーム』で復讐する 第14話 第三回デスゲーム 疑念
デスゲーム開始を宣言してやったのだが、四人全員、揃いも揃って、大技後の硬直でもしてるのか、技を出した後の姿勢のまま微動だにしない。
驚いたとでも、信じられないとでも言いたげな表情のまま、俺を見つめて固まっている。
「なあ、これはバラエティ番組じゃないんだぞ? そんなぼけーっとしてたら、魔物に食われても文句は言えないからな?」
「馬鹿言うな。それくらい理解してる。デスゲームとか言うお前の方こそ、何か勘違いしてるんじゃないか? それって魔物に使うやつだろ? なんだ? 生き残ったから、またパーティに入れてくれってか? おいおい冗談キツいぜ」
「そんな馬鹿みたいな頼み事をすると思うか? お前ら、自分が何したか忘れたのか? 俺をわざわざ殺そうとしたんだぞ?」
「じゃあ、なんだってんだよ」
「今、実際に見ただろ? 何が起こったのか」
「あん? まさか本気とか言いたいのか?」
「待って、ロウキ。実際に発動しているかどうかは一度置いておいて、ジンのスキルなら、ルール説明が必要なはず。それでも、こうして助かってる以上、あたし達の攻撃は妨害には含まれていないと思う。でも、紙一重だったとも言える。ここから先、迂闊に動くのは危険かもしれない」
「つまり、アイツの話を聞けってか?」
「そう」
「まあ、デスゲームに乗るつもりはないが、発動してるなら、詳細を明かすって欠陥的なデメリットを晒してもらうかねぇ?」
「乗るとか乗らないとかじゃないんだよ」
だが、この様子だと、大魔導師のダリアは、デスゲーム発動や、自分が置かれた立場について、キッチリ理解してるみたいだな。
もし仮に、デスゲームもなく、普通に対面していたら、こうして俺の話を聞こうなんて、言わなかっただろうからな。
「ジン。あまり心配させるな。無茶をするならあらかじめ言っておいてくれ」
べフィアに頬を突かれた。
「わかったよ。できる限り気をつける。だが、大丈夫だ。見ただろ? あいつらは、俺にとって脅威じゃない」
「……。それはわかっているが、周りがどう思うかも考えてくれ。……気をつけろよ」
「ああ。万全を期すさ」
べフィアの背中を見送ってから、改めて、俺はロウキ達を見回した。
「さあ、デスゲームは想像通り始まっている。ルールはシンプルだ。お前ら四人で、殺し合いゲームをしてもらう。ルールは、俺のスキルを見てたからわかると思う。説明なんて必要ないよな」
「は? んじゃ、同士討ちさせて弱らせるだけのスキルを、俺たちに使ったってのか? 馬鹿じゃねぇの? 俺たちがそんなことすると思ってんのか?」
「さっきも言ったが、するとかしないとかじゃないんだよ」
「ルール説明は終わったろ? ダリア、言ってやれよ。お前の頭脳で論破してやれ」
「……」
「おい。ダリア。黙ってどうしたんだよ!」
ロウキに促されても、ダリアは、考え込むように目を伏せた。
俺に挑発するべきか、考えているのかもしれない。
もしかしたら、ここで打つべき最善の手を、模索しているのかもしれない。
どちらにしろ、俺にとっちゃ、デスゲーム参加者の一人という事に変わりはない。
「……。ジン。念のため、確認させてもらえないかしら」
「ああ。質問は自由だ。答えられる限り、なんでも答えよう。一応、参加者に対して、フェアである事を心がけてるからな」
「……。ジンはもう、スキルを発動してるという認識で間違いはないかしら」
「そりゃそうだ。でなきゃのこのこ出てきたりしない。お前らみたいな力自慢(笑)じゃないからな」
「……。なるほど」
「おい。今の質問にどんな意図があるんだよ。ダリア!」
「……」
「ダリア!」
ロウキの質問に、ダリアは答えない。
またしても沈黙。
深く考えるように、顎に手を当てている。
それから少しして、ダリアは顔を上げると、自分の分の荷物だけを抱えて、歩き出した。
「ダリア!?」
「少し、一人にさせてくれないかしら」
「正気か?」
「正気よ。すぐに答えは出せない。ジン。あたし達四人が、それぞれ拠点を持つくらいには、広さがあると考えていいのでしょう?」
「もちろん」
俺の答えに、ダリアは満足そうに微笑んだ。
「コノモトさん……」
「ミーネ。気持ちはありがたいけど、今は一人にさせて」
「はい。コノモトさんが言うのなら、何か考えがあるんですよね」
「ありがとう」
聖女のミーネに手を振り、バトルマスターのベルドルフにも会釈してから、ダリアは、本当にその場を後にした。
単純な攻撃合戦と思っているロウキとは違い、犯行と犯人探しのデスゲームという、俺のスキルを理解していると見た。
しかしそれなら、組になって行動したみたいなことを提案しそうなものだが、単独行動とは……。勝ちに行っているのか、それとも……。
そんなダリアの行動に、聖女とバトマスは納得した様子だが、リーダーもどきオオタ・ロウキは、納得できない様子で、顔を真っ赤にしていた。
「おいおい。どーいうことだぁ? 要は、スキル発動者のこいつを、ぶっ殺せば済む話じゃねぇのかよ」
「おそらく違うんだと思います。もしそうなら、コノモトさんがそう言うはずです」
「……。そうだよなぁ」
「それに、記憶では、アベさんを攻撃しようとしていた魔物は……」
「ああ。弱らせずに、他の魔物が倒しちまったやつとかもそうだな。たいていが、ひき肉みたくなってた。もし俺らにも飛んでくるなら、なるほど? あー、あぶねーあぶねー」
ギリギリ助かったみたいなつもりなのだろうか、やれやれみたいな動作をしながら、ロウキは怒りを収めたらしい。
「流石に、そこまで馬鹿じゃないか」
「ふ。我々ともなれば、窮地の一つや二つ、造作もない。それもまた日常である。相手が貴様のような、力の知れた雑魚ともなれば、窮地にすら値しない」
「そーいうこった。さっさと攻略される前に、尻尾巻いて逃げた方がいいんじゃないか?」
「あっそ。じゃ、言っとくけど、せいぜいアリバイでも作っととけよ」
「なんだ? 上から忠告か?」
「別に。ただ、そんだけだ。長くなると、ジリ貧で苦しむのはお前らの方だからな。せいぜい、次をどうするか考えとけよ」
俺としちゃ、今はこいつらの相手よりも、ダリアがどこで何をしてるのか、という事の方が気になる。
いくつか可能性の候補はあるが、直に会って、冷やかしに行った方が面白そうだからな。
「おい。次ってなんだよ」
「おそらく、ジリ貧のタイムリミット。もしくは、犠牲の事かなと思います」
「んだよ。そんなスキルだったか? 魔物のバトルロワイヤル。同士討ちさせるスキルじゃねぇのかよ。別にシカトでいいだろ」
「それにしたって、ダリアさんがそう言うように思いますが」
「はあ? じゃあ、お前らから生贄を選ぶってのか?」
「あっ……」
「ふむ……」
「んだよ。急にどうした」
「いえ……」
離れる前にいいものを見れたな。
やはり、一番の馬鹿は、リーダーに担ぎ上げられてるロウキらしい。
他二人が、警戒し、距離を取ったことが理解できていない。
まあ、純粋な攻撃力だけなら、ダリアやベルドルフの方が出るが、バランスや窮地での力となると、労基の力は馬鹿にはならない。
聖女という、戦闘職でないミーネなら、尚更警戒するだろう。
「いいね。疑念渦巻く、疑心暗鬼のデスゲーム。わかってる奴は何か行動してるらしいし。ゾクゾクするなぁ」
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