ジョナサン・キャロル『死者の書』

2024/03/05
【ネタバレを含む感想です】

 前回読んだ『月の骨』に続いて、ジョナサン・キャロル『死者の書』を何十年ぶりかで再読。
 ラストシーンだけは鮮明に覚えていて、その唐突さに驚いたことも記憶している。ただ、何がどうなってそのラストシーンを迎えたのか、ストーリーや設定を何一つ覚えていなかった。改めて読み直して、こういう小説だったのかとバカみたいな感想。

 『月の骨』と比べると、すこしストーリー展開が単調なのと、語り手も含めて登場人物にあまり魅力を感じなかったかな。特に主人公は自分の父親への屈折した愛と畏敬に縛られていて、それがサクソニーやアンナへの不誠実な行動や、セックスで女性を支配しようとする幼稚な傲慢さにつながっているように思えた。

 ストーリー面で言うと、物語の核となるゲイレンの住民たちの真相が明かされるくだりが、ありえない設定の割にあっさり受け入れすぎているような印象を受けた。
 まあ、もともと天才作家マーシャル・フランクの魔術的な才能に心酔していた主人公だからなのだろうけど、個人的にはあまりマーシャル・フランクの作品の力のようなものはあまり感じられなかった。

 ちょっと厳しく言いすぎたけど、マイナス要素はデビュー作ゆえということもあるだろうし、いつか未読の後期作品も読んでみようかな。


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