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みうらじゅん・いとうせいこう『見仏記 道草編』

10月5日読了
みうらじゅん・いとうせいこう『見仏記 道草編』

 見仏記シリーズの中ではこれが最新の巻になるのかな(2018年刊)。仏像以外のものにも興味の赴くままに寄り道しながら観光することを全面に押し出した内容。
 中国の峨眉山に登り猛吹雪に襲われて遭難しかけたお話は、大手町の日経ホールで行われたトークイベントで、直接聞いていた内容だった。

 最初のうちは寺社を取り巻く山の形であったり、磨崖仏であったりと一応、仏像・仏教と関係するものに道草していたけど、最終的には中国でパンダを見るだけの回もあったりして、還暦前後のおふたりが仲良く旅しているのが微笑ましい。

 個人的には出身地の群馬県高崎市にも来訪されているのが嬉しい。信州の見仏のついでに立ち寄ってみただけっぽいし、あまりピンとくる仏像とも巡り会えなかったようではあるけれど。

 それから恐山も行ったことのある場所なので、バスに乗って向かう道すがらの様子などが思い出されて懐かしく面白かった。みうらさんが霊場アイスを食べたことがないらしいのはちょっと意外。よもぎ味という珍しいフレーバーがあって、なかなか美味しかった。

 おふたりの年齢や健康状態にもよるのかもしれないけれど、大分、青森と土着的な信仰の生々しさに恐れや怯えを強く感じている様子なのが印象的。大分で偶然見つけた川沿いの神社に貼られていた張り紙の「土足でぞうど」という誤字にさえ怯えているのが笑いつつも、すこし背筋が寒くなる冷気も伝わる。

 弘前の長勝寺というオシラサマを祀ったお寺が最も興味を惹かれた。円山応挙の幽霊画を所蔵していたり、とてもそそられる。ここでも土着信仰や心霊スポットとして噂になっているくらいの雰囲気に圧倒され、逃げるようにすぐ退出してしまわれたようだけど、もうすこし詳しく見仏してほしかったな。テントサウナとスパイスカレーのデトックス会を主催するような開けたところもあるお寺らしいし。
 まあ、そのへんはこの本をきっかけに読者である自分がいつか見仏の旅に出ればいいのか。いつか行きたいな、弘前。


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