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【読書】孤独の中華そば「江ぐち」

先日、図書館から久住昌之さんの著書『孤独の中華そば「江ぐち」』を借りてきて読んだ。

この本は、1984(昭和59年)に書かれた『近くへ行きたい、秘境としての近所ーー“江ぐち”というラーメン屋。』という本がもとになっている。この本はその後の2001年に『小説中華そば「江ぐち」』というタイトルで文庫化されている。
そして、2010年にこの本が出版されている。最初の本や文庫本が出たいきさつや、その後の江ぐちなどの情報も盛りだくさんの一冊だ。
著者の久住昌之さんと僕は同じ年齢なんだね。だから、時代の流れなんかもよくわかって、読んでいて楽しかった。
実は、文庫化されたときに読んで見ようと思ったのだけれど、書店でうまく探すことができなかった。まだ本は書店で探す時代だった。

2010年にこの『中華そば「江ぐち」』が出たことは知らなかった。文庫本でも読んでみようと図書館で検索したら出てきたので借りてみたのだ。
本は読んでいないけれど、江ぐちについては断片的な知識があった。江ぐちというお店はなくなったけれど、その後、「中華そば みたか」というお店になって現在も続いているというのは知っていた。テレビ番組で見たのだ。なんの番組かは忘れてしまったが、お店の紹介とともに若い店主とその奥さんや小さな子供を紹介していた。そして、このお店の歴史なども紹介されていて、もともと「江ぐち」という店だと紹介されていて、ああ、あの久住さんの本のお店だと思った。で、そのテレビ番組は、店主の奥さんが、太り気味の旦那さんのために食事などに気を使っているというのが紹介されていて、しかし、どうも旦那さんの体重が減らない。なぜかと思ったら、店主があ店のラーメンをこっそり食っているというもの。その姿をカメラが捉えていたのだけれど、なんともうまそうに店主はラーメンをむさぼり食っていた。その姿が忘れられず、店に行ってみたいと思ったものだ。

さて、本の中身だけれど、最初に出した『近くへ行きたい、秘境としての近所ーー“江ぐち”というラーメン屋。』がなんともおもしろい。というのも、取材など一切せずに常連の友人たちといろいろな想像を巡らせながらラーメン屋の江ぐちが語られていく。働いている人をタクヤ、アクマ、オニガワラなどと勝手にあだ名を付けていく。久住さんのイラストもなんとも素敵。もうない店だけれど、なんだかめちゃくちゃ身近に感じる。行った気分になれる。食べた気分にもなれる。
通ううちに、あだ名を付けた人たちの本名がわかってきたりするのだけれど、それもきちんと取材するわけではなく、偶然なにかの拍子でわかるといった具合だ。
いまの時代、こういう本を書くことは無理だと思う。
というのも、最後の章は、久住さんの日記(2001年から2010年まで)からその後の江ぐちに関するものを抜粋している。これがなんとも興味深い。というのもmixiが出てくるのだ。時代だねぇ。mixiに江ぐちのコミュニティができていて久住さんはそこから情報を得るのだが、便利な半面、わかりすぎてつまらないともいう久住さん。わかるなぁ。

さて、この本を読んでこれまで断片でしかわからなかったものがいろいろわかってきた。どのように江ぐちが閉店し、どのように「中華そば みたか」として復活したかも書かれている。

阿佐ヶ谷ロフトで町中華のイベントをやったときに久住さんがゲストに来てくれたのだけれど、この本のことを少し話してくれた。以来、ずっと読まなくちゃと思い、やっと読めた。おもしろかったねぇ。図書館に返却しに行こう。

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