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遊歩|Sense of Wonder Trail

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地球上に形成されたもの、そのダイナミクスを見聞するため各地を旅しています。自然物と人工物、ジオグラフィーとジオロジー、湧水と生き物、ヒトが生み遺したもの、カルチャー、境界、そして…
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記事一覧

009 乾いた海、山に棲む象 〜前編〜

山に吹く風が、一悶着も二悶着もありそうな気配を醸し出す。 この冒頭に遭遇した時、私はいつか此処へゆくだろうという予感がした。 Montserratへゆく、そして出会う私は細かく旅の計画を立てる方だけれど、それは計画を練ること自体を楽しんでいるのであって、実際には予定通りに行動しないことの方が多い。一通りの計画はシミュレーションのようなもので、何事もなくその通りに進めばスムーズに事が運ぶ。一方で新しい道筋が見つかったなら辿ってみればいいだけのことで、ここへ来たからこそ見つけ

008 X'mas in Barcelona

バルセロナ近郊の山中にあるモンセラート修道院は、黒いマリア像で名が知れている。どちらかと言うと併設の図書館の方に興味があるのだけど、そちらは一般には公開されていないだろうか。 クリスマスの連休中はバルセロナ市内のスポットがこぞってcloseとなるため、この機会に山でも歩きに行こうかと思い立った。そのついでに修道院にも立ち寄ればいい、と。 観光案内所にて「モンセラート周辺のハイキングルートマップはありますか?」 「ここには無いよ。いつ行くつもりなの?」 「明日(クリスマス)」

006 流水花葬 - Future Textbook -

この夏、梅花藻を見に行った。 とんだ思いつきで福島県の猪苗代湖を自転車で一周して、その道中に梅花藻を眺める時間を設けた。 星の数ほどあるやりたいことが一つ、それをきっかけに言語化以上・具象化未満となったので此処に書き出しておく。 そうすれば実現への道が生ずることもあるかも知れない。 猪苗代湖とその界隈日本で4番目に大きな湖(面積:約103平方 km、深さ:約93 m) 水質:弱酸性の貧栄養湖(透明度が高い) 生態系:国指定天然記念物ミズスギゴケの群落、白鳥の飛来地

002 世界で一番、着陸が難しい空港|Buthan

スワンナプーム空港で待ち受けていたのは白い雷竜だった。 手に玉を握りしめ、硬い鱗に覆われた肢体をうねらせて、飛び立つその時を今か今かと待っている。幸せの国へと誘うこの白い雷竜は、一体どんな空を魅せてくれるのだろう。 Druk Yul雷竜の国日本人が|Japanを『日本(日出ずる国)』と呼ぶように、ブータン王国の人々も自国Bhutanを『ドゥック・ユル(雷竜の国)』と呼ぶ。 ブータン唯一の国営航空会社Druk Air(ロイヤルブータン航空)の尾翼には迫力のある雷竜をあしらっ

001 あの世に最も近い場所|青森・恐山

夏。遠路はるばる、北へ。 JR大湊線・下北駅で乗り換えたバスに揺られ、ひとり恐るる山を目指した。 恐山という山はないまさかり型の下北半島、そのど真ん中。一帯の活火山を総称して "恐山" と呼ぶ。 その中央に広がる宇曽利山湖は『蓮華八葉』なる八つの山(剣山、地蔵山、円山、鶏頭山、北国山、屏風山、大尽山、小尽山)に囲まれており、これらは外輪山を形成する。つまり恐山の正体は "カルデラの縁" だ。 少し外側に位置する朝比奈山と釜伏山も恐山の一部である。 カルデラ 火山噴火によっ