家族を殺され、毒を盛られたTS幼女は、スキル『デスゲーム』で復讐する 第10話 不意打ち
前回、自分のため、怪我した仲間を殺す事に躊躇のなかったトバオ。
今回、ルールを破ったタカラシを確実に殺すため、わざわざ兵器を組み立てたハクア。
ダンジョンの魔物は、本当はこいつらなんじゃないだろうか。
:決着か!
:なかなかなものだった
:だが、残った者でも、望むような姿勢は持ち合わせていないようだな
神からのコメントを見る限りでも、やはり、人間が正されるという事に対して難しさを実感する。
やっぱり、変えるのなんて無理かね。
変えられるなら、俺はこんな事になってないだろうからな。
「何をぼーっとしている。ほら、やったぞ。これでいいんだろ?」
「はいはい。つーわけで勝利おめでとう。チョーカーがある事からわかってると思うが、お前に自由はない。せいぜい次のデスゲームまでの間、短い自由を噛み締めておくんだな」
「つまりそれは、今回のデスゲームは終わったって事でいいよな?」
「ああ。今回のデスゲームは終わった。それがどうした?」
「今、今回のデスゲームは終わった。そう言ったな?」
「何度も繰り返させるなよ。言ったよ言った」
なんだこいつ、もったいぶりやがって。
トバオみたいに安心してすぐ帰ったりしないし、近くに魔物がいないか警戒してるみたいだ。
バックアップだからか、どちらかと言えば地味で、初めから周りを見ていた気はするが、なんだこいつ。
「は……? あ、刺された」
「残念だが、僕も探索者なんでな。あいつらには悪いが、魔物側につくような輩を、野放しには出来ない」
「あー……。なるほど。それでデスゲームが終わったか聞いてたのね。理解理解」
スキル発動中に攻撃すれば、無条件反撃が飛んで来る事を想定して、ゲームが終わるまで待っていたと。
なるほどねー。だから生き残らないといけなかったと。
それで、最大火力をぶっ放して、自らの戦力が下がった事を見せたうえで、俺に不意打ちか。
「本当に賢いな」
「なんだ? 諦めたか?」
「いいや、皮肉だよ。お前、今何してるか理解してる?」
「してるさ。お前のスキル。デスゲームとか言ったか? そのルール適用は、ゲーム内。つまり」
「いいいい、そういうの」
「いずれにしろ、今お前が僕程度に刺されていることが証拠だ。それに、お前はあくまで戦力軽減のために倒す前提。ここで兵器は使えない。本体はあっちなんだろ? 何もしてこないアレ。だからこそ、ここまでの力を使えるって訳だ」
「ジン、動けるか?」
「話しかけてきた! まさしくそうだ! どうだ? ピンチだって言って、あいつをここに連れてこいよ!」
「必要ない」
「本当か?」
「問題ない。こーいう悪い子には、しっかり躾をしないといけないからな」
「躾? 無理だね。そんな状態で何ができる? お前は魔物じゃない。ただの人間だろ? だったら、スキルが解除された以上、俺に心臓を貫かれれば死ぬ!」
そういや確かに、剣を通さない鋼の肉体じゃなかったな。
だが、大丈夫だ。
「なあ、いつまでこうしてるつもりだ?」
「いつまで……? まさか、ここまでしてなんともないのか?」
「いや、効いてる。効いてるよ?」
「なら、どうして……?」
「効いてるけど、なんつーかな、喉に魚の骨がつっかえたみたいな感じが、胸にあるだけなんだわ」
「その程度だって……??」
「そ。その程度」
実際、俺も突然のことに驚いてるんだけどね。
自分の体が剣で貫かれてるのに、痛みがほとんどなくて、不快感があるくらい。時間が経っても、それは変わらない。
「どうして……? まさかお前、本当は人間じゃないのか?」
「れっきとした人間だわ。失礼な。そもそも俺みたいな女の子に剣を突き刺すなよ」
「……」
戦意喪失ってところか? 早いな。つまんねーな。
「これでもくらえ!」
「は?」
まさかの二度目の不意打ち。かと思ったら、何も飛んでこなかった。
が、地面に落ちると形が見えた。
おそらく、先ほど錯覚として見せた、魔物の素材を使った物だろう。
「これも、駄目なのか……」
「あれは偽物だぞ」
「は……?」
「俺の見せてた幻覚だから」
「……」
今ので準備していた道具を使い果たしたのか、本当にやる気が失せてしまったようだ。
「なあ、嬉しすぎて冷静さを欠いてたのか知らないけど、この程度でなんとかできるとか思ってた訳?」
「……」
「うっ。いきなり抜くなよ」
「ははっ! 本当だ。血すら付いてない。こりゃ、実力差がありすぎだな。スキルとかそういうレベルじゃない。末端の探索者じゃ、相手にならない世界……」
「そういやこの服ってそんな機能もあるのか? 見た目はアレだけど便利だな」
「今なら、お前が本体って言われても納得できるわ」
「別にどっちが本体とかないけどな。べフィアの役割は、神への報告らしい。配信って奴だな」
「神か。人間がイキるなってか? レベルが違うと、思考までぶっ飛んでるな」
ハクアは、今度は自嘲気味に笑い出した。
信じているのか信じていないのかわからないが、どちらにしろ、こいつはさっさと始末するに限るか?
いや、ここは少し試してみるか。
「せっかくなら聞いてみようか。神様、人を刺すような悪い子はどうしますか?」
「は?」
「その反応、実は信じてないな? まあ、聞きゃわかるさ」
「即刻処刑! 即刻処刑!」
「いいや、洗脳し直すべきだ」
「そいつはいらん。いい奴だけ残せば十分だ」
「なんだ、この声……。脳に、直接……」
「本当だ。気持ち悪っ」
なんで今回だけ脳に直接語りかけてきてんだよ。
「ま、わかったろ。お前は処刑ってことだ」
「ま、待て。おかしいだろ。今はデスゲームじゃない。ルールを破っていいのか?」
「もうデスゲームじゃないわ。ルール無用の攻撃を先に仕掛けてきた奴に言われたくないなあ! それに、一回だけだったから、神様も溜まってるよね!」
「うおおおおお!」
「やーれ! やーれ!」
「まさしく処刑の時」
「なんだこれ。この狂気はっ!」
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