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臨床経験値の積み方

 先日医学物理の大学院生から「臨床の仕事に自信がなくて将来大学を出たときに心配だ」と相談された。聞くところによると実習で臨床現場に出ても手慣れている人が中心に進めてしまい、学生としては手技は身に着かないし理解も深まらないとか。それは指導方針に問題があるのではと言いたいが、医学物理士の数が多いとか業務が多忙とか大学病院ならではの背景があるのだろう(知らんけど)。

 確かに大学を出て関連市中病院に異動ともなると、そこでは現場慣れした技師に混ざって品質管理者としての責任と即戦力が要求されるので、不安になるのもわかる。大学院でどんなに立派な論文を書いていても、臨床業務が覚束なければ医学物理士の立場もないだろう。

 さてそのような相談を受けた当の筆者おっさんも若手の頃は超絶不器用で全く自分に自信がなかった(今もないが)。そんな私が臨床スキルアップのために実践していたことを紹介しよう。もっとも近ごろは医学物理士養成の大学院やレジデントコースが充実してきている(?)ので、そのようなとこでは当たり前に行われていることかもしれない。

1. 測定の個人練習
 測定の基本はやはり自分で手を動かすこと。機器セットアップから測定、データの解析まで1人で通しでやってみる。実際にやってみると自分が理解できていない点や注意しないといけない点などがよくわかるし、治療装置や測定機器の扱い方も習得できる。可能なら実機が空いている夜や週末などに時間無制限でじっくりやるといいが、測定自体に慣れていないレベルならば最初は心優しい先輩にでもお願いして付き合ってもらおう。

2. 他施設の見学
 施設が違えばそこの治療装置や機器に合わせた自施設とはまた違った測定方法も見られる。測定目的が同じでもこのようなやり方もあるのかと勉強になること請け合いだ。大学なら治療医の外勤先などは見学のお願いもし易いだろうし、自施設とは違う空気の中で短期間でも研修させてもらえればなお良いだろう。外のコネクション作りにもなるのでその収穫は大きい。同様に学会主催の実習形式のセミナーに参加するのもありだろう。

3. 論文読んで知識の肉付け
 研修に来た学生を見ていると与えられたプロトコルでの測定はできるが、それ以上のことはできないという人をたまに見かける。測定方法は妥当か?測定機器の特性は?得られたデータの解釈や誤差原因は?こういったことを自分で考えて判断できないと医学物理士は務まらない。そのためにも論文やガイドラインを読んで得た知識を実戦に紐付けておく必要がある。この手の文献は実習前に予習しておくのも重要だが、実際に現場を経験してから読み直してこそさらに理解が深まるものだ。

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 誰しも得手不得手はあるところだが、簡単に経験値が稼げるメタル狩りのような道はない。いずれも人が見ていないところでも地道にかつ貪欲に努力することが大事かと思う。

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