キーワードは「公平に反する」と   「軽減の意図」

先週の19日に
判決が出ました。


私が気にしていた、
相続不動産の評価をめぐる争い
に関してです。


結果から言うと、
納税者の敗訴が確定し、
追徴課税が適法と認められました。


新聞などでも取り上げられたので、
目にされた方もいらっしゃるとは
思いますが、
最初にこの争いの経緯を
かいつまんでお伝えします。


存命中に2物件、合計約13億円を、
銀行の融資を利用して購入。


その後、お亡くなりになり、
相続人が相続税の申告をする。


路線価などを使い、2物件の
相続税評価額を
計算すると、
約4分の1くらいになった。


評価額<残債、となり、
他の財産とも合計した所、
相続税の基礎控除額内と
なったため、
相続税は0円と申告。


税務署側は、その評価額が
低すぎる、ということで、
財産評価基本通達6項に基づいて、
不動産鑑定評価を行った所、
2物件の評価額は
約12億円となる。


それを踏まえて、再計算すると、
納税額が発生し、
追徴税額の支払いを求めた。


この
納税者が計算した評価額

後出しじゃんけん的に
税務署が出した鑑定評価


どちらを、この申告で採用するか?


というのが、今回の裁判の
おおまかな経緯・争点です。


私たち納税者側からすると、
「路線価」や「固定資産税評価額」
のような、公然のルールを用いて
申告をしているのだから、
後出しじゃんけんはないだろう・・・
と、感じてしまします。


税理士先生の立場を考えた場合、
ルールに則って申告をした内容が、
税務署側の後出しじゃんけんで
変わってしまう可能性がある場合、
どうやって今後申告をすれば
良いのか?という先生泣かせの
判決でもあったように感じました。


ただ、今回の判決理由を読むと、
決してルールが否定された
訳ではありません。


良く出てきたキーワード的な
言葉だな、と私が感じたのは、


「租税負担の公平に反する」





「租税負担の軽減を意図」


という言葉です。


今回のケースの場合、


・金融機関への反面調査で、
 物件を購入するときの
 融資目的に、「賃貸不動産
 への投資が、相続税の節税目的」
 という内容が
 稟議書に記載されていたことが
 判明してしまった。


・誰もが、同じようなやり方で
 賃貸不動産を購入できる
 わけではない。


・近い将来に相続が発生する
 ことが予想され、
 相続税の負担を減じることを知り、
 期待して物件の購入を行った。


これらの事情や状況を鑑みて、
今回の2物件購入したことで、
相続税が発生しない
申告となった結果は、
公平に反し、節税の意図があった
ことが客観的に明らかだから、
納税者敗訴になったのだと、
私は感じました。


つまり、ルール通りに申告した
ことがダメだったと言われている
訳ではない、ということです。


節税に関しては、
今回の相続税に限らず、
所得税や法人税など含めて、


「やりすぎ注意」


ということ、


そして、やりすぎと見受けられる
場合、調査対象に抽出される
可能性が高い。


とは言え、東京など都市部の
不動産投資、大家物件の場合、
相続税評価額を考えると、
路線価や固定資産税評価額を
ベースにした場合、評価額が
2分の1とか3分の1になるケースは
往々にしてあります。


どのような場合に、
財産評価基本通達6項が
適用される可能性があるのか、
という基準が何も示されない
ままだった、というのは、
腑に落ちないな、とも感じました。


今回の約4分の1に評価額が
下がったのが、もし租税負担の
公平に反するのであれば、
いくらまでなら良いのか?


この結果を踏まえて考えるなら、
そもそも路線価や固定資産税評価額
というものは、
なんのために存在するのか?


そんな、あれこれと、
いろいろな想いを抱きながら、
今回の判決を私は読みました。


あなたは、今回の件を
見聞きして、何か感じたこと、
思ったことはありますか?

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