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医学物理士の所属部署はどこ?

 診療放射線技師なら放射線部、薬剤師なら薬剤部、理学療法士ならリハビリステーション部といったようにコメディカルの病院での所属部署は相場が決まっている。では医学物理士はというと・・・?

 ちょうど先日、2020年医学物理士就労アンケート結果が公表されていたが、それによると回答者の約2割が医学物理士として独立部署に所属しているようだ。逆に言えば残りの8割は医師や技師と同じ部署、つまり放射線科や放射線部に所属しているということになる(それ以外の可能性もゼロではないが一般病院においては極めて稀だろう)。

 筆者の場合、医師と同じ放射線治療科、技師と同じ放射線部、そして医師・技師から独立したいわゆる品質管理室の3パターン全部をこれまでに経験してきた。個人的な感想でそれぞれ紹介していきたい。

1. 放射線治療科所属

 治療医と同じ診療科の所属である。普段の臨床業務ではもちろん、研究や論文の相談などでも医師とかかわる機会は多いので、同じ部署で彼らと距離が近い恩恵は大きい。直属上司は放射線治療のトップの先生になるが、たいていそのような施設の先生は医学物理士のことを十分理解してくれているので仕事上の融通も利きやすい。

 一方で治療以外の技師との交流が手薄になるため、自施設の診断や核医学の状況さえわからなくなりがちで、そのまま放射線治療しか知らない人へ。加えてコメディカルなのに医師と同じ診療科所属という組織上微妙な立ち位置になるため、事務的な扱いに困られることもしばしば経験した。

2. 放射線部所属

 放射線技師と同じ部署の所属。現場では技師と協調して仕事を行う日々、お互いに情報を共有しやすい環境にいることは安全管理面においても利点の1つである。また先とは違い、治療以外の技師とのつながりも作りやすい。研究で診断CTやMRIを使いたい時などにこれは助かる。

 上司は放射線部部長の医師になるケースも考えられるが、多くは技師長であろう。放射線治療や医学物理士のことを理解してくれている技師長であれば問題ないだろうが、そうでない場合は苦労するかもしれない。私の以前の上司技師長は「医学物理士?技師業務しないやつらのことは後回しや」ってタイプの方だったので肩身が狭く、意見も通りにくかった。まぁ技師の長なので技師ファーストになってしまうのは仕方ないことだと割り切ってはいたが仕事はすこぶるやりにくかった。

3. 品質管理室

 医師や技師とは独立した組織に所属するパターン。名称は施設により医学物理室や品質保証室などバリエーション豊富。独立するくらいなのでそれなりの規模の病院で医学物理士が複数人在籍する施設に設置されていることが多いだろう。病院組織図のどこに位置するかによって、上司は医学物理士、医師、技師のいずれかで変わってくるかと思われる。筆者の場合は独立部署でもその室長は放射線治療医であったため、基本的には放射線治療科所属のパターンと同じ感覚であった。強いて言えば独立した部署であることで、院内で医学物理士の活躍をアピールしやすいことがメリットかな。

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 医学物理士という職種の発展のためには諸外国のように独立部門となるのが理想だと愚考するものの、市中病院で国家資格でもないマイナー職種のために新しい部門とポストを設立してもらうのはハードルが高いという現実。そのあたりは大学の偉い先生方のお力が必要になってくるところ。

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