ナイジェリア国鉄旅 7
第6章 ミナ〜カドゥナジャンクション
Minna駅夜22:30。やばい。どうしよう。大の圧力がやってきた。列車の発車まではあと20分くらいか。トイレはない。わずかばかりの列車の灯りで照らされるホームを離れると完全なる闇だ。選択肢は次の4つ
①ホームで野糞る ②列車の反対側の退避線の線路で野糞る。③誰もいない奥の真っ暗な所で野糞る。④気合いで我慢する
③は治安的に危ない。サファリの動物も排泄中は狙われやすいと聞いたことがある。安全面から絶対にNGだ。②は列車の明かりに照らされて、乗客から丸見えだ。他に見るものがないから多くのオーディエンスに見守られることになるだろう。そうすると①で他のお客さん男女と一緒に混ざってしてしまうのが良いのか?しかし駅のホームを汚すのは道徳的に相当な抵抗がある。エジプト味の素法人長である伝説の先輩はこの場合どの選択肢を取るんだろう?他にもっと良いオプションがあるのだろうか?こんなことで葛藤してるようではレジェンドにはなれない。とりあえずピュアウォーターを2袋購入し、便意の様子を見る。座ったり歩いたり、波に合わせて抵抗を続けてるが、エジプトのレジェンドの顔が頭から離れない。
ちょうどその時、3600Lの燃料タンクに重油を満タンにした気動車が汽笛を鳴らしながら戻ってきた。あ、やばい。連結したらもう出発だ。今朝のOFFA駅で給油した後の連結時は、車内にいてかなりの衝撃を感じたので、その連結シーンは見たい。先頭車両まで走っていくと、ちょうど気動車がゆっくりと近づいてくる所だ。気動車のライトに照らされて、あたりが明るくなると同時に、自分の長い影が映し出される。ビデオモードON。人の歩く速さで衝突するように連結するのかと思いきや、非常に慎重で拍子抜けのスムーズ連結だった。早速車内に戻り座席に座った途端汽笛が聞こえ、列車は22:42 Minna駅を出発した。便意もどこかに消えていた。
2回目の夜になった。またまた日付の変わった0:43、Gwada 駅を過ぎると急に列車の走行音が変わってきた。やけにスピードが出ている気がする。慌ててMapsMeで速度を確認すると、なんと時速64kmも出ている。窓の外は完全な闇で、スペースマウンテン状態。何も見えないので辺りの様子がうかがい知れないのだが、補修した綺麗な線路になったのだろうか。
深夜1:53、あたりが騒がしくて目を覚ますとそこはKuchi駅だった。声の主はヤムイモ売りのおばちゃんの大群で、巨大なヤムイモを5本くらい入れた洗面器より一回り大きい銀タライを頭に乗せ、窓越しに売ろうと必死でアピールしてくるのだが、残念ながらこの車両の窓は開かないので少々気の毒な気がする。時間も時間なので乗客は眠くて買う気はなく、外では大勢の売り子が叫んでいる。きっと4時間以上遅れている列車をずっと待っていて、やっと来たと必死なのだろうがそれにしても時間が悪すぎる。列車は2:12に出発すると、いつもの時速40kmに戻っていて、その後2度とスピードアップすることはなかった。
深夜3:53、Gogwada駅到着。車内はもう誰一人として起きていない。ちょっとストレッチをしようと外に出ようとしたが、さっきまで誰もいなかったデッキがいつのまにか沢山のおばちゃんで埋まっていて外に出ることができない。足の踏み場がないとはこのことだ。失礼ながらこの前ガラパゴスで見たアシカのコロニーを思い出してしまった。どっから来たんだ、おばちゃんたち?超満員の2等車にいるよりは、エアコンの聞いたデッキ床の方が快適なため、こっそりと場所を移動したのであろう。
しようがないので席に戻り、終着駅KANOの到着時間を推定してみた。
ここまで832km、かかった時間は36時間、ということは平均時速は23km。残り294kmなので、単純計算であと13時間かかる計算だ。現在深夜4時なので、到着は午後5時くらいだろうか。うーむ微妙だ。当初乗ろうと考えていた15:00発、そして次の17:30発のカノからラゴス行きの飛行機にはどうも乗れそうにない。そうするとその次は夜21:00発の最終便だ。直ちにネットで調べてみると、ショッキングなことに最終便は満席でチケット販売が終了していることがわかった。さてどうしようとあれこれ考えているうちに、列車は5:13 Kaduna Junction駅に到着した。(903km 80% 37時間)