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【専門家が解説】葬儀費用として、故人の銀行口座から預金を引き出してもいい?

はじめまして。
遺産相続手続まごころ代行センターです。

当センターは行政書士事務所が窓口となり、行政書士、司法書士、税理士、弁護士などの国家資格者が集まって、あらゆる遺産相続手続きを代行している相続手続きのプロフェッショナルチームです。

全国対応(海外からも可!)で、生前対策や、遺品整理、墓じまいなど、相続手続きに関連するあらゆる手続きに精通しています。

そんな当センターには、日々様々なご相談・ご依頼が寄せられます。
そのなかでも特に多い「故人名義の預金の引き出し」について、この記事で解説していこうと思います。

ぜひ最後までお読みください。

故人名義の預金を勝手に引き出してもいいの?

例えば、以下のような関係図で考えてみましょう。
亡くなったのは夫(被相続人)で、あなたはその配偶者(妻)とします。

家族関係

一家の大黒柱であった夫を亡くし、これから葬儀費用や当面の生活費などを準備しないといけないあなた。

元々夫婦で一つの銀行口座で生活費等の全てをやりくりしていた場合、キャッシュカードと暗証番号がわかれば引き出すこと自体は可能かもしれません。

ですが、勝手に引き出すことは避けましょう。

その理由をご説明します。

亡くなった時点で故人名義の財産はすべて相続財産

相続財産は、その人が亡くなった時点で所有していた全ての財産が対象です。当然、銀行口座の預貯金も相続財産です。

そしてそれは、相続人全員に相続する権利があります。

そのため、名義人が亡くなった後に引き出すことは、相続財産の一部を勝手に持ち出すことになってしまいます

理由はどうであれ、本来相続財産だった預貯金が一部減った状態で相続の話し合いをするようなことになると、他の相続人(特に縁遠い相続人がいる場合等)から「隠しているのではないか」と疑われてしまうかもしれません。

そのような疑念を持たれてしまうと、必ずと言ってよいほどトラブルに発展します。
(裁判まで発展するかどうかは別として、スムーズに、そして円満に進まないことが圧倒的に多いです)

そうならないためにも、「どうしても引き出したい」という場合は、他の相続人に知らせ、納得を得たうえで引き出すようにしましょう。

そして、いつ、なんの目的で、いくら引き出したのか、メモをしておくとよいでしょう。

※引き出したからといって相続財産が減るわけではありません。
相続税の申告がある場合、引き出す前の金額で申告することになります。

〈補足〉葬式費用は相続財産から控除できる

少し難しい言葉ですが、相続税の話に触れたので、葬儀費用に関して少し補足しておきます。

ざっくり言うと、葬式費用を相続税申告書に記載することで、相続税を減らすことができます。

イメージしていただきやすいようにすごく雑な表現をしましたが、相続税はいろいろな計算をした上で、プラスの財産に対して課税されます。

このとき、葬式費用については、そのプラスの財産から引き算することができるので、結果的にプラスの財産が減り、相続税も減ることになるのです。

葬式費用は相続開始「以降」に発生する費用ですので、遺族が負担すべき費用であり、亡くなった人の債務ではありません。

ではどこまでは葬式費用として認められるのでしょうか。

現在は葬儀形式も多様化し、法律上一律に定義されているわけではありませんが、相続という観点から葬儀費用にあたるのは、葬儀を行うにあたって必ず発生するであろう費用と考えられます。

具体的には

  • 通夜、告別式に際して葬儀会社に支払った費用

  • 通夜、告別式にかかった飲食費用

  • お手伝い等をしてもらった人などへの「こころづけ」

  • お布施など

  • 埋葬にかかった費用

  • 会葬御礼費用

などが該当します。

実際に相続税を申告するにあたっては、領収書が必要になります。
大切に保管する必要しておきましょう。

※通常「こころづけ」「お布施」には領収書がないため、誰にいくら支払ったかというメモを残しておくといいでしょう。


一方、葬式費用に該当しないものとしては、

  • 香典返戻費用

  • 墓地購入費用

  • 法会に要する費用

  • 死体解剖費用

などがあります。

「死体解剖費用」については、遺体の運搬費用は葬式費用として認められますが、解剖費用については葬式費用に該当しません。

葬式費用に該当するのかしないのか、ご自身で判断するのは難しいと思いますが、念の為、領収書はすべて保管されることをおすすめします。

まとめ

家族が亡くなったことにより、葬儀費用や生活費として取り急ぎまとまったお金が必要だとしても、その亡くなった人の名義の口座から勝手に預貯金を引き出すのは避けましょう。

「どうしても必要」という場合は、他の家族や相続人にその旨を伝え、納得してもらってから、引き出すようにしましょう。
そして「いつ、なんの目的で、いくら」引き出したかメモしておきましょう。

亡くなった人名義の預貯金は「相続財産」です。
他の相続人と分割する必要があること、そして相続税にも関係することを覚えておきましょう。


当センターは、あらゆる相続手続きの代行をしております。
相続のこと、生前対策のこと、お困りの際はお気軽にご相談ください。

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