頭の中を曝け出す、色々

『リアリティが先か、物語が先か』①

19歳で演劇養成所なるものに入った
高校を卒業してイタリアへ留学して帰国して
その時は「上手い=リアリティ」だとボンヤリとだけど思ってた
もちろんメソッドとか知らなかったし、稽古したら上手くなるもんだと盲信してた
*盲信する事は或いは一つの才能だという事実は置いておく

演技力というものについて書こうと思う
演技力とはなにか?
表現力とはなにか?
魅力と個性とはなにか?
テーマは無限にある、人間がやるものなんで
だからこそ定義は必要だと思う
定義が必要なのは僕が「教える」人だからだ
実際、野田秀樹だかが言うように
「上手い人は元々、上手い」
が、現実だと思う
一方で「努力しても意味ない」とは思わない
なら、なにを学んで、なにを目指せば


演劇で食べられるようになる


のだろうか?
演技力という観点で書くけど
結局、精神論とマーケティングも書くことになる
長くなるから一回で公開出来るか怪しいもんだ
でも、とにかく書こう


まず最初にずっと同じ事をレッスンと稽古で言い続けてるのは
効果的であるように心がけてください
ということ。これは誤解を招く事が多いんだけど「ハイインパクトに演じて下さい」という部分と、違う部分がある。大事なことは幾つかあるんだけど

1.一回しか出て来ないものは記憶されにくい
2.絶対、という感覚は作り手の思い込みでしかない
3.相対的な考え方を出来るようになって欲しい
4.台詞に頼らない、台詞を信じてもらおうとしない
5.物語の進行と無関係に時間を自由に進行させたい

だいたい、この5つくらいが演劇における効果性のポイントだと思っていて、これは演出としての作品構成とは別に役者さんの演技力による恩恵によって成り立ってるものもあるわけです。ただしあくまで恩恵です。何故なら演技力というのは不確定要素の多いもので段取りが同じでも結果が違うことは往々にしてあることに加えて「お客様」にかなり左右されるものであるので、全てが確実ではない、常に不安定である事を認識しないといけないものなのです。だからこそ「効果」か「流れ」のどちらかを稽古で確立させ同パターンの反復練習によってある程度の確実性を見込むのが稽古である。
では、1から順にどんなものか追っていこうと思う。

1.一回しか出て来ないものは記憶されにくい

これ。
意外に難しくて現場で「?」ってなる事が多い。
例えば
「今日、地球が滅亡します!」
「7月12日13:46に地球が滅亡します!」
だと、覚えやすいのは前者で後者は一回では覚えにくい。これは誰がみても分かりやすいと思います
この、覚えやすい時に油断が生じてしまうのを防ぐために一回しか言わないなら、この台詞はインパクトのあるキャラにインパクトのある言い方をさせるのが理想だと思うのです
そうなると、リアリティもクソもない。もし、リアリティの必要ないファンタジーなお芝居ならそれもいいでしょう。でも、そうでないなら、後者の台詞を何度か登場させる方が覚えにくい事が上手く作用して逆に効果的に記憶させられる台詞となります。
このことを役者さん自身が台本全体を通して認識してより自然によりインパクトを残してお客様に記憶させられるかは物語を構成する上で不可欠なわけです。

2.絶対という感覚は作り手の思い込みでしかない

作り手というか最初の段階では作家さんですね。つまり「主人公は生まれながらに貧乏であった」みたいな設定で書かれた台本、お客様には「生まれながらに」の部分は伝わりにくい。もちろん条件によりますが。その時に状態表現と対比表現が必要とされる。これは台詞とは無関係に対をなすものが現れた時にその人物のオリジナルのアクションかリアクションが必要だということです。要するに「これはリアルに」みたいな思い込みは観客には通用しなくて、アニメやドラマなどの映像作品では説明、もしくは説明に値する映像を流せば共有できるが、舞台ではその「説明」自体が難しい。

3.相対的な考え方を出来るようになって欲しい

朝のある作品には夜は来る、老いたるものが出て来たら、若い者は出て来る、後悔があれば希望はある。この相対性を理解して、その最も極端な部分からアプローチを始めて、一番いいバランスの所でキープ出来る事が舞台の難しい所であり、面白いところ。

4.台詞に頼らない、台詞を信じてもらおうとしない

これ、よく言うんだけど
「夜中に目を覚まして、コンビニに出かける。隣には恋人が寝ている。コンビニから戻ったら、住んでるアパートが火事、どうする?」
って時に、水をかぶってアパートに入ろうとするが、感情=行動の一番シンプルな心理。でも役者って仕事をしてる人の多くは「いま助けに行くぞ!」って台詞を練習してる。これで、お客様に対して「助けたいという気持ちや愛を信じてもらおう」としてる事が多くて「はぁ?」ってなる。台詞なんて幾ら上手く言っても台詞でしかない。演劇は行動芸術だということ。

5.物語の進行と無関係に時間を自由に進行させたい

はい。何書いてあるんでしょうね、これ。わからないでしょうね。物語の時間なんてのは演劇は平均で110分しかない世界。そこを飛び出せるか、ディテールを掘り起こせるか、その興味と好奇心を継続させられるか、そこが大事。つまりテンポよく見せ切っちゃうのでなく、考える余白と余裕と、退屈とテンポの悪さを内包して物語を進行させる事で、お客様が自由にその世界の中に存在しているという錯覚を起こさせる、そこにリアリティを超えた楽しみがある。

と、ここまでを踏まえて、ここから先をまたの機会に書くし、ここから先だけでなく、このどれかに特化して、書こうと思う。


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