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小瓶に光が灯った日〜『シロさんは普通になりたい』を読んで

漫画家・白田シロさんによる初の書籍『シロさんは普通になりたい』。
ブラック企業に勤めながら、心身共に疲弊してしまった白田シロさんが心の内にある空っぽの「自信の小瓶」と向き合った8年間の軌跡が赤裸々に描かれたエッセイ漫画である。
作者の白田シロさんとはひょんな御縁がきっかけで、ありがたいことに何度かお話させていただく機会もあり、今回の書籍化の発表を聞いた時は自分のことのように嬉しく感じた。いや、そりゃあ勿論シロさんご自身が1番嬉しく感じていることは間違いないのだが…そんな隠れシロシタン(隠れキリシタン的な?)な私がライターのはしくれとして、忖度無しに率直な作品の感想をnoteに綴っていきたい。

※以後、作品の一部ネタバレを含みますのでご注意の上お読み進めください。

「シロさん読んだよ」ってシマエナガも言ってました。

承認欲求モンスター、爆誕

入社した会社がかなりのブラック企業だった白田シロさん。心身共にすり減るような日々の中、唯一の心の拠り所は「推し」。
推しを推している瞬間だけは嫌なことを忘れていられる。
推しの姿を漫画に描いてSNSにアップし、僅かないいねを貰って承認欲求を満たす日々。。

白田シロさんは作中で、中学時代に不登校になった経験を明かしている。クラス内でいじられキャラになってしまい、次第に学校に通うのが辛くなってしまったそう。
思い返せば自分も中学時代、うまく学校生活に馴染めずに人の顔色ばかりを伺っていた結果、心身のバランスを崩して学校に行くことが出来なくなってしまった。人が怖かったし、閉じこもって逃げている自分のことを「ダメ人間」だと感じていた。もしかしたら当時の白田シロさんも同じ思いだったのかもしれない。

多感な時期のつまづきは、その後の人生にも少なからず影響を及ぼすのだろうな、ということを自分自身の半生も振り返りながら考えさせられていた。
まるで呪いのように褒められたい、もっと人から認められたい、そんな想いがこびりついて離れない。作中で描かれるシロさんの表情には思わずドキリとした。承認欲求モンスターに支配された時期を過ごした人は、少なくないのではないだろうか。

SNSを開けば、そこかしこにハートの山を積み上げた有名人やキラキラした人達で溢れている。分かりやすい輝きに目をくらまされ、さもそれを得ることが唯一絶対の存在証明のように思えるこの世界はどこかおかしいんじゃなかろうか、そんなことを作品の序盤のお話から考えてしまった。

普通って、なんだろう

ありふれた「普通」という言葉に苦しめられる経験。これもきっと多くの人が感じているのではないだろうか。
本作のタイトルも『シロさんは普通になりたい』という「普通」が1つのテーマになっていることは想像に難くない。表紙の「普通」の文字だけピンクで色付けされているのだからきっとそうに違いない。

普通になりたいと考える人の大半は「みんなと同じことを当たり前にできるようになりたい」という感情が先行していると感じている。それなのに、周囲は簡単にできていることが自分には出来ない。それがどうにも許せない。

誰かの期待に応えなければ。苦しいけど自分がやるしかない。私の能力が低いからいけないんだ。これは会社で1番出来ない自分への罰なんだ。
沢山の「やらないといけないこと」や「やるべきこと」に押しつぶされて、自分のやりたいこと、やってみたいことに辿り着けない人生は、辛い。
自分が本当に望んでいること、自分が一生一緒にいることになる自分という人間に注いであげたいものはなにかを丁寧に考えようとするきっかけになる。そんな感覚を本作からひしひしと感じ取ることが出来た。

好きを集めていくことで自分自身を好きになる

白田シロさんが心にひっそり持ち続けている「自信の小瓶」。最初は誰かから与えて貰うことでしか小瓶を満たすことはできない、と考えていたそう。
やがてシロさんは自分が心の底から好きだと思えたことだって小瓶に詰めることができることに気づく。
他人に期待せず、心から「これは好きだな」と思えることを、大事に大事に小瓶に詰めていくこと。そこに他人の目線や価値観は存在しない。自分が満足できる、大切でかけがえのない好きのカケラを集めていくこと。
それは自分自身のことを少しずつ好きになっていく作業なのだと思う。

もっとハードルを下げて生きていこうと思えた夜

突然ですが「である調」で書くのに若干疲れてきたのでここからは「です・ます調」で書かせていただきますね。である調ってなんだか固くて疲れちゃうんですよね(じゃあ最初からですます調で良かったのではという突っ込みはどうかお控え下さい)。

本作の最後に、白田シロさんが紆余曲折を経て辿り着いた様々な「好き」が所狭しと散りばめられている描写に出会うことができます。
虚無から始まり、最後は好きが詰まったサラダボウルで幕を閉じるという、ある意味で感情のジェットコースターに振り回されていたような感覚にも陥りました。

誰の心の中にもある心の小瓶。読めばほんの少し強くなれたような、そして前より自分に対して優しくなれたような。そんな優しく自分の背中を推してくれるような作品でした。

本記事ではXで #シロさん読んだよ  のハッシュタグで作品の感想を呟かれていた方々のリンクを幾つか貼らせていただきました。
シロさんが丁寧に丁寧に紡いでくれた「好き」の結晶のような本作品を全国各地で受け取った人達の声。私のようなしがないパカライター(?)の独り言なんぞ最早そこまで意味を持たず、全国にこれだけシロさんの作品から温かくて大切な感情を得られていること、そんなムーブメントを感じてもらいたくてそっとリンクを貼らせていただきました。

そして何かのご縁でも単なるタップミスでもこの際なんでも良いのです。このnoteを読んでくださったそこのアナタ。『シロさんは普通になりたい』を読んだ感想を共に語らいませんか?全力全開承認欲求モンスターの私と熱くトークしましょう!(作品からの学びはどこへ?)
そしてそして最後の最後ですが白田シロさん、素敵な作品を届けてくれてありがとうございました!いい年したおじさんですが、読んでて最後ちょっと泣いちゃいましたよ!素敵な作品なのでみんな読んで〜!




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もり氏
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