世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜第18話 イイコトは……
「キレイな方でしたね」
「セスティーナが言うほどだったんですね……」
僕らはポツンと置いてけぼり。
なのだが、嵐のようにやってきたかと思ったらどこかへ行ってしまった。
しかし、女の子のセスティーナから見てもキレイな女性だったようだ。つまり、本当にキレイなヒトだったのだろう。僕が見てもそのことはわかった。
けど、そんなにキレイな人が姫様じゃなくて僕に話しかけてくるなんて、なんの用だったんだろう。
もしかして、服装は変じゃなくても、僕の顔立ちとか髪色が、姫様と不釣り合いってことだったのかな……。
「……ぼーっとして、そんなに見とれることないでしょうに……」
「姫様、僕って、変ですかね?」
「え、いや、そんなこと」
「正直に言ってください。僕の顔、変ですよね。知っての通り、僕はどこぞの森で拾われた身。この国のキレイな人たちと並べば、僕の見た目が変だと思われることくらいわかります。特にその中でも可憐で美しいセスティーナと並べば、僕なんかは……」
「そ、そんなことないです! り、リストーマ様は、か、かっこいいと、思いますよ?」
「え、今なんて」
「恥ずかしいので二度は言いません!」
ぷいっとそっぽを向いてしまった。
でも、怒っているわけじゃないらしい。それはなんとなくわかる。
僕の役割は見た目じゃない。それなのに、周りにそんなことないと言ってもらわないと自信をなくすなんて、情けないな。
ほほを叩き、僕は姫様に頭を下げた。
「ありがとうございます! そして、すみません。セスティーナを守るのが僕の役目なのに、先ほどは反応できていませんでした」
「かっこいいのは事実ですから。それに、何もされてませんから、大丈夫ですよ」
「本当にありがとうございます!」
そうだ。
周りが僕の見た目をどう思うかなんて関係ない。
姫様がこんなふうに思ってくれるなら、僕は周りの評価など気にしないでいられる。
ふさわしい見た目でなくてはと思ってしまったけれど、僕に求められているのはそこじゃない。もちろん、無理のない範囲で努力はするが、他人になることはやめだ!
「「………………」」
でも、姫様から面と向かってかっこいいって言われたから、素直に照れる。
まさか、かっこいいとまで思われていたなんて!
不意に言われたから、心の準備ができてなかったし……。
ちょっとずつ冷静になってきてやっとなんとか飲み込める。
純粋に本当に嬉しい。けど、やっぱり恥ずかしい。
そうだ。僕ばっかり受け取ってたんじゃ失礼だ。
「せ、セスティーナも。かわいいと思います」
「わ、私は先ほどの言葉で十分ですから! それ以上はリストーマ様から言われては死んでしまいます!」
「え、いや、僕は何も」
「ほ、本当に大丈夫ですっ!」
え、先ほどっていつだ!?
僕、何か言ったっけ?
「あの、本心ですからね? 嘘ではないですよ?」
「わかってますよ。疑っているのではないです。でも、何度も言われると私が何もしない子になってしまいます。それに、あまり女の人を気軽に持ち上げるものではないですよ?」
「はいっ!」
そんなつもりはないのだけど、少し反省。
姫様が優しいから許してもらえたが、次からは気をつけよう。
でもそうなると、どう接したらいいのだろう……。
「ねぇ? そこの坊や。アタシといいことしない?」
「えっと……」
またしても知らない人だ。
今日はよく人に話しかけられる日だな。姫様と一緒なのに……。
目の前に現れたのは、僕より黒い髪に、黒く薄い布だけを身につけたような、スタイルがいい女性。
何やらやけに人に視線を集めているみたいだけども、薄着なだけで特に変わったところはないような……。
「ねえ。どうなの?」
「結構です」
「そうよね。じゃあ……。……え?」
「結構です」
「……!」
隣の姫様が驚いたように僕を見てきた。
「……知らない人ですから、セスティーナを置いて行けませんよ。それに、いいことはセスティーナからしてもらってますし」
「し、しし、してないですよ!」
僕としてはとてもいい状態、体が思ったように動かせるうえ、訓練では、現役の王国騎士団の方を相手に訓練させてもらっている。
それだけじゃない、そんな状態を維持できるように、食事も生活も環境も僕にはもったいないくらいのものを支給してくださっている。
それなのに、もっといいこと、もっといいものなんて、欲張りにも程がある。
それに、あまり女性を持ち上げては行けないと、先ほど姫様に教えてもらったばかりだ。
「いや、でも、ほら。アタシと遊びたいでしょ? 日頃溜まったものを晴らしたいんじゃない?」
「間に合ってます。行きましょう」
「は、はい……でも、本当にしてませんからね?」
「わかってますよ」
もらっていると僕がわかっているだけでいい。
こうして誇示しないところが姫様のステキなところだ。
「え、ちょ、本当に間に合ってるの!?」
「はい。本当に間に合ってます。なので、失礼します」
僕は姫様の手を引いて女性から離れた。
さっきの白い女性とは、正反対の雰囲気で、なんだかこれ以上近くいるのは危険な気がした。
「……何よあのガキ!」
ちらっと振り返ると、黒い女性の背中の辺りに黒い何かが見えた気がした。けど、服の一部かな?
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