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臨床しながら論文を書く

 前回の研究の話に続いて今回は論文の話。

 例え素晴らしい研究データがそろっていても、そこから英語論文を書いて投稿して受理されるというのは筆者のような凡人にとっては決して簡単ではない。以前帰国子女で英語ペラペーラのルーチン業務一筋系放射線技師の方に「論文なんて書いたことないけど英語できるから楽勝で書けるZE」と言われたことがあるが、学生レポートか何かと勘違いしてはいけない。英語以上に学術的な知識、論文としての論理的な構造とその作法を知らずして論文は書けない。

 それに加えて我々臨床で働く人間は、フルタイム研究者と比べると時間に大きな制限がある。臨床の間に少しずつでも書いていけばいつかは完成すると言いたいところだが、期間が長くなるにつれて気力というものは指数関数的に下がっていく。臨床で飯食ってるから論文なんていいやーなんて思ってしまった日にはその時点でゲームセットである。

 日常臨床をやっている傍らで論文を書くためにいつも意識していることは「いかに短期間で初回投稿までもっていくか」である。筆者のおっさん(自称研究者)の経験則で恐縮ではあるが、そのためのポイントを紹介していきたい。なおプロの先生方には釈迦に説法孔子に悟道である。逆に全く論文を書いたことがないという人はまず良い指導者を見つけてその方に習うことを強くお勧めする。

ポイント1:最初に全体をざっくり書き上げる

 とにかくまずは論文全体をすごく雑な文章でもいいので書き上げる。最初は白紙を埋めていくことが大事で細かい英語表現や数値はいちいち気にしないスピード重視で。走り書きでもIntroductionからDiscussionまで文章を埋めれば、それだけで論文を書いている感が出て次にモチベーションが続く。

 その後2周目でそれらの粗い文章を丁寧に直していく。下書きである程度は文脈ができあがっているので、臨床業務で中座しながらでも破茶滅茶な論理構成にはならないだろう。同時に全体の整合性をとったり内容のブラッシュアップもしていく。

 最初から1文1文完璧に書いていくスタイルだと、臨床業務を挟んで思考が途切れ途切れになるので何を書いていたか忘れる(やる気が続かん)。

ポイント2:最初から英語で書く

 論文の下書きを丁寧に日本語で書き始める人もいるかもしれないが、それは二度手間である。日本語は自分のメモ書き程度で使うくらいにして、怪しい文法やフレーズでもいいから最初から英語で書いて、2周目以降にそれらも含めて直した方が効率はよい。特に日本語で下書きするような初学者はそれに釣られた不自然な英文になりがちなので、いずれにせよお勧めしない。

ポイント3:1つのパラグラフには1つの内容を

 論文を書く上での基本であるが、学生や若手の論文指導をしていると意外とこれができておらず、ここでは何を言いたいの?ってなることがある。各パラグラフで言いたいことを明確にしていれば、論文全体の話の流れも見通しがよくなる。慣れない人は最初にパラグラフの1文目だけを書いていって全体の骨組みを作るところから始めてもいいかもしれない。

ポイント4:グーグル検索を使う

 我々英語非ネイティブが英語文章を書いていると、この単語の使い方あっているのか?こんな表現でいいのか?と立ち止まることがよくある。関連論文や辞書で似たような文章を探してそれを参考にしてもよいのだが、それよりも手っ取り早いのが自分で書いた文章を部分的にグーグル検索することだ。同じ単語や表現を使った文章が多くヒットすれば英文として(おそらく)問題ないと判断できるし、逆に全然ヒットしない場合でも検索候補の中からそれに意味が近いフレーズを見つけやすい。

ポイント5:共著者の意見は取捨選択

 投稿までに共著の先生方に書いた論文原稿を見てもらうわけだが、その中で様々な意見が出てくると思う。ここの文脈はよくわからんからこう変更しろとか、追加でこの話題を入れたらどうだとか、さらには共著者の間で相反する意見が出ることもたまにある。基本的にはこれらは真摯に受けとめて修正を加えるわけだが、全員の意見を取り入れつつ論文の流れを崩さないようにうまく修正するのは時として大変な手間で時間もかかる。共著者にはコメント全部に対応しきれないことを理解してもらい、必ずしも必要でないと思われる意見は参考までで留めておく方が無難である。

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 かくいう私も研究を生業としているわけではないし、一流の研究者の先生方からすれば経験未熟な素人である。noteの記事を書いている時間があるなら論文書けと教授の声が聞こえてきそうである。

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