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BUMP OF CHICKEN『ロストマン』が教えてくれること

「人生は選択肢の連続である」

昔、バカリズムさんが脚本を書いていた「素敵な選TAXI」というドラマでこんなことを言っていた。

ドラマは、後悔している選択肢の場面にタイムスリップし、それを変えて人生をやり直すという話だった。
しかし、ドラマ内では結局選択肢を変えず、元の人生を過ごすという登場人物も多かったように記憶している。
これが正に藤原基央さんが「ロストマン」という曲で表現したかったことではないだろうか。

「ロストマン」は人間の後悔・不安という感情に焦点を当てているように感じる。それが歌詞にもはっきり表れている。

「破りそこなった手作りの地図 辿った途中の現在地 動かないコンパス 片手に乗せて霞んだ目凝らしている」

BUMP OF CHICKEN 「ロストマン」より

「君を失ったこの世界で僕は何を求め続ける 迷子って気づいていたって気づかないフリをした」

BUMP OF CHICKEN 「ロストマン」より

これこそが正に”後悔”である。
今の現実で迷子になった「僕」は、持っていた「手作りの地図」ではもう進むことができない。
現在地も分からない。
信じて来たはずの「地図」をもう信じられない。
=歩んできた道のりが正しいかも分からない。

歌詞にはっきりと書かれてはいないが、
ここにはどうして他の道を選ばなかったのか、
もっと正しい地図で、
もっと正しい道のりで、
進むこともできたのではないか、という後悔が隠れているように感じる。

これが藤原基央さんの真骨頂であるリアリズムの表現だと感じる。
この曲を藤くんが書いたのが23,24歳の時。
丁度今の私と同年代の頃だが、この年齢は人生の転換期を迎えやすいと思う。
学生から社会人になり、今までの常識が通用しなくなってくるころ。
今まで積み上げてきた何かを変えなくてはいけない時。
そんなこの年代特有の悩みを包み隠さずリアルに表している。(もちろんどの年代にも当てはまる悩みだが)

だが、この曲の神髄はそんなものではない。
リアルを受け入れ、"後悔”ですら自分の力で正しい物に変えてしまおうという力強さすら感じる。

「強く手を振って君の背中にサヨナラを叫んだよ そして現在地 夢の設計図 開くときはどんな顔」

BUMP OF CHICKEN 「ロストマン」より

この時点で1番サビとは全く異なる。
"後悔"にサヨナラを告げ、「手作りの地図」は「夢の設計図」へと変化する。

「これが僕の望んだ世界だ そして今も歩き続ける 不器用な旅路の果てに正しさを祈りながら」

BUMP OF CHICKEN 「ロストマン」より

ここで自らの"選択"を正しいものだと信じ、進み続ける。
ここの歌詞だけでもかなり強いメッセージを感じる事ができる。

"信じる"という行為はかなり難しい行為であると思う。
私は何かを信じています、と言い切れる人はどのくらいいるのだろうか。
ましてや自分がした行為を信じる事ができるとは、どんなに強い人間であるか。

だけど、信じるだけで終わらないのがこの曲の凄い所。

「強く手を振ってあの日の背中にサヨナラを告げる現在地 動き出すコンパス さあ行こうかロストマン」

BUMP OF CHICKEN 「ロストマン」より

そしてついに動きだす「コンパス」(=生きる指標のようなもの)

「破りそこなった手作りの地図 シルシをつける現在地 ここが出発点 踏み出す足はいつだって初めの一歩」

BUMP OF CHICKEN 「ロストマン」より

現在地が分からないなら、ここを現在地にすれば良い。
今までの道のりを後悔するのではなく、
今の自分を信じ、これからの道を進んでいこう。

なんて強いメッセージなんだろうか。

「君を忘れたこの世界を愛せた時は会いに行くよ 間違った旅路の果てに正しさを祈りながら 再会を祈りながら」

君="後悔"のことは忘れよう。
もしかしたら今までの道のりは間違っていたかもしれない。
だけどそれこそが正しい道だったかもしれない。
もしそれも全て愛することができたなら、
認める事ができたなら。
(もうロストマンになることはないだろう)

ここでやっと、少し弱さが見える。
「僕」は"後悔"をしている事実を認め、
そこから一旦逃げる事で、自分の悩み(迷子になっていること)を解決しようとしていたことに気付く。
つまり今までのメッセージは自分を鼓舞するために言い聞かせていたものだったのだと気づかされる。
(それでも十分強いのだが。)

あくまでリアルだ。
自分の悩みとリアルに向き合い、
何の形であれ、前を向いて進み始める。
そういう意味でもすごく強い詩だ。


自分もこんな風に悩みと真剣に向き合い、
前に進み続ける強さを持った人間になりたいと思う。

この曲はこれまで僕の人生を幾度となく救ってくれた。
そしてこれからもそれは変わらないだろう。
この曲を大好きでいられる自分であり続けたい。

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