絵師の立場から言いたい「反AI」の人の態度について

2024/3/5 最後に追記をしました。

こんにちは、この記事では「絵師の立場から反AI活動をしてる人(の中で特に先鋭化した人達)へ言いたいこと」をつらつらと書いていきます。
「反AIはもう負け戦」「しかし反AIはある意味勝っている」そんな話です。
最近の生成AI関連の話題に関して、AI推進派の人にもAI反対派の人にも両方に読んでもらえたら幸いです。

誰に向けた記事か?

最近の生成AIに関して賛成or反対の意見を持っている人。
また、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に関するパブリックコメントの結果について」を(流し見でもいいので)ある程度読んでいることが望ましいです。

筆者はどんな人間か?

「絵師から言いたいこと」という内容なので、当然お絵かきを嗜んではいるのですがイラスト以外にも別ジャンルの創作もかじっており、
イラストでも別ジャンルでも「有償依頼等で金銭を貰ったことがあり、一応企業案件もやったことがあるが、
それだけでは生計は立てられるほどではない」程度の実力です。
普段は創作とまったく関係のない法律関係の仕事をしていて、副業と趣味を兼ねて創作活動をしています。

筆者のスタンスは?

将来的に安心して生成AIを使えるなら、自分の創作に取り入れていきたいが、現状まだAI生成には不安が残るので生成AIを使用していないし、推進もしていない。
現状の生成AIの論争を一歩離れた状態で眺めながら、なるべく中立的な立場でありたいと思っている。
…が、最近の反AIの一部の人の言い分が酷いので、それに辟易としている。
という状態になります。

本文

この記事で伝えたいこと

ここまでの前提の文章を読んで「なんだコイツ?将来的に生成AIを使いたい?学習は適法?敵か!」
そう思った生成AI反対派の方もいるでしょう。
でも私も一応絵師の端くれ。絵師の人の気持ちはある程度わかります。

しかしこう思う人もいるでしょう。
「生成AIに全面反対しないなんて絵師なんて認めない」
「他ジャンルの創作も兼業してるんでしょ?片手間程度の絵師が偉そうに」
「てかそれで食っていけなくて創作以外の仕事に逃げたんだろうが」
これらはクローズドな場面で専業絵師の方に実際言われた言葉です。

今日はね、その選民意識を捨てましょう(そういうとこやぞ)。という話です。

一部の絵師は
「絵師と絵師から生み出されるイラストは世界で一番素晴らしく、何よりも優先され、保護されなければいけない」
「絵師以外のクリエイターはすべて絵師の下位互換であり、絵師は創作者の頂点にいる」
そう思ってるフシがあります。
実際に思ってなくても、周りにそう考えてると取られてもしょうがないムーブをしています。
反反AIが指摘する「イラスト生成AIは否定するのに、翻訳AIは使っていいの?」に対して
「翻訳は創造性ないからwクリエイターとは認めない」みたいなのが代表格です。

実際に無から作品を生み出す絵師はとても素晴らしいし、私も絵が描けることを誇りに思っています。
でもそれは絵師だけが素晴らしいのではなく、絵師も、音楽家も、動画作成者も、翻訳者も、プログラマーも、
それこそコンビニの店員も、ゴミ清掃員も、それぞれが違う素晴らしさがあります。

「いや、無から有を生み出せる絵師は特別だ。汚らしいゴミ清掃員と一緒にするな」と思う人はここでこの記事を閉じてください。貴方に言うことは何も無いので。

「絵師は素晴らしいが、何よりも優先されるべき存在ではない」
「全ての職業はそれぞれ素晴らしい」(犯罪職やモラルに反した職はもちろん除く)
「絵師はただの職業の一つ」(ここで言う職業は、生活のための仕事と、生活において何を重要視するかの生き方との、両方の意味です。)
まずここを理解してください。

つまり「絵師は保護されるべきだが、同じようにAI関連の会社、AIクリエイターも保護されるべきである」
まずここがスタート地点になります。
「は???初めにAI側が絵師の成果を泥棒してきたんだろうが!泥棒保護しろとか頭おかしいんか!?」と思うでしょうが、まずその「生成AI=泥棒」の論調をやめましょう。
「無断学習を違法とすることを前提とした生成AI叩き」は法律的にも分が悪すぎるし、万が一それが認められるとなると死ぬのは生成AIだけじゃなく絵師界隈の全てとなります。

残念ながら今の法律では無断での学習は合法であり、生成AIの学習も合法です。
それを前提とした理論で武装しなければ「なんか法律をわかってないヤツが騒いでる」と思われてしまいます。

なので生成AIに反対する人間の行動として「賛成派に物申す」というのは本当に下の下です。
「現在は違法じゃないが、将来的に違反になる可能性があるから止めろ」というのもダメダメです。
貴方が車に乗ってる時に、警官に「ヘルメットかぶってないから減点ね。将来的に車でもヘルメットが義務になる可能性があるから」と罰金を切られたとしたら、貴方は納得できますか?

もちろん「まだ法整備が追い付いてないから、早急な法整備が必要だ」という意見はわかります。
だからこそ賛成派を晒し上げたりするのではなく、政府に物申すのが一番正規のルートです。
そういう意味で今回のパブコメはAI反対派にとって、とても重要な物だったのですが…。

結果は見るも無残と言ってもいいでしょう。

さて、今回のパブコメ内にもありましたが、文化庁はこんなことを言っています。

生成AIとこれにかかわる事業者、またクリエイターとの間で、
新たなコンテンツの創作と文化の発展に向けた共創の関係が実現されていくことが望まれます。

そう、国としては普通の絵師もAI使用者もお互いに文化を発展していってほしい。というのが基本の方針なのです。
「AIなんて絵師がいなければ作品を作れないポンコツじゃないか!」と思うかもしれませんが、ここは「生成AI」を「文明の発展」と言い換えれば納得できるのではないしょうか?
パソコン、デジタルソフト、インターネット、生成AI以外のAI技術。
それらは我々絵師の創作活動を豊かにしてくれました。
国としてはそういった文明機器の一つとして生成AIを活用し、
日本のクリエイティブな文化を盛り上げていってほしい。と考えているのでしょう。
少なくとも私はそういう意図を感じました。

なので「生成AIを全て廃止する」がゴールである反AIはどうやっても負け戦だと思います。

しかしある意味では「反AIの勝利」の部分もあると思います。
それは「反AIが怖いからAI使いにくい…」と思う人が出てきているからです。
「AIの普及の阻害」という目的は一応達成できていますが、それと同時に「絵師全体への不信感」もセットでついてくるので、1絵師としては本当にやめてほしいです。


AI反対派はどうすべきだったのか?

ここからは私の個人的な意見になりますが
・絵師は特権階級。という意識をまず捨てるべきだった。
・AIは合法だから全面規制は無理。というのを前提とした、譲歩したゴールを設定すべきだった。
・AI賛成派に対する「泥棒」等の誹謗中傷をすべきではなかった。
・(反対するために)AIや著作権をもっと勉強すべきだった。

ここらへんが出来てればまた話は違ったんじゃないかと思います。

・絵師は特権階級。という意識をまず捨てるべきだった。
まずここ。今回の記事のメインテーマとなります。
絵師の人が「絵師様w」と言われるようなムーブをしまくったせいで、本来味方につけられるはずの、別ジャンルのクリエイターを味方につけられなかった。
別ジャンルのクリエイターに敬意を払えないのに助けてもらえるはずがありません。
自分は別ジャンルのAIでキャッキャ遊んでるのに、同じ口で生成AIを批判してる絵師を見て
「これだから絵師様は…」と別ジャンルのクリエイターに愚痴られたことが複数回あります。
絵師という村社会に閉じこもってるとわからないかもですが、複数ジャンルにまたがって創作をしてると、そういう話を振られることはあります。
そのたびに私は自分がやったことではないのに申し訳なく感じながら、別ジャンルのクリエイターさんに謝ってました。

・AIは合法だから全面規制は無理。というのを前提とした、譲歩したゴールを設定すべきだった。
今活動してる反AIの人は、正直何をしたいのかわかりません。
正義(と思い込んでる)棒で叩いて気持ちよくなりたいようにしか見えない人が多数います。
一応AIの完全禁止、撲滅がゴールなんでしょうが、まともな作戦もなく、他人を攻撃して、
ハッシュタグを使って何かをした気持ちになってる人がXだと多すぎます。
ヴィーガンなんかでも同じですが「私は肉を食べません」「私は手描きが好きです」みたいな、
自分だけをコントロール出来るような空気やマナーを作れなかったのかな?と思います。
世の中「私が肉を食べないから、お前も肉を食べるな!」「私はAI嫌いだから、この世からAIを滅ぼせ」みたいな、他人をコントロールしようとする人が多いですが、不毛です。
自分は自分、他人は他人。それぞれがそれぞれで活動すべきです。
まあ私も「こういうゴールだったらよかった!」という誰もが納得するようなゴールは提示できないんですが、それも含めての自分は自分、他人は他人。ということにしてください。
「AIが私の作品を盗まないならその意見も通ったんだけどな!」と言う人もいると思いますが、重ね重ね言いますが学習自体は合法です。
法律に文句があるなら、国を動かすだけの働きをするか、政治家に立候補しましょう。

・AI賛成派に対する「泥棒」等の誹謗中傷をすべきではなかった。
これは反対派→賛成派に対する誹謗中傷もそうだし、逆の立場でも同じです。考え方が違うから誹謗中傷する。はやめましょう。

・(反対するために)AIや著作権をもっと勉強すべきだった。
今回のパブコメでもそうですが「あなたの認識が間違ってますね」「それは著作権法の範囲の話ではないですね」という意見が多すぎです。
敵を倒したければまず敵の研究をすべきです。
もう少し勉強すれば、相手は敵ではなく「ただの意見が違うだけの隣人」ということがわかると思います。

終わりに

言いたいことはたくさんあるけど、まとまらなくなってきたのでここらへんにします。
この記事は「バカなことをしてるヤツ(特に一部の反AI)はいいかげんにせいよ」的な感じの記事ですが
AI推進派でもバカな人はいるので(特にいやがらせ目的でAI使ってる人)
AI賛成、反対、それらの立場に関係なく
「今の自分の行動言動は間違ってないか?」を考えながら生きていきたいですね。
もちろん私自身も含め。


追記

思った以上に沢山の方に記事を読んでいただいたようで、ちょっと驚いています。
一応賛美両論あるだろうな。と思って書いた記事ですが、思っていた規模より100倍ぐらいは読まれているようなので、何点か補足させてください。ちなみに内容に関する補足は少ししかありません。

見てくれた人の感想も色々見させてもらいました。
「よく言ってくれた!」と言う賛成の声も
「この記事は全然わかっていない!」と言う非難の声も
沢山の意見をいただいてますが、一件一件反応するのは無理な量になってしまっているので、この記事の感想へのレスポンスはこの追記のみとなります。

少しだけ内容に関する補足

内容に関しては読んだ人がそれぞれ議論していただいていいのですが、少しだけ内容の補足をさせてもらうと
「いいかげんにせいよ」と言いたいのは「絵師全体」ではなく「一部の先鋭化したバカな行動をとっている人」に対しての指摘です。
「自分はバカじゃないから当てはまらないな」と思ったならスルーしてください。

あと「特権意識」のくだりが独り歩きしていますが、
「絵師には特権がある」「ズルい」ではなく
「絵師には特権はない」「だから横暴な振る舞いは止めよう」が言いたいことです。
もちろん「絵が描けると優遇される」と言うのは正しいですが、
それは「音楽を作れると優遇される」「文章を書けると優遇される」「翻訳を出来ると優遇される」「動画を編集出来ると優遇される」と言う話と同列の話です。
「文章は誰でもかけるけど、絵は選ばれた人しか描けない!俺のほうが偉い!」みたいな振る舞いは止めましょう。という話です。
これも「絵師全員が横暴」と言いたいわけではなく、「そういう横暴な態度を取る人が一部だがいる」という前提での話となります。

個人的に「上手く伝わらなかったな」「もっと良い表現があったかもしれない」等の反省はありますが、それも含めて自分の文章力の未熟さなので、また別の記事を書く時の糧としようと思います。

筆者に関しての補足

一部で「この筆者は本当に絵師か?」と疑われているようですが、絵を描いているか?と言う話なら、間違いなくYESです。
子供の頃から数えていいなら30年以上絵を描いています。
二次創作も好きで人気ジャンルも通ってきているので(エロはやってないです)自分が著作権的に清廉潔白だとは思っていません。
ネコミームで笑うし、漫画のコマをリプライで使うし、本来は著作権云々言えない立場だと思いますが、比較的どこにでもいるネット民の絵師です。
ただ絵師であることの証明は一切しません。この話題、この記事で絵をアップすることは危険だという判断です。もともとそのつもりでしたが、この記事に対する感想を見て、その意志はより強くなりました。
私はX(旧ツイッター)でも普通に活動していますが、メインのアカウントではリスク管理として、生成AIに関する話題は意図的に避けています。
万が一でもこの記事とメインアカウントが繋がることは避けたいので、証明の類は一切しません。
今さっきも、この記事の対する賛成意見で一番拡散されていたツイートが燃やされて、その発言をした方は鍵垢に避難していました。
私が身元を明らかにしてないがために、代わりに燃やされたかもしれませんので、申し訳ないです。


感想に関するお願い。

この記事の感想で、筆者である私や、賛成意見を述べてくれた方に対しての人格批判をいくつか見かけました。
一発アウトなレベルなものはありませんでしたが、繰り返したらアウトぐらいのレベルの物は見かけました。
「著作権法の解釈が違う」「知識が間違っている」等の議論・指摘は歓迎ですが、人格攻撃的な批判は、受け取る側だけでなく批判する側にも何もメリットはないので…。

本文の最後にも書きましたが
「今の自分の行動言動は間違ってないか?」を考えながら生きていきたいですね。




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