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放射線治療専門医学物理士

 医学物理士のさらに専門的資格に治療専門医学物理士というものがある。

 その名の通り、放射線治療をメインでやっている医学物理士向けの認定である。詳細は医学物理士認定機構のページで確認していただきたいが、取得するには医学物理士として放射線治療分野で一定年数の臨床経験後、試験を受けて合格する必要がある。この臨床経験には教育や研究だけの期間は含まれないようなので、病院で臨床に従事している人向けの認定であろう。

 認定試験は年1回開催されており、筆記試験合格後、別日程で口頭試問がある二段階方式だ。二段階とはいってもそれぞれ独立して出願が必要なので実質別々の試験である。1次試験の筆記は通常の医学物理士の試験と同時に今のところ全国7会場で実施されているが、2次の面接会場は東京のみなので1次、2次のそれぞれの受験料に加えてそれぞれの交通費なども必要になってくる。さらに認定後の資格更新時には通常の医学物理士の更新料にこの専門医学物理士の更新料も上乗せされるてくるので、いやらしい話で恐縮だが、この認定を取ると決めたなら、それなりの出費を覚悟しなければならない。認定されればその実力が学会の折り紙付きになれるが、現状は学会レベルでそれ以外の個人的メリットはなさそうなので、費用対効果の面で取得するかどうか悩まれる人も少なくないのではないだろうか。

 それもあってか(?)この認定が始まった2019年度初回を除けば、以降の受験者数はかなり少ないようだ。私が1次試験を受験した時の地方会場では片手で数えられるほどの受験者数しかおらず、なんならスタッフの人数の方が多いくらいであった。なんとも寂しい限りである。

 合格率は年で多少のバラツキはあるものの、5~7割程度なので通常の医学物理士試験と比べると高いようだが、いかんせん今のところ過去問は全く公開されていないので、どの程度のレベルで出題されるのか想像しにくいところであろう。→ 2023年9月追記:現在一部公開されています。

 私が受験したときの感覚で言えば、1次試験は出題基準に沿った内容で通常の医学物理士試験と同レベルの問題が半分、より臨床業務に即した問題が半分といったところであった。2次試験も同様で教科書的な基本的知識に加えて実践的な内容を問われる問題であった。まぁゼロ勉強で合格できるほど易しいとは決して思わなかったが、独立して普段の臨床業務をこなすことができる経験値があれば、さらっと教科書的知識の復習に普段自身の臨床でやっていない例えば小線源や粒子線などの範囲の強化、さらに余裕があれば通常の医学物理士試験の過去問をやっておけば合格ゲットは難しくはないといった印象でした(無論個々人の能力によるので保証はできませんよ)。

 医学物理士のほとんどが放射線治療に従事している現状でわざわざこのような専門認定を取得する意味があるのかと言われるといろいろと意見はあると思うが、せっかく学会がこのような制度を作ってくれたので、そこに少しでも貢献したいなら取っておくべきだろう。それがもしかしたら将来の医学物理士の発展につながるかもしれない。

 私としては試験準備のために半ば強制的にガイドラインや教科書を読み直したりする時間をとっただけでも意味があったと思っている。試験がなくても普段から勉強しとけよって聞こえてきそうだが。

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