世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜第37話 国中に配信したい
と、とりあえず一件落着。で、いいんだよな?
姫様も話してくれるようになったしな。それに、サーピィともニュードラとも仲良くしてたし。
うん。大丈夫。
でも、これからは出かけるにしても勝手にウロウロしないで、あらかじめ何をするのか話しておいたほうがいいだろうな。
気をつけよう。
「あの、リストーマ様」
「はい。なんでしょうか?」
「突然の質問で申し訳ないのですが、私以外に対しても、リストーマ様のスキルを使うことは可能ですか?」
「と言うと?」
「実はですね。私と同じように、ダンジョンを見てみたいという方が思いのほか多いようでして」
「そうなんですか?」
実際に行っている立場からすると、少しわからない感覚だけど、行ってなかったら気にはなるのかな?
「セスティーナさんの知り合いというのは変わった方たちなんですね」
「あたしは絶対帰りたくないのに」
「ダンジョンについて、色々と知りたいことがあるからだと思います」
「「ふーん?」」
どうやら、サーピィとニュードラが言い出した話ではないみたいだ。
興味なさそうに二人して仲良く遊んでいる。
ダンジョンに戻らないで、ダンジョンを見たいとかそういう話かと思ったけど少し違ったみたい。
となると、本当に姫様の知り合いが?
「それで、どうしてそのようなことに?」
「簡潔に言えば、興味でしょうね」
「興味、ですか」
「はい。私たち王族や貴族だけでなく、この国で暮らすほとんどの人は、冒険者でもなければ、街の外にいる魔獣すら直接目にする機会もありません。まして、動いている姿となれば、空を飛ぶ魔獣を遠くから眺めるくらいでしょう」
「そうですね。確かに飛んでるのは時々見ます」
「え、飛んでるの?」
「ニュードラちゃん。危ないですよ」
「はーい」
飛び出そうとするニュードラを落ち着かせるのはサーピィに任せよう。
しかし、確かに、安全とわかっているなら、ダンジョンについて知りたいと思う。
それは僕もわかる気がする。
「実際はそれだけでなく、ダンジョン探索で得られたことの分析結果に注目した方や、ダンジョンの構造を知りたい方、ダンジョンに生息する魔獣について、聞きつけた方たちなど、様々な方から見たいと言われてしまっていて……」
なるほどなるほど。
どうやら思っていたよりも僕のやってることは人の興味を引いているみたいだ。
きっと、人のためにもなっているはず。
けれど、そこまで色々な人に重宝されるスキルだったなんて驚きだ。
「それで他の人にも、ですか」
「はい。把握している限り、どこまでも遠くへとリストーマ様のスキルは届いていたようですし、この国中くらいならダンジョンの様子を見せられないかという話でして……。その、決して無理にとは言いませんが、どうでしょうか」
「セスティーナはどうしたいですか?」
「え?」
「僕は頼まれたらやってみるだけです。やれるかどうかはやればわかります。ですから、セスティーナがどうしたいかだと思って。僕はあくまでセスティーナの兵ですから」
「私は……。私はもっと、リストーマ様のお力を色々な方に知ってほしいです。なので、やっていただけませんか?」
「わかりました!」
「ありがとうございます!」
とはいえ、またなんの前触れもなく、いきなり国中に対して僕のスキルを使えば、混乱が起こることは簡単に予想ができる。
それに、案外自分の見えている世界が見えなくなるというのは危険なことだ。
かといって、本当にできるのかどうかを確かめないといけないわけで……。
「あの、フロニアさんたちにお願いがあるんですけど」
「なんでしょうか」
かくかくしかじか、ことの成り行きを説明したところ、フロニアさんは、快く僕の頼みを引き受けてくれた。
さて、ある程度の人数を相手に対してというのはやったことがない。
初めて使えた時は、本当に無意識で力が発動していたけれど、今回は国中程度でいい。
だからこそ、個人ではない相手に対して、どうやってスキルを届けるかということ。
「ご協力よろしくお願いします」
「もちろんです。なあ?」
「お前、リストーマ様に対してだけ甘いよな」
「そんなことないさ」
「ホント、あん時から人が変わったっつーかさ」
「そんなことはいいだろ。やるのか? やらないのか?」
「俺はやる」
「俺も俺も」
「ったく、しょうがねぇな」
どうやらフロニアさんの独断だったらしく、渋々といった感じの人もいたけれど、みんな協力してくれるみたいだ。
「本当にありがとうございます!」
「それでリストーマ様。私たちは何をすればいいんでしょうか」
「えっと、そのままこの場所を動かないでもらえれば、好きにしてもらって大丈夫です」
「この場所って、訓練場をですか? それならいつもと変わらないと思うのですが」
「はい。ここにいてもらえれば大丈夫です。やると言っておかないと危険だと思ってのことなので」
ほとんどの人にはあまり納得してもらえていないようだが、フロニアさんはなんとなくわかってくれたみたいだ。
この中でフロニアさんだけが、しっかりと僕のスキルをくらっている。
こればっかりは、僕も自分で見えるタイプのスキルじゃないから伝えようがない。
だからこそ、こうしてやると言ってくれる方がラクだ。
「それじゃあ、いきますよ?」
「おわあっ!」
「な、なんだこれ、お、俺が見えてる」
「これ、リストーマ様からの目線じゃないか? なんだこれ、リストーマ様と入れ替わったのか?」
「いや、俺も多分おんなじの見えてるぞ?」
ひとまず成功かな?
「大混乱って感じですね」
「一度事故で経験しているくらいじゃ、こうですよね……」
でも、直で反応が見えているからわかる。
複数人へのスキル発動も成功。
移動したり、遠くへ行ったりしてもスキルは継続できてそうだし、これなら問題はない。
うん。大丈夫そうだ。
「ありがとうございました!」
「これでいいのならよかったです」
「はい!」
次は規模を広げればいいだけだな。
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