世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜第38話 国中に配信!

 王国騎士団の人たちの協力で、複数人に対しても僕の視界を見せることができるとわかってきた。

 感覚的には、なんとなくで範囲をイメージすると、その近くにいる人にスキルを発動できるみたいだ。

 指定しないと多分どこまでも届くんだろうけど、あんまりやりすぎると迷惑そうだし、誰かとか、どこかとかにしておいた方がよさそうだな。

「さて、ダンジョンまで来ました。セスティーナの方は大丈夫ですか?」

"《セスティーナ》はい。大丈夫です。始めてください!"

「かしこまりました!」

 ここまでは姫様だけにやってきたが、ここからは他の人にもやっていく。

 姫様の伝令か、僕のスキル使用を知らせる鐘の音が鳴り始めた。

 あらかじめ国中の人たちに対して予告をしてもらっていた鐘の音。そのおかげで国中へのスキル発動が実現できる。

 これで、範囲を気にしないで使える。

「いきますよ! 『マイ・ビジョン』!」

 鐘の音が鳴り止んだところで、僕はスキルを発動させた。

 調整する方が疲れるから鐘の聞こえた範囲に対してざっくりと使える方が僕としてはラクだ。

"《セスティーナ》……? 始まりましたか?"

「セスティーナからすれば変化がないはずなので、わからないですよね……。まあ、僕にもわからないんですけど……」

"《フロニア》姫様の言葉が出ていますが、これは……?"

「あ、フロニアさん。先日はありがとうございました!」

"《フロニア》こちらこそ……。いや、私の言葉まで出ているじゃないか!? なんだこれは!"

「実はこのスキルを使うと、遠くからもやり取りができまして」

"《フロニア》それは素晴らしい。しかし、本当に自分の見る目のなさが悔やまれる。あの時は本当に申し訳ありませんでした"

「いいんですよ。僕もあいさつをしっかりできていませんでしたし」

"なんだなんだ?"
"これがお知らせのあったことか? すごいな。本当にダンジョンにいるようだ"
"どうしてこのようなことをできるというのに、誰も今まで評価していたかったのだ!"

「わ、わっ!」

 す、すごい。

 ちょっとフロニアさんと話していたら、視界の右端が文字で埋め尽くされた。

 しかも、量が多すぎてすぐに新しいのに書き換わっていっちゃう。
 流れるように現れては消え、現れては消える。

 相手が姫様だけだと気にならなかったけど、人が多いとこんなことになるなんて。

「え、えっと。みなさん見てくださりありがとうございます! 初めまして、リストーマと申します」

"こちらこそ。いや、こんな歴史的瞬間に立ち会えたのだ。むしろ、こちらが感謝する側というもの"
"しかし、このような状況では、どこの誰だかなんて関係ないな"
"このような場を用意してくださってありがとうございます”

「い、いや。僕はまだまだですから」

 なんだろう。

 思っていたよりもいい人たちが多くて嬉しくなってくる。

 姫様の知り合いというだけあって、いい人たちが多いのかもしれない。

 でも、あんまり一気に言葉が出てくると処理しきれないな。どうしよう。

"《フロニア》すべてに答えていては日が暮れてしまうのではないですか?"

「そうですね。それでは初めて行こうと思います!」

"よろしくお願いします"
"いや、今日はここだけでも十分"
"待て待て。もう少し奥へ行ってくれるというのならその方がいいはずだろう"

 なんだか心配と期待が混じっている感じだなぁ。

 といっても、見せ場のようなものを作れるわけじゃないんだけど……。

「あ、魔獣ですね」

 よかった。
 きっとこういうのが見たかったんだよね。

"ぬめぬめしてそうだな"
"あれは、大きなナメクジ……?"
"あんなのとふんだん戦ってるの!?"

「さすがに初めて見た魔獣ですけど、いつも通りやっていきますね」

 でも、大きなナメクジかぁ。
 直接触るのは抵抗がある。
 剣が効くといいけど……。

「ピュッ」

"いや待ってなんか吐いた!"
"地面が溶けているぞ"
"くらったら終わりじゃないか?"

「でも、当たらなければ問題はないですよ」

"いや、そういう話じゃ……"

 それに、動き自体はノロノロしているうえ、飛距離もなさそう。

 問題は、剣まで溶かされると嫌だなっていう。

 あ、そういえばこの間のライオン男の爪だけもらったんだった。

「これを投げてみますね」

「ピギャア!」

"倒れた!?"

「急所に当たったんですかね。運がよかったです」

 ラッキーパンチ。

 どうやら一撃で倒せたみたいだ。

 触られる前でよかった。

"運で片付けられるものではないような……"
"待て。ダンジョンの魔獣は人が一人で相手できるようなものではなかったはず"
"この軽い感じはどういうことなのだ?"

「えっと、触りたくないですけど、持ち帰りますね」

 さて、収納袋に入れてしまえば戦闘終了。

 でも、あのナメクジと一緒には入れられないような……。

「さすがにさっきの魔獣と一緒に入れるわけにはいかないので、あとは軽く探索して、今回は終わりにしますね」

"いや、もう何が何だか"
"思っていたよりも勢いがすごいのだな"
"ダンジョンが安全な場所のように見えてきました"

「あ、ダンジョンは危険ですからね。僕もギリギリの戦いを繰り返しているので、注意してください」

"ギリギリの戦い……?"

 でも、こうして人の反応を見ながらダンジョンの中を見ていると発見が多い。

 さっきの大きなナメクジにしても、通った後が少し溶けているようだし、体から出ていた粘液まで何かに使えるのかもしれない。

 さすがに食べたりするのは難しそうだけど、分析に任せてみよう。

「それでは、ありがとうございました! またお会いしましょう!」

"ありがとうございました!"
"壮絶ですね"
"いい経験をできた"

「よかったです!」

"《セスティーナ》お疲れ様でした"

「ありがとうございます。見れてましたかね」

"《セスティーナ》はい。大成功です!"

 しっかり届いていたならよかった。

 帰って反省会かな?



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