理工系と技師系の違い【医学物理士】
国内の医学物理士には大別して物理学科などの理工学部出身者と医学部保健学科といった放射線技術学部出身者がいて、巷ではよく理工系医学物理士と技師系医学物理士とか言われたりしている。個人的には同じ医学物理士でこのように区別されるのは如何なものかと思う一方、市中病院の臨床現場でがっつり働きたい医学物理士なら技師系の方が就職面で多少アドバンテージはあると感じている。
個々人の知識や能力の違いはさておき、その最大の違いは診療放射線技師免許を有しているかいないかである。医学物理士自体の資格や博士号といった学位はどちらの出身でも努力次第で取得できるが、技師免許だけは最初から大学に入り直さない限り理工学部出身者ではどうやっても取得できない。
医学物理士として働くのに技師免許が必要なのかと思われるかもしれないが、現状特に国内の一般病院では、医学物理士のポストでもこの技師免許所持を条件としている求人が多い。国家資格であり既に院内地位を確立している技師免許所有者と、超少数派で学会認定の医学物理士資格だけの者では、病院側としては雇用面で前者の方が扱いやすいのだろう。理工系と技師系で母数に大きな違いはあるものの、学会のアンケート結果のデータを見ても、病院で働く医学物理士資格者の実に90%以上が技師免許所有者である(と思われる)。
もちろん理工系出身者の医学物理士の能力が劣っているとかそういうことではないし、臨床だけでなく研究や教育も行う大学病院などではまた話は違うであろう。単純にどちらが良いかなんて話はナンセンスである。あくまで一般病院での働き口で言えば技師系の方が選択肢が多いのが実情ということだけである。まぁこれは法律が変わってそれこそ医学物理士が国家資格化、業務独占化でもしないとどうにもならんような気がするが、果たしてそれが実現する日が来るのかどうか。
さて、こんなことを書いている筆者のおっさんはピュア物理畑出身の医学物理士。職歴を見れば一般病院での勤務が長いけど、技師免許もっていないということで特別困ったことはない。強いて言えば、悲しい哉、学生時代に散々勉強した量子力学や素粒子物理学といった知識は現場では使いどころがない(覚えてもないけどな)。
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