施設規模による違い
筆者のおっさんはこれまで放射線治療の医学物理士として大学病院やがんセンターといった症例数の多い施設から、県内の人しか知らないような郊外の地方病院まで、いくつかの施設を転々としてきた(させられてきた?)。その経験から勤務する施設規模の大小でその良し悪しを挙げてみたい。
放射線治療をばりばりやっている大きな施設では、何と言っても治療装置が複数台あることが多い。その中には汎用型以外のリニアックがあったり、外照射だけでなく小線源治療も実施していたりする。それに応じて治療計画装置や測定機器の種類も豊富で、1つの施設で医学物理士として幅広い臨床経験を積めるのは最大の利点であろう。これは研究面でも恩恵があり、症例数や機器の多さを活かして銅鉄研究で論文も量産しやすい(それを良しとするかは考え方次第ではあるが)。
対して多くの市中病院の放射線治療室では汎用型リニアック1台での運用というのが一般的である。その中でIMRTをやっていても、例えば症例はほぼ前立腺ばかりなんてこともあり得るだろう。経験値を積みたい医学物理士にとってはそのような施設では物足りなく感じてしまうに違いない。臨床的な研究をしようにも、プログラミングなどの何か秀でた個人スキルか発想力を持ち合わせてないと自施設だけでは難しいと感じている。
その一方で、実際の業務面を見れば、大規模施設は症例数が多くて単純に忙しい。だいたい夕方までびっちり患者照射業務をやっており、それ以降に測定作業を実施することになるので、定時上がりなんてなかなかできない。それに加えて大施設ならではの研究や教育、その他もろもろの雑務もある。私が以前勤めた施設では19時からカンファレンスなんてのもザラであった。いろいろ臨床や研究が経験できていいよねって反面、そのためにはそれなりに身を削らないといけない。
逆に今勤めている地方施設で言えば、日々の照射が定時の1時間前には終わっている程度の症例数なので、そこから測定業務をしても残業になることはほぼない。時間に余裕がある分、論文読んだり、ウェビナー受講したり、はたまた最近では定時ダッシュで帰宅してドラクエを楽しんだりしている。以前は病院で寝泊まりしているヤバい人と陰で言われたこともあった私も、この生活に慣れると最早大学やがんセンターで働ける気がしない。
まぁあとは小さい病院の方がチーム内の人間関係は楽かな。人数が多いとその分相対的にクセのある人が1人くらいはいるので。施設規模の大小関係ないかもしれんが・・・。
もちろん最近は働き方改革なんていうのも謳われているし、この限りではないだろう。個人的には、若手のうちはしっかり経験値の積める施設、できれば複数の施設で修行して、その後自分の考え方やライフスタイル(それと給料)に合わせて働く場所を考えればいいと思う。
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